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らん
2016-04-21 18:15:50
1819文字
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玲理
▼いつかの王子様
もう玲音は王子様じゃない。王様だ。
それを実感したのは、レーヴパッフェのラジオを聴いていた時だった。
視聴者からの質問に答えた玲音の一言が何度も繰り返されて、私の頭の中は玲音の澄んだ声で満たされていく。
ああ、そうか。玲音はもう私の王子様じゃない。皆の王様。硝子の心を鉄で雁字搦めに縛った、玲音の求めた『king』、なんだ。
別れを告げたのは私で、受け入れたのは王様の玲音だった。
玲音が専門学校を卒業する直前、ついに学生という身分すら無くなって『芸能人』になる時。私は玲音にさよならを告げた。
疲れただとか、好きじゃなくなったとか、そういう事ではない。ただ、私の中に玲音との明確な差が出来てしまったのだ。甘い高校生の時の考えをずっと持っていられるほど、もう子供でもなかった。
「芸能人と一般人だよ。玲音はこれからなのに、バレたらそこで終わっちゃう。私だってずっと誤魔化しきれない」
「そんなの今までだってそうだったろ?!」
「そうだけど、
……
もう、無理だよ」
諦めることが大切な事もあることを知ってしまった。潔さが美徳になるとは思っていないけれど、決断の早さで「これから」を変えることが出来ることを知ってしまった。
隠し切ることの難しさも、知ってしまったから。
「玲音は私の王子様なの?それとも、レーヴパッフェの王様なの?」
「どっちも俺だよ!なんで、それを認めてくれたオマエがそうやって、」
「私は、私の王子様を幸せに出来ない」
慰めてあげることはいくらだって出来る。癒やすことだって心得てる。甘えさせることだって喜んでしてあげたい。
けど、それは幸せに繋がらない。
「レーヴパッフェはこれからが大切でしょ。まだまだこれからで、
……
テレビの話だって、ようやく出た所でバレたらおしまいだもん」
たとえ事務所が許容したとしても、ファンは許せない。顔だけで見られたくないと頑張った今を壊すのが私でありたくない。全部私の我儘だ。ごめんね、玲音。
「だから、さよなら」
「
……
ッ、いやだ」
「玲音」
「いやだ!」
抱きすくめられた身体は痛いほどで、肩口に押し付けられた玲音の頭は何度も私を詰る。もう子供でもないけれど、まだ大人にもなりきれない。難しいね。大人って、なんだろうね。
でも、大人になるって言い訳しないとお別れ出来ないの。
ちゃんとお別れを告げる時点で、中学生の私達とは全く違うのだから許してほしい。向き合ってお別れをする私を王様として褒めてくれたっていいじゃない。ほら、私は大人だ。
「
……
いやだ、」
「ごめんなさい」
「
……
理緒、行かないで」
「ごめんね」
きっと玲音も分かっているんでしょう?玲音ももうケジメはついているんでしょう。
自分が『王様』として生きることを優先したいこと、気づいているのでしょう?
「玲音はもう歩けるよ」
「
……
」
「雨はもう怖くないでしょ?」
「
……
うん」
「別に永遠の別れじゃないんだから」
だから、さよならしようよ。
互いの涙を眺めては、尚更ぐしゃぐしゃに顔を歪めあった。さよならのキスは涙の味がした、なんてどこかの曲が歌っていたっけ。これはなんの味だろう。どちらかというとさっき食べていたチョコレートアイスの味だ。
さよなら王子様。私の玲音。次会う時は『king』と『ファン』として。
「次のQueenからの質問!『kingはツイッターもやっていた頃に雨が嫌いだったと言ってましたよね。最近はどうですか?』と、king〜どうなんですか〜?」
久遠先輩の声はなんだか優しい。ムスッとした顔の玲音がすぐに想像出来てしまって、ラジオ越しの私が笑ってしまった。そうだな、少し悩んだような玲音の次の言葉を待つ。
「雨は嫌いでもない。もう怖くもない。いつだってひとりじゃないってもう知ってるから」
その言葉は、kingなのか、玲音なのか。
ああ、そうだ、もう王子様じゃない。香椎玲音はまさしく王様だ。そうして王道を歩いていくんだね。間違ってなかったよね、きっと。
ラジオを途中で切って、今度はテレビに目を向ける。音楽番組で流れるランキングは今週も彼等を映すはずだ。ほら、やっぱり。三週連続ランクインおめでとう、レーヴパッフェ。
液晶テレビに映るオッドアイは今日もスポットライトの下で煌めいている。私だけの王子様だった彼は、今日も皆の王様として完璧に笑っていた。
END
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