IchoKaede
2021-12-26 17:46:12
4128文字
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一日遅れのクリスマスプレゼント

クーリさん宅の燎くんから頂いたクリスマスプレゼント、湧治からソレのお返しをする話です。湧治が受け取ったのは物だけでなく思いやりの気持ちも頂きました。

【登場人物紹介】

🛷日埜 燎(クーリさん@kuuri_krtt )
📝キャラクターシート


🛷浅海 湧治(あすなろ@IchoKaede)
📝キャラクターシート



【本作のイメージソングについて】
「ラフ・メイカー」/BUMP OF CHICKEN
湧治は燎くんから元気と笑顔を貰いました。
(↓ミュージックビデオへのリンク)



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【一日遅れのクリスマスプレゼント】


12月25日の朝。
オレは今、未曾有の危機にさらされている。

机の上には手のひら大より一回り大きい箱。ちゃーんとリボンが結ばれていて、誰がどう見てもプレゼントだと分かる。
寝返りを打った時に鼻の先をぶつけてしまい箱の角が少し凹んでしまって残念に思っていたり、そのせいでさっきまで鼻水が止まらなかったりしたのは些細なことで。
それより今は……

「ヤベェ……
 誰が、どうして、オレにプレゼントを贈ってくれたのか分からねぇ……
もう1時間も経つと言うのに、立木○彦みたいな声が出せそうなポーズのまま浅海湧治は考え込んでしまっている。
……こう言うの慣れてねぇんだよ。
 クリスマスに祝い事するのも慣れてねぇから、去年もみんなが騒いでる中を抜け出してきたってのにな……

クリスマスは諸事情あって(ただしお家柄で宗教的な縛りがあるとか、そういうメンドクサイ事情ではないのだが)お祝いのイベントの日と言える家庭でなかったこともあり、先に吐き出したように湧治は「慣れてない」。
加えて、誕生日は12月31日の大晦日、翌日は元日でお正月。
これまで誕生日プレゼントと言ったら、年の瀬で忙しいこともあり「何が欲しい?」「これがいい」と淡々としてサプライズ感は一切なく、ケーキと年越しそばが一緒にテーブルに並ぶ。
翌朝はお年玉を貰ったと思ったら、親戚一同が家に集まりだす環境で育ってきた。
そんな湧治にとって、ここまでしっかりとサプライズで「お祝い」を受け取るのは初めての事だった。

……! あ、まさか資格持った公認サンタクロースが学園内にいるのか?」
と手元の端末に手を伸ばし調べ始める。
「グリーンランド国際サンタクロース協会……
 資格要件は、荷物、装備含めて120kg以上、みんなを和ませる笑い声が出せる、結婚してて、離婚歴のない、子持ち……
 当てはまるヤツはいねぇな……
…………
「って違ぁぁぁう!!」
投げた端末はボスッと音を立ててベッドの上に着地する。
こんな行動をしてしまうなんて相当混乱してるのだと改めて思う。

いよいよ考えるだけでは万策尽きた感が漂ってきて、残る手段は行動すること。
そう、まだ箱を開けてすらいない。
「仕方ない、な。
 ……いや贈りモンに"仕方ない"って言い方は失礼だろ!」
セルフツッコミをかましながら、まるでびっくり箱を開ける"なぎスケ"の様に、おそるおそるプレゼントの包装をほどいていく。

中身を取り出すと、そこには自分の姿をしたぬいぐるみ。
……これ、……オレ?」
改めて正面から両手で包み込み、まじまじと眺める。
……スゲェ良く出来てるな。
 店の売りモンみたいだ。」
触っていると、胸の奥からお日様が昇ってくるように温かくなる。
親指でふにふにと胴体を押して綿の弾力を確かめるのがとても気持ちいい。
フワフワとした気持ちに、たぶん顔もほころんでいた事だろう。

トトトトっと誰かが廊下を歩く音が聞こえ、現実に引き戻される。
……ん、そうだ。
 おかえし、しなきゃな。
 ここまでしてくれたんだ。」
こんな粋な事をしてくれた犯人には、それ相応の"仕返し"をしてやらないと気が済まない。
そうと決めたら、「誰が」「いつ」「こんなに手の込んだ物を作れるのか」に絞って考え始める。

まずは、ぬいぐるみを作れる腕を持ったヤツに心当たりが無いか考えを巡らす。裁縫が得意なヤツと言えばマネージャー陣が筆頭に挙がるが、ここまで作れるとは聞いたことが無い。
後は「いつ作ってるか」だが、ここ最近でいつもと違った事と言えば「いつもなら遅くまでワーワー騒いでるのにね」と他のメンバーに噂されてるアイツの顔が思い浮かぶ。
「でも、ここまで裁縫が得意だとか聞いたことが無いな……
と、つぶやいて思った。
オレと仲良くしてくれてるのに、オレは思っていたよりアイツの事を知らない。

少し唸りながら考えていたところ、コンコンとドアが叩かれる。
「浅海ー、そろそろ準備の時間だぞー」
「あ、分かった、今行くー」
振り向きざまにプレゼントの空箱に肘が当たり落としてしまう。
その脇に見慣れた色を見つけ、確信を得られた。

