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らん
2017-04-22 23:49:00
1580文字
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モモチとカノジョ。
ディアヴォ
「ラプンツェル?が、なんなの」
「きれいだなって。
……
衣装が紫だし、それに花が沢山で」
「ふうん」
カノジョがかじりつくように見ていたテレビに興味なんかこれっぽっちもなかった。金曜夜九時からラプンツェルがやるんですよ、そう笑ったのは事務所の女性スタッフだった気がするけれど、まさかコイツも興味があったとは。
ソファに隣同士で座って、肩を貸してもらいながら一緒に眺めていた映画はなるほどいかにも女の子が好みそうな鮮やかさな色彩と甘さ、そしてほんの少しの暗さを孕んだストーリーだった。今まで出会えなかった運命の人を信じられるほど子供でもないだろうに、カノジョは真剣に物語を追っている。
「どうせこの男とくっつくんでしょ」
「多分
……
」
「分かりきってるじゃん。見る必要ある?」
「過程が気になるの」
「へえ」
オレにはどうでもいいけど。普段ならオレに構ってくれないコトを咎めて無理矢理にでも視線をオレに向けさせるところだけど、今日はそんな気分にもなれない。大人しくそのまま肩に頭を預けて、目だけで物語を追った。目だけなので脳みそにはまったくと言っていいほど響いてこない。そもそも、ラプンツェルは映画みたいに素敵な話ではないことを知っているからこそ作りものでしかないハッピーエンドが滑稽に見えた。けれど、確かに原本もとても幸せだったのだ。
ラプンツェルは実の母親の欲のために捨てられて、王子に孕まされ、住処を追われて森の最果てに追放された少女だ。王子も孕ませたことを悟られ、魔女に両目を潰されて森の中を彷徨い歩く。ついぞ辿り着いた場所ではラプンツェルと自分の子供が暮らしており、彼女の涙で視力を取り戻して幸せになる話。意外にもこっちも幸せになってたんだった。中々珍しい展開だったから覚えていたのだけど。
「ラプンツェルってさあ、アンタみたいだよね」
「え、」
紫に包まれて、髪さえも不自由に縛られて。それを幸せだと、自分の尺度で考えていた無知で無垢な女。作り変えられて、今度はそれを幸せだと思い込まされて、なぞらえる女。既成事実を作ればオレも王子みたいにこの子を縛れるだろうか?そしてオレは喉を潰されて、カノジョの涙で回復するのだろうか。あの雨の日のように。
薄い箱の中に映る広場でラプンツェルと意中の男が楽しそうにステップを踏んでいる。揺れる紫の裾から覗く足は軽やかで、鈍くさいくせに懲りずにヒールを履くアンタとは大違いだと思ってしまった。やっぱり似てないかも。
「
……
なんてね?」
誤魔化すように肩に顔を埋める。ついでにゆるやかに力の抜けた掌を重ねたまま握りしめれば、戸惑いながらも同じだけの力が返ってきた。
「私にはモモチくんしかいないよ」
照れくさそうな声。バカじゃないの。ああ、もう。
「そんなの当たり前だろ」
顔を埋めたまま、確かに届くよう声を張った。それ以外があったら殺すしかない。魔女が殺そうとしたように、オレもアンタの髪を切って塔から追放してしまうだろう。そして王子の目を潰すんだ。この子を見てていいのは、オレだけ。
空いたてのひらで辿るように肩をなぞり、耳の裏を撫でる。その後を追うように顔を上げていけば、テレビを見ていたはずのカノジョの視線とかち合った。
「アンタは、誰のモノ?」
「
……
モモチくん」
よく出来ました。
柔らかい唇をオレのそれで塞いで、何度も啄むようなキスを贈る。体重をかけて押し倒したその先にリネンの海も、新境地さえもないけれど、今はこれだけでも何故か満たされている。なんでだろう、今日は痛めつけるよりも甘やかしたかった。これが映画に影響されたのだというのなら、オレの脳みそはうまく遮断出来ていなかったのかも。まあ、なんでもいいけど。
自発的にオレへと向けられたカノジョの視線は、もう二度とテレビに移ることはなかった。
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