消える夢を見た

吾揺

「ゆりあ」

「どーしたの、わーくん」

いや、なんでもない」

「わーくん、ありがとね!」

「っなにが」


ゆりあの声が良く聞こえない。
靄がかかって、音がくぐもって、安定しない。

夢の中で、ゆりあが「ありがとう」
そう言っては、霞のように消える。

なにが

どうして

ありがとう

なんだよ。

呼吸が荒くなり酸素不足で視界が霞んで暗くなる。

何度も

何度も何度も何度も何度も

繰り返す。

やめろ。

居なくなるな、お前まで。

神と言う存在が居て、吾輩と言う人間から近しい人間を取り上げる。

1度だけでは足らないと言うのか。

「わーくん」

また、聞こえる

ゆりあの声で、嘲笑って居るんだろう?

心臓の辺りがずっしりと重くなっていくのを感じる。

「わーくん!」

やめろよ

「わーくん?」

その声で

その姿で

そんな呼び方をしていいのは



ゆりあ本人だけだろ!



動かなかった腕が、ぐっと重力を感じながらも暗闇へと伸ばされる。

ふと、誰かの手が触れ

目が覚める。



「わーくん!」

目の前いっぱいに、ゆりあの顔がありハッキリと手が握られている。

夢じゃない。

ゆりあ?」

「わーくんのばか!しんぱいさせんな!ずっと呼んでたのに!目ぇ覚まさないんだもん!!」

ゆりあの涙雨が顔に降りかかる。

……わるい」

「ばかばかばかわーくん、起きなかったらどうしたらうぅ

「あんま泣きすぎるな、頭痛くなるぞ

「泣かせてるのはどっちだよ!てか、わーくんも泣いてたし!!」

泣いていた?

吾輩が?

目元に触れると、確かに涙が乾いたであろう感覚があった。

「というか重い

「女の子に重いって言うなぁ!今日はずっと抱き着いてやるぅ!!」

わんわんと泣きじゃくるゆりあを、どうも止められそうにない。

「わかったわかったから、ほら」

「なにぐすっ」

「布団入れ、そしたらずっと抱き着いて居られるだろ?」

!うん!」

その前に水飲むから、リビング行かせてくれ

「ううぅ、着いてくもん!」

「お好きにどーぞ……


勝手に離れるなよ」

「え?なんか言った?」

「なんでもない!あー喉乾いた

「トイレにも着いて行くからね!」

……トイレは流石にまずいだろ