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らん
2016-04-24 14:02:58
1471文字
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みかあん
かわいいものが好きだった。
お人形も、小さいものも、触れても許される可愛いものはいつでも癒される。可愛い名前と言われることだって嬉しかった。
甘いものも好きだった。
日に透かせば柔らかに光る飴も、舌に馴染んだ味も、美味しいと感じる。気取らない甘いものはいつだって満たされた。
ホラーも大好きだった。
大好きだったけれど、それが「可愛い」や「甘い」と同居出来ない事を俺は優しい女の子達から残酷にも教えられた。そうして自分が「女の子」ではないことを知った。
影片みかは、今日も不完全だった。
「綺麗な目の色だね」
表情を崩さずに言われたその言葉に、俺は何も返せなかった。他人にも、お師さんにさえ不完全と言われたこの瞳を「綺麗」だと表現したのは目の前の女の子だけだ。
「飴玉みたい」
飴玉みたいに綺麗な赤の瞳をしていたなずな兄が脳裏をよぎる。なずな兄は完璧だった。それこそ他人からの抑圧で自分を律する事ができてしまうほど、人間でありながらお人形だった。俺にはそんな難しい事が出来なくて、いつもお師さんを怒らせて、困らせてしまう。人間でいることも、お人形でいることもままならない。
そんな俺を、あんずちゃんは綺麗だと言うのだ。女の子でもない俺を、人形にもなれない俺を、不完全な俺の瞳を、褒めるのだ。
「
……
おおきに、?」
「どうして疑問形なの
……
?」
「だ、だって」
はじめてなのだ。どう返答するのが正しいのか分からない。ああ、だから人間にもなれない。
いつも俺は中途半端で、それこそ星になれたら幸せだっただろうに、俺は影の欠片でしかない。光が無ければ分からないもので、一人では何にもなれないのだ。それを歯痒いと思っても、お師さんは逸脱した行動を嫌うから矯正されたまま、立ち止まる。
「で、でも、騙されへんで。あんたはtrickstarの味方やもん。俺の敵やし」
お師さんの心を壊して、人形にしてしまった敵を倒した星に加担した子が目の前の女の子。俺達で倒さなければ、きっとお師さんの心臓は戻らない。だから、お師さんの心臓を奪ったtrickstarは敵なのだ。
それでも、あんずちゃんは「影片みか」を褒めるのだ。不思議な人間だと思う。優しい女の子だとも思う。その考えが間違っていないことも、分かる。
けれど、俺は難しいことを考えるだけの脳みそがない。与えられたものをその場で噛み砕いて飲み込むしかないから。そうして忘れていくだけの存在だから。
「私は敵でもいいけど、みかくんの目が綺麗なのは本当だよ」
綺麗だね。
星の輝きを知っている彼女は、何が綺麗かを知っているのに、 俺を褒める。
インプットされたものはすぐに消えていく俺の中にその言葉は残るのだろうか。残らないのだろうか。不完全だから、俺には分からない。
それでも、どうか。人間にも人形にもなれなくて、存在を表す名で男女の区別も出来なくて、瞳すら相対する俺だけど、覚えていたいな。どうか、どうか。
「
……
飴ちゃん、いる?今日はレモンとソーダだから、どっちもあげる」
「みかくんの瞳とおんなじ色だね」
「せやなぁ」
泣いたらお師さんは怒るかな。あんずちゃんは、なんていうかな。
「ありがとう、みかくん」
そのセリフだって、本当はこっちのものなのに。
笑うあんずちゃんに返せるよう、精一杯の笑顔で俺も紡ぐ。ありがとう、全部、忘れませんように。
それが無理な願いだと分かっているけれど、影の欠片でしかない俺はやっぱり願うしかない。
どうか、これが操られた夢ではありませんように。
END
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