※書き途中のもの。ストーリー再確認してないので色々可笑しいかも。ツイッタでレヴァフェ新曲話出る前に書いてたので齟齬発生してます。
愛も恋も必要なものだと思えなくなった。紙面上の契約だけで公に認められることを永遠だなんだというドラマや映画、小説の気持ちが分からなかった。
どうせいつかは絶対に壊れるのに、どうして人は愛を探すのだろう。血の繋がりもない相手に、一体どうして入れ込めるのだろう。
優しいのではなくて、興味がないだけ。しっかりしているのではなくて、絶望してるだけ。自分を形作る他人の評価はどれも裏返しだ。
それを自覚しつつ、僕は今日も歌詞を書く。愛してみたくて、でも、愛し方も愛され方も偽りになってしまう僕自身を投影した自己中心的な吐露。
好きな人は居る。きっとこれが恋だと思う。隣に居たい、愛されたい、出来るならば、その笑顔と心を自分のものに。でも、それは絶対に無理なことだった。
関係を壊すくらいなら、僕が何もかも我慢すればいいのだ。今が幸せだから、もう壊れる様なんて見たくないから、僕の幸せのために僕の感情に蓋をすることにした。その代わり、歌詞に時たま想いを込める。
「君はもう、記憶でしか愛せない」
手は伸ばせない。記憶の中でひたすらリピートさせる幻影に愛を伝える。
「I was losing you.ね、」
「いきなりどうしたの、玲音」
「いや、久々に歌ったけどさ、去年とはやっぱ印象が違うように感じる。亜貴にとってこの一言ってデカいのかなーってさ。もっと噛みしめて歌おうと思って」
デビューしてからの二発目はこれまで歌っていた曲で。社長の方針に乗って、レヴァフェとして結成されてからはじめての曲をレコーディングすることになり、音合わせをしていた時のことだった。
歌い終えた玲音はそう僕に伝えたのだ。玲音は本能的に察する能力が高いし、兄弟なだけあって思考や行動が似通う。いつかは暴かれそうで少し肝が冷えた。
デビューしてからも僕の書く歌詞は相変わらずだ。曲調と歌詞のギャップという持ち味がレヴァフェだと周囲に言われる度、嬉しさと悲しみがごちゃごちゃになった複雑な気持ちになる。なんだか僕だけ前に進めていないように思うからだ。皆は寂しさを前に進む原動力へと変換させるものを持ち始めた。でも、僕は?
そう考える度スランプに陥って、また何日も眠れない日が続いた。新曲は二ヶ月後に発表予定で、曲は既に出来ていた。ももちゃんの曲は次回に持ち越しで、玲音とルーク共同で作曲したアップテンポのロックだ。
高校を卒業して時間にゆとりが持てるようになった分、久遠のギターテクニックは更に良くなっている。そんな彼の速弾きを生かした間奏に、ももちゃんの多彩なベース、玲音のよく通る力強い歌声。きっとこの曲に合う。僕のドラムもきっと合うと信じている。けれど、歌詞だけはどうしても浮かばなかった。
「駄目だなあ」
ルーズリーフに並ぶ言葉を繋げても気持ち悪い。単語から広げていくことも出来そうにない。気分だけが滅入って、逆に脳は目覚めていく。眠って忘れることは許されず、怖くてひたすらに起きているしかない。
そんな僕を見兼ねてなのか、それとも可愛い妹の頼みで断われなかったのか、明日は久遠の妹である永久ちゃんと遊ぶことになっていた。さすがに寝不足のままだと彼女を心配させてしまいそうだ。だから寝たい。けれど、そんな気持ちとは裏腹に眠気は訪れてくれなかった。
大丈夫。嘘はうまい自信があるから、きっとバレない。
書き殴った言葉の羅列を破いて、コーヒーを淹れようと席を立った。
***
「亜貴さん!」
「こんにちは、永久ちゃん」
待ち合わせは藍鉄駅改札前。結局一睡も出来ないまま来てしまったけれど、永久ちゃんは特に気づいた様子もなさそうで安心する。久遠の妹である彼女もとても機微に敏感だ。人の顔を見ることが出来る子だからこそ、余計に心配はかけさせたくなかった。
「今日は洋服買うんだっけ?理緒ちゃんじゃなくて良かったの?」
「理緒先輩誘ったんですけど、今日塾なんですって。だから、お兄ちゃんーと思ったら、亜貴さんとどうだ?って」
「いいよ、荷物持ちするよ?」
「やだ!お兄ちゃんならさせますけど、亜貴さんにそんなことさせませんよ!」
