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らん
2017-09-24 23:08:57
803文字
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りつかさ
きっと君はこれからも知らないんでしょう。それでいいのだ、俺だけが覚えていれば。俺だけが振り返ることが出来れば。
「ス〜ちゃん」
振り返りはしないと、ただ進むのみだと闘志を燃やすアメジストが好きだった。過去を積み重ねて今があるはずなのに、その過去には目もくれず、ス〜ちゃんの瞳はいつだって未来に向いている。その瞳に、俺はどう映っているだろうか。
過去になるかな。今に存在しているかな。未来に見えてるかな。
ねえ、ス〜ちゃん。俺が灰になっても本望だと言ったこと、きっと死ぬその時まで思い返さないのでしょう。剣を置くその時まで、思い返すのはサイリウムの色鮮やかな色彩と歓声だけだと実直に語ったあの声が今も離れない。
ねえ、ス〜ちゃん。俺は未来より過去を何度も振り返るんだ。皆より長く生きる俺にとって、未来よりも培った時間が寂しさを癒やす全てだから。そんな俺とは違って、ス〜ちゃんは今日も未来を見据えている。その眩しさに焦がれたと言えば、笑うかな?過去に生きているような俺が何を言うんだと、自分でも笑えてくるのに。
「ねえス〜ちゃん、」
「はい、凛月先輩」
未来を見つめる双眸は、きっとこれからも過去を見ない。それでいいのだ、俺がずっと忘れなければ。振り返ることは得意だ。夢の中で、いつでも逢えるから。
閉じた目蓋の裏に描くのは、濃紺のマント。不相応だと不安げに揺れた表情。過去の君。
(覚えてるよ、全部)
灰になってもいいとさえ思わせた、俺を焼くあざやかな光を。
「やっぱなんでもなーい」
「はあ」
「うん、
……
ねえ、ス〜ちゃん」
君は、はじめて俺が「ス〜ちゃん」と呼んだ日さえ振り返ることはないのかな。それでもいいよ。俺はずっと、ずっと、たとえス〜ちゃんが剣を置くその時に振り返ることがなくても、ずっと、ただ、記憶の中に閉まっておくから。
大好きだよ、ス〜ちゃん。俺の大切な、はじめての、お弟子さん。
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