らん
2017-03-20 10:40:34
1307文字
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レオードとカノジョ。


やってしまった、と溜息をついたって現実は変わらない。隣で眠るとてつもなく綺麗な人のまつげの長さを冷静に確認しながら、私はゆっくりとなまぬるいベッドから上半身を起こした。
お酒なんて飲まなかったのに、ただ彼の前で色々ぶちまけて泣いて、気づけばこの有様だ。お情け程度に下着とシャツだけは着ていて、レオードはといえば上半身裸のままだった。そりゃそうだ。彼の上着は私が着ているのだから。
一人でなんでもできそう。別にお前には俺がいなくてもいいじゃん。そうやって何度もフラレてきて、昨日もそうだった。そんな気持ちのままルミエのライブに来て、ヤケになった結果がコレとは随分焼きが回っている。
(ヴォーカルと寝るとか、ついに私もクズの仲間入りかあ)
はあ、もう一度こぼれた溜息を吐き尽くして、そっと抜け出そうと片足を地面につけたところで勢いよく腕を引かれた。かわいい悲鳴を出す間もなく枕と後頭部が惹かれ合って、耳の後ろに意外と大きな掌が回ってくる。
「おはよ、どこ行くの」
……おはよう。帰ろうと思って」
「なんで?」
「なんでって」
「今日オフなら、もう少しこのままが良い」
ルミエールのヴォーカルでありミネッツの王子様はどうやら性格も王子様みたいに我儘らしい。ほだされたいと思うのに私の性格がそれを許さなくて、小さく頭を振った。
「帰らなきゃ」
……どうしても?」
……、うん」
分かっている。こういうときに素直に甘えられないから、いつも相手が離れていくのだ。本当は甘えてしまいたい。人肌に触れていたい。でも、それを私のこれまでの人生で積み重ねられた思考が許さない。
囁くように謝れば、レオードは綺麗すぎて無感動にも見える顔で私を見つめる。なにもかも見透かされているのか、それとも、何も考えていないのか。底知れなくて逃げるように身を引けば、今度は腰を捕まえられて引き寄せられた。
さながら抱き枕にされたような感覚で、思わず体が強張る。どうしよう、どうしたら。こういうとき、男の人が好きになるような、一人にしちゃいけないと思う女の子はどんな反応を返すんだろう?
……寝よ?」
「で、でも、ここのお金とか、時間とか」
「遅れたら延長すればいいし、料金とか女が気にしなくていい」
「だけど、私、レオ様の彼女じゃな、」
みなまで言う前に言葉は奪われた。呆然としていると、レオードがふわりと柔らかく笑むものだから、何故かとても泣きたくなる。なんで、笑うの。
「レオード。……とにかく、今は寝て」
今のオレはオマエのことひとりのミネッツとして見てないから。誰も止めないから。
慰めのような台詞だと普段なら鼻で笑えたはずだ。だって、一人で生きてくことが上手いオンナだから。彼氏なんていらないでしょ、そう言われ続けてきたから。
なんでこんな面倒な女を甘やかすのだろう、この王子様は。
「っ、かえ、る」
「オレのために帰んないで」
……狡い」
皆の王子様は、誰かに特別な愛情なんて注がない。見合うだけのお姫様が来ない限り彼は平等に愛を振りまくのだ。分かっている。
解っているのに、抱きしめられた腕をほどくことは出来なかった。