らん
2014-06-28 17:39:03
1193文字
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トイアレ途中のやつ


踏み出せる一歩が欲しい。それこそ絶対に傷つかないですむ最良の、魔法のようなきっかけが。


「寝すぎた」
外はオレンジと紫のグラデーションを窓からトイフェルに示す。一等星が煌めく様子を見ることが出来るから、きっと明日も晴れるだろう。トイフェルはひとつ欠伸をかましながら、窓から見えるビロードに対して言うかのように呟いた。
今日は昼頃からうまく人の目をすり抜けて自室に戻り、惰眠を貪っていたのだ。寝る前は燦々と降り注いで身を焼いた、憎らしいくらい熱い太陽も消え、既に身を包むような闇ヘと向かって時が進んでいる。
ベッドのスプリングを鈍く軋ませながら、ゆっくりと足を地に付ける。そのまま腰を浮かせ、腕を伸ばして背骨を鳴らした。
いまだに半覚醒状態を続ける脳味噌はそのままに、トイフェルはただひとつ思い立った衝動に従うことにする。衝動といっても、ただ喉が渇いたので水を取りに行くだけだ。
脱いでいた革靴に、爪先を叩いて足を埋める。せっかく良い靴履いてるのに!と彼に怒ったのは立場上は同位置に値する血気盛んなメイド長だったか。金になるものはある程度丁寧に扱う彼女の仕事用のブーツは、なるほど確かにいつも綺麗だった。人に注意出来るだけのことはある。
そんな回想に耽りながらもトイフェルは自室を抜け、馬鹿みたいに長い廊下を歩く。音がしない様に敷き詰められた絨毯は今日も鮮やかな赤色だ。血のような気持ち悪い赤ではなく、見目麗しい色合いの、例えるならば宝石のような澄んだ赤である。それを踏みつけながら、あと数百メートル歩けば辿り着くであろう厨房に向かって歩き続けた。
すると、前方から絨毯すら吸収しきれなかった足音を鳴らして誰かが走ってきた。いまだに覚めない脳味噌は、端に寄ってその人物を回避することを決めた。まず、トイフェルの目線は前方すら見ていない。とりあえず面倒くさいからどいておこう精神である。もう夜なのに元気で何より、なんて。
「テメェ!ふざけんなよ!!」
「ひぃえッ?!」
しかし、回避することは不可能だった。理由としては、第一に前方から来た人物の走っていた理由がトイフェルだったことと、第二にその前方から来た人物がメイド長であるアレスだったことが挙げられる。特に第二の理由はとんでもない。アレスはトイフェルが避ける前に、彼の緩んだネクタイを駆け寄った勢いのまま引っ張った。そのおかげでトイフェルは不自然に身体を折り曲げることになり、結果、彼の腰が良くない音を立てた。悲鳴はその副産物である。
「なんっでアタシは働いてアンタは働いてねーんだよ?!どうせどっかで寝てたんだろ?!」
「いた、痛い、痛いいたい!!ネクタイ掴んで揺さぶるの危険!いたい!」
「知るかッ!こちとら久々の勤務でイラついてんだ!なのに寝てたとは、どう落とし前つけるんだ?!あぁ?!」



続きはいつかまた。