楓花
2024-09-15 21:46:21
Public GD/その他
 

ウインザーノットの結び方 

本木×由弥

原作21巻あたり。ネクタイを結ぶ練習をする本木の話。

原作読み返すと、既に公式(基悠)でやってたネタだったんですが、この二人でやりたかったので。
この時期どうだったかわかりませんが、一応由弥と牧山は同室の設定です。




(あ、出来たかも)

そう思いながら慎重にタイの小剣を引く。ノットの形を整えて顔をあげると、嬉しそうに綻んだ由弥の顔が頷いて、それは確信に変わった。

「よっしゃー! 出来た!!」

思わず拳を握りしめてガッツポーズをとる。
そんな本木の様子に、少し距離をとって何となく見ていた坂口と牧山も近づいてきた。

「ほんとだ、出来てる。やるじゃん」
「思ったより早かったなー」
「ま、コツさえ掴めばこれくらい余裕だし」
「よく言うよ」

途端に得意気な態度になる本木に、坂口は呆れたような声を出した。
でも、一度出来れば何となく理解したのは本当だ。試しに一度解いてもう一度結んでみる。今度は先程よりもスムーズに結ぶことが出来た。
しっかりと結ばれたノットは形良く、自分でも結構満足のいく出来映えに思える。
もうこれで毎朝由弥の手を煩わせることもないな、と本木は思った。

その由弥はと言えば先程まで本木を手ほどきしていたこともあり、漸く自分のタイを手に取ったところだった。
それを見て、ふとある考えが頭に浮かぶ。

「そうだ。由弥の、俺がやってみてもいい?」
「えっ!?」

すぐさま三人同時に驚愕の声が上がった。
いつもやってもらってるから、とほんの軽い気持ちから出た言葉だったが、思いがけない過剰な反応にこちらも驚く。

「それはまだ早いんじゃない?」
「お前、さっきまで自分のすらままならなかっただろ」
「人のはやりずらいと思うけど、大丈夫?」

すぐに声を揃えて(主に坂口と牧山に)無理無理と連呼されて、何だか少しムカついた。

「出来る! ──多分」
「多分って」

ムキになる本木に、由弥は苦笑しつつも「じゃあお願いしようかな」とタイを手渡した。
ここはスムーズに決めて是が非でも良いところを見せたい。早速手に取って、よし、と気合いを入れつつ由弥の首にかけたのだが──


(えっと、まず太い方が前に来るようにクロスするんだよな。あれ? っていうか、そもそもこっちが左側でよかったっけ? ・・・・・・いやあってる、はず。それでここを通して──って、何か違う・・・・・・)

一通りやってみるものの、どうも上手くいかない。だけどどこで間違ったのかもわからない。皆が口を揃えるように、確かに自分のと人のでは勝手が違った。
思うようにいかなくて、結んでは解き結んでは解き・・・と何度もやり直すうちに、段々とイライラし始めてくる。

「おっかしーな・・・さっきは出来たのに」

ポツリと零す本木を、由弥が「人のを結ぶのは難しいから」と優しく宥める。かえって気を遣わせてしまったようで余計に気分が沈んだ。なんか格好悪ぃ。鏡を見るように全てが逆になるって頭では分かってるのに、何で出来ないんだろう。

「あ、そっか!」

そこまで考えて、突如アイデアが閃いた。そうだ、人のだから出来ないんだ。だったら自分でする時と同じ条件にすればいい。

「本木?」

目の前で由弥が不思議そうに首を傾げる。その背後へ回り込み、そのまま後ろから抱き込むようにして腕を回した。

「も、本木・・・」
「こうしたら、自分でするのと同じだろ」

肩口から覗きこみながら、そのままの体勢でタイを結ぶと今度はスイスイとつまることなく手が動く。最後に小さい方を引っ張って結び目を閉めれば──

「出来た!」

再び由弥の正面へ移動して、位置と形を整える。
うん、完璧だ! そう思って改めて由弥の顔を見ると、何故か真っ赤な顔で俯いている。

「・・・由弥、もしかして体調悪い?」
「ううん、そんなんじゃないよ。ちょっと動揺しただけ」
「なら、いいけど・・・。何かあったらすぐ言えよ」
「うん、ありがとう。これ、凄く綺麗に出来てるよ」

綺麗に微笑みながら告げられた賞賛の言葉に、よっしゃーと滅茶苦茶テンションが上がる。反射的にぎゅっと抱きしめた後、そういえば、とふと坂口達の存在を思い出し、どうだ、とばかりに振り返る。

坂口と牧山は揃って気まずげな表情で、黙ってそこに立っていた。

「・・・・・・」
「・・・・・・聖睦」

ややあって、坂口がポツリと牧山の名前を呼ぶ。そーっと自らのタイを外すのを見やって、牧山は心底嫌そうな表情で冷たく言い放った。

「やんねーよ」

聖睦ー、と坂口の懇願するような声が暫く続く。
そんな彼らを尻目に、本木と由弥は二人で笑い合った。