らん
2014-08-20 23:29:24
1950文字
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アルロス


身長差は顔の分プラス数センチ。
それがはじめてボクと戦士が出会った時の差だった。
実力も何もかも戦士に追いつかなくて、なんでボクが勇者で、戦士が勇者ではないのか悩みもした時期。
その時の戦士への印象といったら人を怒らせるのがうまくて、人の不幸を見るのが大好きで、変な性格してて、でも強くて。色々あるけど気のおけない、そんなあやふやで他愛ない感情で戦士を見ていた。好きか嫌いかと言われれば好きだったけど、その「好き」は信頼関係、友愛の「好き」だ。恋愛感情なんてこれっぽちも無かった。
実は戦士――ロスが勇者クレアシオンだと分かって、ロスが魔王と姿を消した一年間。
今まで隣に居たはずのあの大きな背中がなくて何度か泣いた。ルキには頼れなくて、自分でどうにかするしかないのがどうしようもなく辛かった。それが勇者の役目だと知っていても苦しかった。
でも、そんな時いつも思い出すのは魔王といなくなったロスだった。きっとロスのほうがつらい。ボクには今ルキが一緒に居てくれるけど、アイツには誰もいないのだ。
泣くのをやめて、それからは我武者羅だった。はやく追いつかなくては、はやくロスみたいにならなくては、はやく、はやく、――助けなきゃ
過去を知って、その気持ちは更に強くなった。
なんだよ、ロス、全然強くなんかないじゃん。
あの言動は精一杯の強がりで、もしくは忘れるための無茶苦茶で、それを思う度とてつもなく胸が締め付けられる。
どうしてボクはあの時あんなに弱かったんだろう?あの時のボクがもっと強ければ、ロスはボクを頼ってくれただろうか
離れている期間で思い知った気持ちは、未だに友愛だと思いたかった。きっと、友愛だと。


「勇者さん」
ハッ、と遠のいていた意識を戻すと、目の前には教材を丸めて構えるシオンが居た。制止の声を出す前に思いっきり殴られて、ツッコみすら出来なかった。痛い。
「手止まってんですよアバラ野朗。月一回しか来れないんですからもっと効率よくやってください」
「ご、ごめん……

再会して、一年ぶりに見るロスはなんだか小さくなったように見えた。ボクの身長が伸びたおかげで、身長差が数センチにまで縮まったおかげだった。それが、やっと頼ってもらう資格を得たようで嬉しかった。
これでようやくお前を助けられる。力だって少しは強くなって、勇者という称号に見合うくらいには頑張ったのだ。なあ、シオン、だから頼ってよ
そう願ったけど、それは叶わなかった。それどころか、シオンはここ最近ボクを避ける。膨大な魔力を手に入れた今のボクに魔力の扱い方を教えてくれるし、昔みたいに話してくれるけれど、どこか距離が開いてしまった。
なんでだろう、どうしてだろう、この数ヶ月で募った想いはもはや友愛なんて綺麗なものじゃなくて、恋愛感情だとボク自身が気づく前に、シオンが気づいてしまったんだろうか
こんなドロドロした重苦しい感情を、シオンは感じ取ってしまったのだろうか?

「ねえシオン」
「なんですか」
「あのさ、」

ボク、お前がすきなんだ

言えたら楽になるのかもしれない。でも、拒絶されて更に距離が開くことには耐えられない。結局そこまで強くなれてなかった。
なあ、シオン。ボク、どうしようもないくらいにお前が好きなんだよ。もうはじめて旅をしていた頃には戻れないくらい、すごく好きなんだ
気持ち悪いかな

「黙られても通じないですよ勇者さん」
「あ、あー……あのさ、ここの公式ってこれでいいの?」
「そうですね、でもこの途中式の一つは上の式に組み込めるので短縮しましょうか」

あ、睫毛長いようで意外に短い。でも綺麗だ。シオンの手元なんかまるっと無視して、ボクの視線はシオンの近づいた顔に釘付け。バカだなって分かってるけど、どうしようもないのも事実。
……勇者さん、アンタから聞いてきといて、問題に集中しないってのはケンカ売ってんですか?買いますよ?買いました」
「ぅぐッ?!痛い!!殴んなくていいだろ?!」
「アバラの分際で俺の話をちゃんと聞かないなんてホンットにクズだな」
「なにそれヒドイ!」
殴られた頬をさすりつつ、今度こそ大人しくシオンの書いた式を見る。珍しく汚い字に違和感を覚えて、またシオンに目線を移した。
「なんですか」
「いや、今日、体調でも悪いの?」
「はあ?」
「だって字汚いし」
……勇者さん、キモい」
「ンな、っ!」
「誰だって顔ガン見されてたら緊張もします」
この野郎、そう言い放つ口調こそいつも通りだけれど、照れによってほんのりと赤らんだ頬はいつも通りなんかじゃなかった。知らない。こんなシオン、はじめて見た
……シオン」
「なんですか」
「あのさ、」


飽きた