幼なじみの理緒ちゃんとは違って、永久ちゃんはとても活発でどんどん前に進むタイプだ。勿論理緒ちゃんも信念は曲げないし、胸の内の情熱はすごいから似ている所もある。けれど、表面的なタイプがこの二人は違う。
置いてかれないようにしなきゃなあ、なんて呑気に考えていると、早速永久ちゃんはショッピングモールへと歩き出していた。
「亜貴さーん!」
「はぁい」
普段から面影があるけれど、笑うと彼女は久遠に殊更似ている。その屈託のない、裏表を感じない笑顔は彼女の兄と同じものだ。僕の記憶の中の彼ととても似ている。憎らしくなってしまいそうなほど。
亜貴さーん?もう一度呼ばれた自分の名前に、感傷から引き戻される。ごめんね、なんてほんのりとした罪悪感と沢山の自分に対する嫌悪に侵されながら、いつも通りに微笑んだ。
永久ちゃんの隣に並び、一緒にショッピングモールを片端から回っていった。彼女の目移りするスピードに驚きつつも、目敏く獲物――服だけれど、を捉える姿に感動してしまった。男の買い物なんてもっと緩くて、意外に悩んで長引いたりもするのに、彼女に迷いはなさそうだ。
「いつもある程度の目星はつけてから来るんです。そうしたら悩む必要もないし」
「なるほど。無駄遣いも減るしね?」
「そうなんですよー!って、あ、だめ、ああいうカバン見ると欲しくなっちゃう……前言撤回です。無駄遣いは減りません」
「はは……ま、まあ、一目惚れしたものはその時買わないと出会えないからね」
久遠と同じように、永久ちゃんも人との付き合いが上手い。それが計算なのか天然なのかは置いても、他人に話を合わせたり、うまい会話をするのが得意だ。それは久遠や玲音、ももちゃんにも言えることだけれど、顔の良い人は大抵人のあしらい方や扱い方を知っている。彼女もその口なのだろう。
僕がつまらなくならないように、迷惑がかからないように、そんな配慮を感じさせないように振舞う永久ちゃんの年下ならざる言動に舌を巻きつつ、僕の頬は自然と緩んでいた。
書きたい所までいけてないけど書きたいから下から書く
あれ、なんで、水が髪から垂れてくるんだろう。
どこか他人事のように思いつつ、理性は的確に判断を下した。目の前の彼女が水をかけてきたのだ。それはもうなんの躊躇もなく、ただ感情に任せて。
ももちゃんも前に理緒ちゃんに水かけられたって話してたなあ、今度は僕か。理由も、相手も、場所も違うけれど。
「逃げるんですか、意気地なし」
「……逃げてない」
「自分が我慢すれば幸せなんて、亜貴さんの憶測でしょう。馬鹿じゃないの」
「客観的に考えての結論だよ?憶測なんかじゃない」
「だから!それが『そうであってほしい』と願う亜貴さんの意見でしかないでしょう!亜貴さんはどうしたいんですか?居場所が欲しいだけの駄々っ子なら、あの人みたいにお兄ちゃんに縋ればいいじゃない!」
「あの女と僕を一緒にするな!」
「何が違うんですか?!逃げるだけ逃げて何もしようとしない貴方に、あの人と自分を同じ場所にカテゴライズされることを嫌がることなんて出来ないでしょ?!亜貴さんがあの人を嫌いなのはお兄ちゃんをどん底まで落とすからじゃない。同族嫌悪でしょ!」
久遠に半殺しにされて、愛の重さに耐えきれなくなって狂ったアイツと僕が同族?悪い冗談でしかない。
僕は久遠のせいになんてしない。僕は久遠に依存しない。僕は久遠の「親友」だから、久遠は久遠でしかない。
「何も知らないくせに、何が分かるの?」
「知らないからこそ、外側から見れば分かることもあります」
「そっちこそ憶測でしかないじゃないか。何も知らないくせに壊さないでよ……」
「壊さないと、ずっとこのままでしょう」
「このままの何がいけないんだよ!」
握りしめた拳をテーブルにぶつける。思った以上に音は響いたけれど、目の前の少女は怯まない。
ああ、その顔で、そんな瞳で僕を見るな。こんな時まで久遠にそっくりな彼女の顔を見ると、どうしてか泣きたくなった。
強い眼差し、引き締められた口元。久遠も怒るとそうなるんだ。怒りに身を任せることはせず、どこか一線を引いて冷静に見ている。それが崩れたのは、あの女の前でだけだったね、久遠。
悔しいけれど、弱さを見せてくれたのも、泣いてくれたのも、あの女のおかげだった。全部、あの女のおかげで僕は久遠の中で成り立った。久遠の弱さを吐き出す為の唯一の居場所になれた。それがどれだけ悔しくて憎くて、でも嬉しかったかなんて知らないでしょ?