……んじゃ、あとはお返しの品を何にするかだな」
その言葉を口からこぼし、まずは今日12月25日、
獣山学園犬ぞり部をあげてのクリスマスイベントの準備に取りかかる。
ヘアゴムで髪を束ね、パチンッと良い音を立てる。
「っし! 気合い入れて行きますか、だな!」


    ◇


プレゼントを運び配るだけのイベントだと、淡々とこなしていけば良いと、今日の朝までは考えていた。
だが、プレゼントを貰う側の気持ちがどんなに嬉しいのか、みんなの笑顔を見て、いつもと違う感覚を持っている自分が分かる。
アイツはそこそこの頻度で大口を開けてあくびをしながらプレゼントを配っている。その様子を横目で追いながら、そんな思いまでしてプレゼントを配ったのかと吹き出して笑いたくなってしまう。


    ◇


そうしているうち、犬ぞり部をあげてのイベントはひとまず無事に終わった。
街を出歩いている時に必要なトコには目星をつけてある。
トナカイの衣装をイソイソと脱いでジャージに着替え、
「ちょっとオレ、買い物に行ってくるわ。」
仲間に声を掛け、ひとり抜け出す。

「まずはココだな」
スポーツショップに入り、小物類が置いてある棚へ向かう。
「コレならアイツも使えるだろう」
どうしても自分に身近なアイテムしか思い浮かばないが、そう言えば共通点もあったと思い、商品を手に取る。

「そして次は
文房具屋の前に立ち、クリスマス用のラッピング袋を探す。もうお正月用品が前面に売り出されてしまっている中で焦ったが、店の隅に追いやられたクリスマス向けのコーナーを見つけた。
箔押しのシールも買い、なんとかカタチになる一式が揃った頃には、門限に間に合うかギリギリの時間が迫っていた。

「ヤッベ帰らねぇと!」
琥珀寮に着いたら脇目も振らず自室に戻る。
「まずはコレを詰め直して……
 あ、この際だ。手紙でも添えるか。」
これが悪手だった。
思ったよりメッセージを添える内容に悩み、何度も書き直して、気付くと消灯時間を過ぎていた。
「おぉ……クリスマスって日が過ぎていく……
 とりあえず行くだけ行ってみるか……
そしてヤツの部屋の扉をノックしたが応答は無く、あえなく撃沈した。
「そりゃそうだよな……
 あれだけ眠そうにしてりゃ寝るのは早ぇーわ。
 仕方ない、明日捕まえるか……


    ◇


そして翌日。
共用スペースに近づくにつれて、アイツの賑やかな声が聞こえてくる。
「燎、昨日はお疲れ。ちょっと来てもらっていいか?」
「お、ゆーじ、どうしたっすか?」
「いや、大したことじゃないんだが……
 とにかく来てくれ」
と言って日埜の腕を引っ張り……
「わ! ちょっ、ちょっと!」
「わりぃ、ちょっと日埜借りてくな」
周りのメンバーに声をかけて、なかば強引に連れ出す。

寮の裏手に着いて、やっと湧治は歩みを止める。
「もー、何なんすか一体……?」
「コレ、お前が贈ってくれたんだろ?」
ぬいぐるみを前に差し出し、単刀直入に話を切り出す。
「あ、可愛いっすねこれ。どしたん?」
「隠さなくていい、燎。」
ほら、コレお前のだろ?とプレゼントの箱の奥にまぎれ込んでいた、燃えるような赤色の毛を見せる。
「あははー……」と日埜はバツの悪そうな顔をしてる。
「迷惑だった?」
……いや、スゲー嬉しい。
 ただ……、こう言うの慣れてなくてな。
 どうしたらいいか分からなくて。」
だから強引にここまで引っ張ってきてしまったと、コッチこそ悪かったと付け加えた。
「だからせめてコレ、受け取ってくれ。
 一日遅れのクリスマスプレゼント。」
……お返し。遅くなって悪かった。」

……うおー! コレここで開けて良いっすか!?」
「やめてくれ恥ずかしい!
 んじゃ、ソレ渡したからな!!」
と切り上げて、顔を真っ赤にしながら湧治は寮に戻って行こうとする。
「あっ、ちょっ! 一人にするなぁー!! 置いていくなぁー!!」
二人の大声が寒空に響く。


    ◇


浅海湧治から日埜燎へ贈られたプレゼント。
そこには幅広のヘアゴムが黄色と赤色の2本。ラメ糸が織り込まれていて、向きにより光を反射している。
そして手紙が1枚、折りたたんで入っている。
日埜は紙を開き、読み始める。

『オレの好きな色のサンライズイエローと、燎の色のファイアーブライト、2つ入れておいた。(※もちろん新品だからな!)
 ヘアゴムでもリストバンドでも、好きな様に使ってくれ。

 こう言うの慣れてねぇんだ。
 贈ってもらった気持ちと手間に見合わないが、貰ってくれると嬉しい。

 ありがとうな。

               浅海湧治より』

『P.S.
 何か抱えてるモンがあったら、オレにも頼れよ。
 突然に意識が無くなるの、なんか原因あるんだろ?
 話したくなったらでいいから。
 いつでも待ってる。』



【一日遅れのクリスマスプレゼント】