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らん
2016-03-28 02:24:28
1437文字
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敬人と英智
「生きてて良かった」
そう言う度に敬人は子供らしく笑う。僕と同じだけの笑みをくれる。それが勝手に敬人自身で決めつけた、愛しい「死神」との思い出だった。
「ねえ、敬人、散歩に」
「却下」
「
……
ちからこぶー」
「それは元気の証明にならん」
じゃあどうすれば君は満足するのかなあ。
つまらないからもう一度退屈なベッドに横たわる。右手に繋がる点滴はそろそろ退院が近いことを知らせる合図だ。それを敬人も知っているくせに、彼は椅子に腰掛けて学院から持ち出しても可能な資料を読んでいた。
「もうすぐ卒業だねぇ」
「まだ1月だぞ」
「もう1月だよ!生徒会もそろそろ選挙だけど、まあ、衣更君が会長だろうね」
「
……
ああ」
嬉しそうな顔しちゃって。敬人は衣更君をずっと会長にしたいと思っていたクチだから、尚更なのかもしれないけれど。
ずっと僕を支える為だけに動いていた敬人は、似たような境遇の子に甘いのだ。
「僕の見舞いになんて来ないで、業務を片していれば良かったのに」
「貴様は治りかけの時に散歩してぶり返して悪化させるタイプだからな。監視してないと気が休まらん。おかげで胃薬を飲むはめになった」
「それは僕のせいじゃない」
「貴様のせいだ」
ろくでもない小競り合いのような会話を交わして、紅茶を淹れて、とねだってみる。ひとつ溜息をつくと、敬人は湯を借りに行くあたり、お人好しすぎて可愛いと思ってしまった。
「
……
ねえ、敬人」
君はもう僕が死ぬかもしれないと思っているのでしょう?
僕の愛しい死神。僕の大好きな親友。希望をくれた人。敏いから、愚直でどうしようもないから、それでも策略を張れてしまうから、でも心根はとても優しすぎるから、君はいつも抱え込む。抱え込んだ時ほど君は眉間に皺が寄るから分かりやすいね。何年の付き合いだと思っているのだろう?
敬人が僕を知ってるように、僕だって君のことを知っているよ。
「死ぬのは怖くないし、 泣いてほしくもないんだよ」
だって、アイドルは、みんなを笑顔にする存在なのに。そんな存在が人を泣かせるなんて
……
とは、言えないけれど。アイドルもどき達を人間だと認めなかった血気盛んな僕は棚に放り上げることになってしまうから、言わないけれど。
「でもね、覚えていてほしいんだ」
英智が居たことを、どうか忘れないでね。
病室に戻ってきた敬人は今日も眉間に皺が寄っている。ああ、その一端が自分でなければ良かったのに、なんて。
「敬人、やっぱりちからこぶは元気の証明になると思うんだ」
「だから、ならんと何度言ったら分かるんだ?度し難い
……
」
衰弱して折れそうな腕でも、最後まで曲げられるんだよ?ほら、ちからこぶは元気の証明になるじゃない。
いつか来る最期の日には、君の涙を貰って飲み干していくからね。敬人は死神じゃないから、生きている人だから、僕のために流す涙は全部僕が受け取って、解放するからね。
そう言えば、きっと敬人は怒鳴るのだろう。眉間に更に皺を寄せてしまうから。
「ちからこぶー」
「
……
ちからこぶ君でも描けばいいのか
……
?」
「ああ、いいねぇ」
解放すると言いながら、覚えていて、忘れないで、なんて卑怯かな。
それでも、生きていた証が残ってほしいんだ。
「
……
敬人」
ありがとう。
血の色とは全く違う紅い茶を、足りない赤血球の代わりに流し込む。まるで吸血鬼みたいだと笑ったら、敬人はどんな顔をするだろう?
END
離れられないのはお互い様
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