だから、目の前の少女にこの気持ちを理解することなんて出来ないはずなのだ。どれだけ似ていても、どれだけ聡くても、君は久遠でもなければ僕でもない。
「止まることで自分を守って、じゃあ、お兄ちゃんが一歩踏み出したら貴方はどうするんですか」
「久遠はいくらだって踏み出していけばいい。僕は見守るだけだから」
「進んで欲しいと願う皆の気持ちを無碍にするんですか」
「そんなの、」
「出来ないでしょう?……結局貴方は優しいから。でも変わることは恐いから。そうやって嘘をついて進んでいるフリをする」
可哀相なヒト。
女に対してこんな感情を抱くのは二度目だ。目の前の久遠そっくりな幻影を殺したい。情けをかけられる筋合いも、哀れまれる意味も分からない。
久遠とそっくりな君だけど、やっぱり全くの別人なんだね
「黙れよ…… 」
「黙りません。黙ることで満足できるなら殺してくれたっていいですよ。でも、お兄ちゃんは泣いて貴方と絶交しますよ?自分の為にそんなことできないでしょう?貴方の好きな人が泣くリスクなんて犯せないでしょう?だから、貴方は絶対に私を殺せない」
テーブルに足をかけたと思ったら、そのまま上に乗っかって僕の目の前にまで彼女は来た。そして僕を抱きしめる。可哀想だと、哀れだと、僕の大嫌いな言葉を並べながら体温を分け与える。今更すぎるけれど、ほんの少し周囲が見えた気がした。出禁かな、なんて、どうでもいいことを考えるほど少し。
「私を代わりにしていいんですよ。……顔も、性格も、似てるでしょう?私を久遠って呼んだっていいんです。永久も、久遠も、意味は同じなんだから」
ずっと自分を代わりとして扱った貴方は、誰かを代わりにする権利があります。
そんな権利あるわけないのに、それが戯言だと彼女自身理解しているはずなのに、それでも囁かれた言葉は僕にとって甘言でしかなかった。
くおん、掠れて喉にひっついた僕の声は二酸化炭素とともに外界に漏れる。
「くおん」
「はい」
「……久遠」
「はい、久遠、ですよ」
「っ、……好きだよ、久遠」
「俺も、大好きだ」
声色は彼女自身のものなのに、たった一言、俺もだというその言葉に僕の瞳は涙を流す。滑稽すぎる。それでも、どうしたって止められなかった。求めてやまなかったそのたった一言が、今はじめて聞けたのだ。
久遠が、僕と同じ気持ちを同じ量で返してくれる世界。自分を代わりにしてそれを再現した永久ちゃんが、今になってやっと再認識できる。
「また会ってくれる?久遠」
「望むならいつだって。……俺、春からルチルに行くから」
「そっかあ……じゃあ、あえるね、久遠」
「会えるよ、亜貴」
君も大概な女だな。結局押しつけて逃さない僕はもっと最低なのだ。一生恨まれたって文句は言えないのだ。それでもいいから、欲しかったんだ
「久遠」
永久を呼ぶ時は、僕が死ぬ時かな
また今度。
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