らん
2014-06-19 20:09:46
722文字
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トイアレ雰囲気文


人間は死ぬ。それは変えようのない事実で、それを承知のうえで手を伸ばした。触れる資格なんて無かったのに、それでも触れたかったのだ。
「アレスさん」
腕の中に収まった彼女の鼓動は少し速い。魂の暖かさが伝わる。それくらいの至近距離。
普段だったら許してくれないであろうこの行為は、きっと彼女の良心からくるせめてもの慰めで許されている。
手首を握って引き寄せて、少し力加減を間違えたせいでつんのめった彼女を支える為に肩に手を置いて、次の瞬間には閉じ込めた。女性にしては高い身長も、自分よりは小さいから気にならない。
「アレスさん」
…………なんだよ」
「いいえ、なんでも」
アレスさんはひとつ溜息をつくと、ゆっくりと俺の頬に手を置いた。その手は肩に移動し、二の腕を伝い、手首でとまる。
「死なないよ、まだね」
あなたと俺の時間は全く別物だ。そんなの気休めでしかない。言えはしない代わりに、アレスさんの両頬に手を添える。
「悪魔は泣かないんだよ、笑ってろ」
笑えるわけ、ないでしょう
掠れた声の一言は、彼女の耳に届いたはず。それでも、彼女はもう一度笑えと強要するだけだった。ああ、なんで、どうして、あなたは笑えるんだろうか
「死ぬのは怖くない」
死んでほしくないという俺の気持ちは、理解してくれないらしい
「どうしようもないときは、魂抜いてよ」
そして、俺に悪魔でいることを求めるのだ。一生忘れないような傷を残させるのだ。ずるい女だ
触れる資格なんかなかったのに手を伸ばしたから、こんなに重い罰が下ったのだ。
人間は死ぬ。悪魔に好かれた人間も、それは例外じゃない。
「アレスさん」

死なないで

最後まで、その言葉だけは言えなかった