くちづけられれば動揺したりとか、そもそもどうして口づけたのかとか、聞きたくなるようなことは沢山あるはずなのに。鈍感というか、天然というか、まあとにかくちょっと抜けてるところの多いカノジョはオレの突然の行動にただ笑うだけだった。
「掌にキスされるのはくすぐったいなあ。……どうしたの?」
「オマエの生命線、食べちゃった」
「……手相って食べられるの?」
「指紋が変わるように、手相も年齢と共に変わるんだよ」
「ええ、じゃあ食べなくていいよ……?」
だからどうしてそう斜め上の返しが来るかなあ。ほんとバカ。そんなところにほだされて癒やされてるので、オレも笑ってしまうんだけれど。
「というか、生命線食べられちゃったら生きてけなくない?」
「んー、そうかもね」
「じゃあ食べないでください」
「やだ」
「えー、じゃあどうしたらいいの……」
真剣にああでもない、こうでもないって悩む姿がアホらしくてかわいい。ああ、好きだなあ。こういうところに苛つく時もあるけど、やっぱり何事にもただ真っ直ぐでいられる姿を好きになったから、なおさら好きだと思ってしまう。
もう一度掌にキスをして、また食べた!なんて笑うカノジョを閉じ込めるように抱きしめた。ユゥ?どうしたの?くぐもった声はほんの少し和らぐような、優しい音色だ。
「オマエの生命線はオレのものになったので、オレと一緒に居れば、オマエはずっと生きられるんじゃない?」
「……ユゥの中に、私の命があるってコト?」
「そういうコト」
「そっかぁ。じゃあ、私もユゥの生命線食べちゃおうかなあ」
そうしたらおあいこだし、お互いにずっと傍に居なきゃならないね。
なんでもないことのように、オレのほしいものをくれるオマエはやっぱり今日も人よりどこか天然だと思うんだ。そうだよ、ずっと傍に居てほしいから食べちゃうんだ。
「……ほんと、オマエってさぁ、スゴイよね」
「褒めてる?」
「褒めてる、褒めてる」
「ユゥが2回繰り返す時はねー、ウソだって知ってるんですよー」
「そんなことないデス」
ウソだー!なんてわめく口は塞いじゃいましょう。オレの生命線を食べることを忘れるように、溺れさせてしまおうか。
抱えるのはオレだけでいいんだ。オマエはオレの歌を抱えてるんだから。オレの「生命線」は、「歌」だから。
「……今日のユゥは、甘えんぼさんだね」
「いやいや、ないない」
「2回繰り返したのでウソですねー」
「あーもー、ちょっと黙って」
はやく君の一部になってしまいたい。
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