らん
2017-05-22 12:17:26
1082文字
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ジュダとエーダッシュ


……クソが」
先方との打ち合わせがフォーマル指定だったからと久々にスーツを引っ張り出してきたはいいものの、ジュダは既に暑さに辟易としていた。
上着を脱ぐまではいいが、全身をあわせて鑑みたコーディネートはこれ以上崩したくない。その本音のせいでシャツのボタンをライブのときのように大胆に開けることは出来ず、いっそ鬱陶しく感じるネクタイとネックレスも外したい気分だった。
スーツに合わせた硬い素材の靴さえも今は蒸し暑さのせいかとても窮屈で、どこかの店で買い直したい勢いだ。打ち合わせも済んで後は事務所に戻るだけだし、もはや着崩しても構わないだろうか。いやオレのプライドが許さない。
そんな葛藤を抱えたまま事務所に行くと、ちょうど通用口でエーダッシュと出会った。今日の天気と気温に最適であろうTシャツにハーフパンツ、クロックスというなんともラフな格好はジュダと正反対である。オマケに彼の手にはコンビニの袋が下げられていて、うっすらと透けている中身はアイスの類いだろうか。
「んぉ、あれれー?んんーー??」
片側だけ丁寧に剃られたもみあげを見せるようにセットされたパーマのかかった金髪でジュダと検討をつけたらしく、徐々に近づいてきたジュダを薄目で見ていたエーダッシュはそこでようやく声をかける。
「ジュダ先生!」
……
もはや反応することさえも億劫で、ジュダは対照的に元気を持て余しているエーダッシュに目線すらくれなかった。暑くてたまらなくて、さっさと事務所内に篭りたいというのもある。髪のセットすらはやく変えたくて、ジュダはただひたすら無言で通用口の扉へと歩を進めた。
「無視かヨッ!つぅかあ、それ暑くないんスかァ!ワロタ」
暑ぃに決まってんだろボケ。
言わない代わりに無言で露出されたエーダッシュの脛を蹴ると、見事にキマったようでエーダッシュが蹲った。これ幸いと先に通用口に辿り着き、扉を開けてクーラーの冷気を全身に感じる。痛えだのなんだのうるさい輩はそのまま通用口に放置することに決め、ジュダはそそくさと先に快適な室内へと足を踏み入れた。
「あ、ジュダくんだ。……って、スーツ?暑い中お疲れー」
「おつ」
入れ違いにタバコとライターを片手にしたモモチが通用口から蒸し暑い外に出ると、そこでいまだに蹲っているエーダッシュを発見する。
……エーくん何してんの?」
「大先生にイジメられた!!」
半泣きのエーダッシュが悪いんだろうなと大体の予想がモモチの中でついたところで、被害者兼被疑者のジュダは何食わぬ顔で控え室という楽園への道を硬い靴で噛み締めていた。