sevendays23
2024-09-15 23:13:02
3717文字
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エスコートブーム

ぷれshのグリに焼かれた人です。一味みんなをエスコートするせんちょのおはなし。

「サンジ!エスカートのやり方教えてくれ!」

「は?なんでだよ。それにエスカートじゃねぇ。エスコートだ」

料理人は鍋を振り上げながらきょとんとした顔をする。今日の食事の一つであるチャーハン。チャーシューに青ネギ、卵とシンプルな仕上がりであるそれは今まさに出来上がりかけていた。今日の船番組、船長、剣士、料理人のお昼である。

「だってよ!みんなと手繋げて色んなとこ行けて楽しそうじゃねぇか!」

「あれは単に手繋いでどっかいくもんじゃねぇ。ゆっくり!歩いて!レディを!!お導きするもんだ!愛情とともにな!!」

器用にも鍋を振り混ぜチャーハンをパラパラに仕上げながら力説する。ちゃんと食にも愛情を欠かさないのは彼らしい。

「ふーん!じゃあおれもできるな!ゾロとしてこよー!」

「マリモとする分にゃ勝手にしろ、ただしレディとはするな!おれがする!!」

「ありがとな!サンジ!あとでサンジともしような!!」

「おい、おれとは……

「しし、メシだぞー!ゾロ!」

レディにだとか料理人にはいいとか彼が言う前に、船長はキッチンを飛び出していった。

「人の話聞かねぇクソゴムめ……

料理人はぱんと額をたたきながら、チャーハンの仕上げを行うのだった。

―――――――

「ゾロ!キッチンまでいそいでエスコートするぞ!メシだ!」

「あぁ!?」

「いくぞぞーろ!」

甲板で昼寝をしていた剣士は目を覚ました。わしっと両手を掴まれて、ブンブン振りながら、

「いくぞぞーろ!!!」

と言葉を繰り返し、足を弾ませながら、ぐいっと起き上がらされたからだ。

「おいまて、ルフィ!」

だが、剣士はぐっとその腕を逆に握って止める。びよんと船長の腕が伸びるだけなのだが、それでも止まる。

「なんだよ!!」

「あのアホがやってるのは片手だろ。それじゃただの踊りだ」

「そうか!ゾロはサンジのこと良く見てんなぁ!」

「うるせぇ、わかったならとっととしろ」

「しし、よし、こうだな!!」

がしっと片手を掴んで、少し引っ張るように、割と早足で、船長は剣士をキッチンに連れて行く。

……さっきよりは、マシだな」

「だろっ!!」

初めてのエスコートは、早足で、キッチンへとさくさくと。可笑しそうに頰を緩めた剣士を連れて行くのだった。

――――――

そこから、船長のエスコートブームは始まったらしい。

「ナミー!!冒険だぞー!!エスコートするぞー!!」

「もうっ、ちょっと強引よそれ」

航海士はちょっとムスッとした。彼がエスコートという名の強引な引っ張りをするかもしれないと料理人の忠告は入っていた。だからこそ、される側としては言いたいことがあるらしい。

「エスコートするときは握るんじゃなくて手を添える、でしょ」

「やだっ!握る方が持ちやすいし楽しい!」

「だったら、少し手を上にあげたらそれっぽく見えるわよ」

「そうか!!よし!やってみるぞ!」

船長はぐいっと手を持ち上げて、航海士を駆け足で連れて行く。

「ちょっとは、マシになったわね」

「だろっ!!たのしーな!いくぞー!」

呆れながら笑う航海士を、新しい冒険にエスコート。全く行ったことのないワクワクに連れて行く。

――――――――

「ロビンもエスコートだ!!」

次の日、突然すっと船長に手をさしだされたある一味。ここは、甲板。ちょうど本をパタンと閉じたタイミングだった。だから、ふっと笑って、顔を上げる。その一味は、考古学者だった。

