らん
2016-12-27 18:12:27
1786文字
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モモチと彼女。

ディアヴォ

「モモチくん……?」
微睡みから目覚めたきっかけは、彼の冷えた足先だった。ベランダに出て煙草でも吸ったのかもしれない。ひやりとした足の指が私のそれから離れていきそうになって、私の声でもう一度くっついた。
「夜明け迎えたばっかだよ、寝てれば」
頬を撫でてくれる手も冷たくて、香る紫煙が色濃い。ああ、やっぱり煙草を吸ってたんだなあ。
うとうとしつつも軽くかぶりを振れば、ああそう、なら相手して?なんて、啄むように唇を奪われた。どうやら随分と機嫌がいいみたい。彼は機嫌がいいと、いつも啄むようにキスをしてから、深くなる。
今日もそれは変わらず、私が体内に貯めていた熱を根こそぎ彼に奪われてしまった。冷たい皮膚が段々と私の温度を吸い取って、気づけば同じ熱を持つ。優しく首筋に噛みつかれて、指が絡まると掌全体が合わさった。
……機嫌、いいね……?」
昨夜のまま何も纏わずに寝ていた私をまた暴いていくモモチくんにそう声をかければ、極上の笑みが返ってくる。本当に、今日はどうしてしまったんだろう?
「オレだけのサンタさんが来てくれたからさ」
「サンタさん?」
「そう、オレだけの」
それってどういうことだろう?思案する前に最奥の熱さえも奪われた。彼の熱とひとつになって、溶けて、視界いっぱいに映るモモチくんの綺麗な顔と、甘い声と、ようやく完全に取り戻したらしい熱い体温に溺れてく。
もう、モモチくんしか考えられないや。
「ありがと、愛してる」
囁かれたその言葉が夢か現か、それさえもボヤけるほどに愛されて、私の意識はショートした。


目が覚めると既にベッドからモモチくんの姿はなくて、代わりに心地よいコーヒーと紅茶の香りがキッチンからうっすらと漂ってきた。どうやらまだまだ機嫌がいいらしい。自分の分のコーヒーだけじゃなくて、私の分の紅茶まで用意してくれている。というか、私を起こさずに準備してるのが少しびっくりなくらいだ。
窓から入る朝日がちょうどよい暖かさだった。やっぱりひとりのベッドは少し冷えるから、ぬくいなあ、と思いつつ起き上がる。いつのまにやら下着と彼のスウェットを着せられていたようで、やっぱり機嫌がよろしいですね、と小さく笑う。
ふと手元に視界を振ったとき映ったものがなんだか分からなくて焦点を合わせると、とても可愛らしいプレゼントがスマートフォンの隣に置かれていた。モモチくんの好きなブランドの、 女性用デザインショッパーだ。中身は箱に包まれていてよく分からない。
……サンタさん、だ」
まさか貰えるなんておこがましいことは考えていなくて、たまらずに満面の笑みをこぼす。
きっと、サンタさんのーーモモチくんの言う通りいい子にしてたから、プレゼントをくれたのかな。ちゃんとサンタさんのお眼鏡に適ういい子になれていたのかな。
私は確かにバカだし、どうしようもないほど察しが悪いところもあるけれど、サンタさんが愛してくれる人であることくらいは知っている。
「あれ、起きてたの」
起こしにきた彼は、私が抱きしめているプレゼントに気づいたようだった。なんとも綺麗に微笑むから、私のガキっぽい笑顔がなんだか目立っているような気がした。
「ねえ、あのね、サンタさんが来てくれたの」
「へえ、良かったじゃん。紅茶冷めるから、はやくこっち来なよ」
ついさっきまで大人びていたのに、あっけらかんと、さも興味はそこまでありませんと目を細めた彼の顔は随分と幼く見えて、まるでイタズラに成功したこどものようで。
「あ、モモチくん」
「ん?」
そういえば、今日の挨拶をまだしていなかったや。
おはようと声を出す前に大股で距離を縮めてきた彼の体重で柔くスプリングがきしむ。そのまま奪われた唇のせいで、結局私はおはよ、までしか言えなかった。
「おはよう」
やっぱり機嫌がいいですね?トロくてどうしようもない私を抱えて運ぶモモチくんの顔はよく見えないけれど、なんだか幸せな気分になる。
二人で昨日の残りのケーキを食べて、それから紫の瞳を持つ飽きっぽいサンタさんからのプレゼントを開けてみよう。ピエロが飛び出てくるびっくり箱だったとしても、それはそれで楽しいよね。
彼の使うライターやシガレットケースが枕元に忍ばせたクリスマスプレゼントになっていると気づくのは、もう少しあとの話。

END