らん
2016-11-14 08:50:43
1823文字
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月永レオと瀬名泉

ほもじゃない

セナ、歌え。セナ、笑え。セナ、愛してるぞ。
だから、ここで全部終わりにしよう。
おれが告げた言葉に、セナはおれの目をまっすぐに見つめたまま、「そうだね」と笑った。
おれたちの青春はもう終わりだと、おれも、セナも理解していたのだ。この世界は、この青春はたった三年間のもので、この幸せも不幸も背負って生きていくために、一度終わらせなくてはならない。
「セナ、愛してるぞ」
「はいはい、ありがとぉ」
「もう言わなくても忘れないか?」
……言われなくても、忘れる気なんて無いよ」
「そうだな、セナはツンデレさんだから」
「そうじゃない」
ねえ、王さま。
「一緒に死んでよ」
バカだな。おまえの世界にいるゆうくんも、Knightsも、おれも、捨てられないからって逃げるなよ。
ああ、いや、きっと違うんだ。逃げじゃないんだ。これが、セナの終わらせ方、なんだ。
「おまえは、死ねないよ」
……あーあ、ほんと、ちょーうざぁい」
交わした拳はいつだって温かくて、固くて、ぶれなかった。今もそうだ。だから、大丈夫。
「死ぬことで永遠になってもつまらんぞ」
……あんたがそれを言うの?」
「うん、まあ、ごめんなー?愛ゆえだから」
「タチが悪い」
おまえの前で壊れて死んだおれがそんなことを言えた義理もないんだけど、おまえはまだ生きてるからダメだよ。
「セナ、愛してるぞ!」
「はいはい」
「セナ、笑え!」
「はいはい」
「セナ、……一緒に歌ってくれるか?」
「いいよ」
へたくそなおれと、今は上手くなったおまえの歌声が重なる。ああ、うまくなったなあ。セナ。
潮風に乗ったおれたちのデュエットは、もう二度と聞こえない。



(ゆうくんも、「愛してる」を見ず知らずの誰かから貰えたんだろうな)
それはきっと、今ゆうくんの傍に居て、俺の隣で笑って愛を伝えてくれる存在と似ているアイツなんだろう。
「ありがとう、みんな!愛してるよ!」
春のあの日、講堂でそう叫んだ革命者は、メンバーを抱きしめ、果ては敵だったはずの天祥院まで抱きしめて笑っていた。そこはバカ殿と全く違うけれど。
……ほんと、時代ってすごいよねえ?」
「なんの話っ?なになに?待って考えるから!」
「卒業したくないなって話」
「あー!そうやってまた結論言う!もっとおれに考えさせろよ!今宇宙にまで轟くはずの音楽の欠片が消失したぞ!世界の損し、むぐ、」
面倒な王さまには飴玉でも食わせてしまえばいい。こういう時のために王さまが帰ってきてからは棒付きキャンディを買ってポケットに忍ばせている。
「らむねあじりゃ」
「適当に買ったから」
安っぽい味だけど美味しいと満足げに舌だけで転がしながら、喋るときだけ棒を掴む行儀の悪さを膝を叩いて注意する。ケチ、って、俺は常識的に注意してるだけなんですけど。
「セナの味だ」
「はあ?なんで」
「そこはおまえが考えろよな〜、霊感働かせろ!」
「ちょ〜うざぁい」
もう分からなくてもいいよ。答え合わせは卒業式にでもするから。
ねえ、ゆうくん。目の前で自分よりも身長が低いくせにぴょんぴょん跳ねまくるオレンジ頭が居るのってなんだか落ち着くよね。誰よりも眩しい奴から「愛してる」なんて貰った日には、全てを錯覚するし。
だけど、どうか。俺とは違って、縛られすぎないでね。俺から解放したんだから、どうか、どうか。
「セナは泣くとビー玉みたいな目になるなぁ」
うるさい、バカ。飴を食べながら俺に肩を貸すな。転がしてる振動が伝わるからやだ。
縛られ続けたことに後悔なんかしてない俺が、ゆうくんにそんなこと言えるわけもないのは分かりきっている。それでも、どうか。革命した重さに潰れそうなとき、ゆうくんの隣に居る光は、こいつみたいに逃げてしまいませんように。そうして、ゆうくんが傷ついて笑いませんように。見守ることを、もう少しだけしたかった。
「セナ、もっかい歌うか!」
「ばっかじゃないのぉ」
「あるひーぱぱとーふたりでー」
「しかもグリーングリーンって……え、なに……
「かたりあったさー!」
それ父親死ぬ歌じゃん。皮肉なの?
まあいいや。歌ってやろう。俺にとっては下手じゃないその歌声が、あんたは苦手だから。
……この世に生きる喜び、そして悲しみのことを」
グリーングリーン、青空には小鳥が歌い。
グリーングリーン、緑が揺れる。
なんて、ここは海だけど。


END