三毛田
2024-09-15 20:59:41
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51 01. 優しい眼差し

51日目 気づけば彼に向けていた

「丹恒、穹と出会ってから表情柔らかくなったよね」
 口に咥えていたキャンディーを出してから、三月は俺にそんなことを告げる。
 コンソールをいじっていた手を止めて、彼女へ視線を向け。
「三月、舐めている途中で口から出すな」
「棒付きキャンディーなんだから、いいじゃん」
 むすっと唇を尖らせて俺を見上げて。
「それとも、色々吹っ切れたから?」
「何の話だ」
「さっきも言ったけど、表情の話。自分のことをたくさん語らないことは変わってないけど、表情は出会った頃より柔らかくなったよね。特に、目元」
 とんとんと、指先が目元を叩く。
 それにつられて自分の目元に触れるが、自分ではわからない。
「特に、穹が何かやってる時の眼差しが」
「そんなに違うか」
「違うよー! 馬鹿なことをした時は相変わらず、〝何やってるんだこいつは〟って語ってるけど」
「それは、お前も同じような目をあいつに向けているだろう」
「ウチにも理解できないことをしてる穹が悪い」
「それもそうだな」
 俺が頷くと、彼女はポケットを探り何かを取り出すと俺の手に握らせて。
「キャンディーか」
 しかも、二つある。
「穹が帰ってきたら、渡して。丹恒が舐めてもいいからね」
 じゃ、ウチは自分の部屋に戻るから! と、出ていく。
「眼差しが柔らかくなった、か」
 やはり、自覚がない。
「ただいま~! 丹恒、チューしていい?」
「おかえり、穹。手洗いうがいはしてきたのか」
「もちのろん! あ、キャンディーだ。どうしたの?」
「三月に貰った。お前に渡してくれと言われたから、お前が先に選べ」
 俺の手にあるキャンディーを目ざとく見つけ、物欲しそうな視線を向けてきたので差し出す。
「いいの? じゃあ、このスイカみたいなのもらう」
 小粒の緑のキャンディーを取り、包装を開けて口へと入れる。
「本当にスイカだった」
 驚いたように目を見開いた後、嬉しそうに笑みを浮かべて。
 その姿が微笑ましく、見つめていると穹も俺を見ていた。
「どうした」
「丹恒の目が優しいから、嬉しくなっちゃった」
「そんなにわかりやすいか」
「俺の前だと、わかりやすい。キスしていい?」
「脈絡がない。それと、今キスしたら甘いだろう」
「いいから、いいから」
 するっと頬を撫でられ、顔が近づいてくる。
 断わっているのに、こういう時の穹は我が強いというかなんというか。人の話を全く聞かない。
 もっと強く拒めばいいのに、そうしないのは俺もなんだかんだで彼からの口づけを待っているからなのだろう。