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いを
2024-09-13 21:22:36
945文字
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刀神
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あどけなくあらましき報復
青嵐
愛した人はいる?恋をしたことは?
そう訊ねてきた。興味本位で訊ねてきたのかもしれないし、違うかもしれない。どちらでもよくて、私は「特に」と答えた。
「恋愛をしたことはありません」
その人は「どうして」、と言った。
どうしてとは、と思わず口をついたが、目の前の顔は不思議そうなだけで、他意などなさそうだった。
目の前の割り箸をパキリと割って、ふたたび机に置いた。
「こういうことです。ひとつの人類がふたつになったとして、元には戻らない」
人間という存在はたくさんいる。だから同じにはもうならない。なれない。
「でもね」
ふたつに割れた割り箸をとって、おくらともずくを掬った。そして、前にいる人間に笑いかける。
「その存在と存在を
――
言い換えるなら私とその人の皮を剥ぎ取ってもいいと思える人とは出会いたいですね」
皮を剥けばみんな同じだ。
では、刀神は。
うすい皮膚一枚めくったらどうなるのだろう。人間の形、動物の形、異形の形。さまざまな刀神がいる。
怖いことを言うんですね。
その人は言った。
「痛みは、伴うものでしょう。何事にも」
ふっ、と吐息だけで笑う。
「痛んだその分だけ深くなるとは言えませんが」
おくらと、箸の先でとろけそうになっているもずくを口の中に入れる。
酢のすがすがしいにおいと、おくらのすこし筋張った繊維を感じた。
「難しいですね。人間のありかたというものは」
正しいありかた
――
とは、なんなのだろう。そもそも存在するのか。
答えはそれこそ人間の数だけあるだろう。
同じでありたいと言わないんですね。
その人は問いかけてくる。
「同じ
……
。そうですね。同じであれたら傷つくことも恨むこともないでしょう」
白い小鉢を見下ろしてから目を細めた。
「細胞が分かれたときより、人間と人間は同じにはなれない、頭では分かってはいるのですが」
同じになりたい?
「
……
同じに、」
細い息をつく。
「いえ」
私はおなじにはなりたくない。
皮を剥ぎ取っておなじ凹凸になったとしても、分かれたものはやはり、おなじにはならない。
「違う存在だから触れられる。あなたが仰りたいのはそういうことでしょう」
その人はいたずらっ子のように笑った。
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