閉鎖的な監獄の中では度々不思議なことが起こる。世界一を目指す才能の原石達が日々鍛錬に励む場において邪魔になる程の事ではないけれど、まだうら若い彼らの生活の中に現れては消えるそれらは、余暇などない監獄での生活で一つのスパイスとして──言うなれば玩具として、受け入れられていた。
二次選考の終盤、1stチームの面々が出揃って間もない頃。「それ」の最初の目撃者は、ブルーロックの申し子と呼ばれる彼だった。
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──深く息を吐き出しながら体を前に倒していく。今日も酷使した脚を傷つけることなく、明日も明後日も走り続けられる様に。夢を叶えるその日まで、地を蹴り上げてまっすぐ進み続けられるように。
目を閉じながらゆったりと上半身を折り畳み、指先に芝が触れた時、ふと背後で扉が開いた。蜂楽だろうか、浴場で今日の練習試合での一幕について話があると言われていた。
「遅かったな蜂楽、消灯時間迫ってるしお先にストレッチ初めちゃってる、ぞ」
カウントが済んだところで言葉を切って視線を背後にやると、そこには相棒の姿はなく、代わりに白い小さなスリッパが一足落ちていた。小学校低学年ほどの年齢だろうか、よれた様子もない随分と綺麗な布製のそれが扉の前に並べてある。
「何だ?」
身を乗り出し周囲を確認するも、人気のない見慣れた廊下が続いているだけで異変はない。誰かのイタズラであるという線もあるが、特別に五感の優れている潔ですら人の気配は感じられなかった──つまりこのスリッパは遠くから投げ置かれたものということになるのだが。
「それにしては綺麗に揃いすぎだよな」
試合中は激しく言葉と身体のぶつけ合いを重ねる潔だが、普段は至って善良な好青年だ。もしイタズラじゃない誰かの落とし物なら帝襟さんに届ける必要があるし、そうでなくとも幼子を思い起こさせるこれを無視することには抵抗があった。一見不思議に思える点は横に置き、部屋の内側にかわいらしいスリッパを移動させた。
このまま廊下に出していてはブルーロックTOP1&2の小競り合いに巻き込まれることもあるかもしれない。久々にスーツの電気ショックが発動されるほど酷い諍いだった昨夜の惨事を振り払うように伸びをすると、またもや扉が開いた。
「ごめーん潔! パンツ見失って探してたら遅れちった」
肩口で揃えられた跳ねるような癖のある髪をタオルに乗せて現れたのは、相棒であり、切磋琢磨し合う心強いライバルでもある待ち人、蜂楽だった。
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