らん
2017-12-21 01:11:37
624文字
Public
 

ユゥとレオード。

ディアヴォ

手作りの味を、知っている。口に含むとどこか甘くて、市販のものやパティシエが作るものよりも固めのクリームに、チョコペンの少し安っぽい味。生地の柔らかさも家庭用オーブンで出せる限界がおそらくきっと、今含んだ一口のもの。幾度となく食してきているから分かる。これは、手作りの味だった。
それを明確に感じ取ったのはレオードだったのだが、あえて明言することを避けた。リリース記念だということでケーキを配り歩いているJETの面子の顔は晴れやかで、中心人物である黒髪の金眼も同じように笑っている。
きっと元は大きなひとつのケーキは、この場には居ない誰かさんの手作りなのだろう。お裾分けだと切り分けられたピースの断面はゆるやかな層をつくっており、気づかないメンツは何事もないように平らげていくだけ。
きっとユゥのケーキを見る視線にも特段違和感を抱かないだろう。おそらく、というよりも確信を持ったレオードはゆっくりとケーキを食していく。これが、彼等のバンドでも受け入れられるだけの愛なのだ。
(アイツの作ったケーキは独り占めしたいから、オレには無理だけど)
「ユゥ」
「どうかした?」
「ケーキ、美味しかったって伝えといてくれ」
……、オッケー。まあ、美味しくなかったら持ってきてませんケド」
得意げに胸を張るその姿に重なるのは、間違いなくユゥの最愛だ。空になった紙皿の上、食べたばかりだというのに、レオードはなぜかカノジョの作るショートケーキが恋しくなった。