「あら、どこまで?」

「ロビンの行きたい場所までだ!」

そう言われて、考古学者はちらと視線を向け、

……そうね。アクアリウムバーに行きたいわ」

その手を慣れないように取った。だが、船長は首を傾げたまま、動かない。

「ほんとか?」

「あら、どうしてそう思うの?」

「本読み終わったなら図書室だろ!ロビンはいっつも!」

考古学者は驚いた顔をした。あそこは階段やらはしごが多くてエスコートには大変だと思って場所を変えたのがバレているようだ。

「でもそこまでのエスコートは大変じゃない?」

「もー!えんりょすんな!」

船長はわしっと手首をつかみ、その手を上げて考古学者を少し早く歩きながらエスコートしていく。考古学者は驚きながらも、くすっと笑った。

「ルフィのエスコート、優しさいっぱいね」

「だろっ!!図書室行くぞー!」

ずんずんと図書室のはしごまでまさにエスコート。望む場所まで仲良く連れて行ってもらえて、彼女は大満足だった。

―――――――

「おお!これがエスコートか!」

「うーん、エスコートマスターのおれからしたらまだまだだが、これはこれで」

「しし、だいぶ上手くなったんだぞー!」

船長の腕は伸びる。だから背丈が違ってもエスコートができるのだ。船医の手を下の方に伸ばしてエスコート。狙撃手はいつもの背丈でエスコートだ。

「で、どこにつれてってくれるんだ?」

「フランキーのとこ!」

「おっ、ちょうどウソップ工場に行きたかったとこだ!明日の釣り竿の調整に」

「おれもー!!おれにあった釣り竿ウソップが作ってくれるんだ!」

「しし!いこう!!」

エスコートというよりは、両手で友達と仲良く手を振るように、彼らはウソップ工場に向かって行くのだった。

――――――

「わー!!新鮮ー!!」

「おれもこんなことされたことはねぇなァ」

「しし!どうだ!おれのエスコート!!」

「ん?」

操舵手は顔を上げた。船大工と音楽家が船長に連れられてどこかに向かっている。いやどこかではない。こちらだ。

「なんじゃい、仲良しでええのう」

「だろっ!ジンベエもやろう!!フランキーは甲板診てぇし、ブルックは甲板で演奏だ!なっ!!」

「いやぁ、船長にエスコートしてもらえるとは新鮮でした!」

「おれもだ、ぜひまたしてくれや」

「おうっ!またやろうな!」

船長はししっとわらって、二人の手をはなし、操舵手の方を見た。

「ジンベエ!どっかいきたいとこあるか!」

「ぬう、今はここじゃ。操舵があるからな」

「わかった!よーし!!」

わしっと操舵手の大きな手に手を添えるように絡める。操舵手はきょとんとした。

「おい、何をしとる」

「サニーといっしょに、エスコートだ!」

……ガハハ!それは最高じゃ!!」

船長の意図を汲んで、操舵手は機嫌よく笑った。そばにいる音楽家と船大工もそれを聞いて笑う。
彼のエスコートは、大波をいくつか一緒にざぶんと乗り越えるまで、続くのだった。

―――――――

「サンジー!」

夜。洗い物を終えて顔を上げた料理人のもとに、ひょこっと船長が顔を出した。だから、彼は噂はかねがね聞いている話題をふる?

「うまくいったかよ、エスコート」

「いった!」

「良かったな、レディにまでやりやがったのは許せねぇが……

「じゃ、最後サンジの番だぞ!」

さらっと船長は手を出してくる。料理人はきょとんとした。

「おい、おれはいいって言ったの聞こえなかったか」

「聞こえてねぇし!連れていきてぇとこあるんだ!」

がしりと手首を掴まれて、もう逃げられない事を悟った。はぁとため息をこぼして、頭をかいた。

……ったく、野郎にエスコートされるなんざごめんなのに……

「いーだろ!行くぞ!」

少し高い位置に手を上げて、キッチンから連れ出し、夜の甲板をエスコート。心地よい夜風が吹いて、金髪と麦わら帽子を揺らす。

「おい、早歩きだぞ。普通はもっとゆっくりだ。エスコート失格」

「サンジは足はえーからちょうどいいだろ!エスコート成功だ!」

……はは、なんだそりゃ」

「ししっ」

なんだかんだでこの状況がおかしくて、そしてちょっと嬉しくて、ぷはりと笑ってしまう。船長もそれを見抜いたように笑って、歩いて、連れて行く先。

「見ろよ!」

手を離す。終着点はここだとばかりに。
そこは、甲板。仲間たちを何度か連れてきた場所。でも、夜はちょっと形を変える。

「今日の夜の海はすげぇって、ナミが教えてくれたんだ!」

……!」

「サンジをエスコートするのに、いいって!」

思わず、息を呑んだ料理人。月に照らされた、紺色の海。魚がたくさんぴちゃぴちゃはねて、鱗をさらに煌めかせて、まるでちょっと、とある絵本の世界みたいだ。

……さっすが、ナミさんだ」

船壁に手を伸ばし、もたれながら、もっと見たいとその風景を見る。船長もそれのマネをした。隣に、同じ格好で。

「お前も、ここまでエスコートしてくれてありがとう」

「ししっ」

照れたように海を見ながらのお礼に、船長はししっと笑った。
船長はいつだって、彼らが行きたい場所を知っている。

――お、あれ、焼き魚にいいぞ。あれは刺し身。

――ほんとか!!明日ウソップと釣るぞ!

――そりゃ、魚もうまく、ここまでエスコートするんだな。