らん
2017-09-08 21:44:18
901文字
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エーダッシュとカノジョ。

ディアヴォ

冷たいキスをする人だと思った。
自分よりも年下で、まるで太陽のように笑うのに、キスはひどく冷めていた。触れあわせた唇から体温だけ奪われて、離せば淡く笑うそのカオに、私はどうしてか泣きたくなって、そっと、彼の両頬に手を触れさせる。
……つめたい」
ぽつりと落ちた私の声は震えていなかっただろうか。大丈夫だろうか。
私の手に自分のそれを重ねながら、エーは目を細めた。知ってるとでも言いたげな、子供とはかけ離れた、そんな淑やかさだった。
「オマエはあったかいや」
ねえハニィ。まだ呼ばれることに慣れない愛称が耳朶を打つ。なあに、ダーリン。返す愛称はまだ呼び慣れない。それでも呼ぶんだ。エーにとって必要なら、いくらだって。
「オレが死にたいって言ったらさあ、どーする?」
……死にたいの?」
「例えばのハナシ。……例えば、だから」
「例えばだとしても、怒るよ」
死にたいって私に言うのなら、死にたくないのでしょう。誰かに気づいてほしいから溢す弱音である限り、私は怒る。そんなこと言うんじゃないの、そうやって止める。たとえ痛みを伴ったとしても、生きていることに意味があるのだと思うから。
「死にたいって誰かに言える時は、生きたい時だから、止めるよ」
まっすぐ、逸らすものなんて何もない中、ダーリンは唇を噛み締めて私から視線を逸した。ハニィって強いよなぁ、なんて、それは褒められているのだろうか?
「今までそんなこと言ってくれるヤツ、居なかった」
ああ、あなたは、まだ子供なんだ。
冷たいキスをする人だった。この世の酸いも甘いも知っているような言動をする人だった。その上で、馬鹿を働く人だった。けれど、彼を怒ってくれる人は居ないのだ。子供でいさせてくれる人は、居なかったのだ。
「なあ、ハニィ」
俯いたままの彼が何を求めているのか、私にはまだうまく汲み取れない。それが出来るだけの年月を重ねていないから。だから、私が今したいことをさせて。ねえ、ダーリン。私の体温ぜんぶあげるよ。
「なあに」
「今日このまま泊まってよ」
OKサインはキスで返す。冷たいキスをする人だった。氷解させたいと、はじめて思った。