けがわ。
2024-09-13 09:13:16
1245文字
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来年も、その先も、ずっと……

シャチコン

夏祭りデート失敗?なシャチョコンのお話。
未来の約束ができるって幸せなことです!!

 カラ……コロ……と一人分の下駄の音が静まり返った住宅街に心地良く響く。大切なものを落とさないように、歩幅を落として、しっかりと地面を踏み締めて歩みを進める。後ろから首の周りをギュッと抱き締められて、長い髪の毛をまとめ上げて晒された頸には微かな吐息が当たる。布を隔てて背中に密着している胸からは、トクトクと一定のリズムで心音を感じて、僕のものも同調するように早鐘を打っていて、伝わってるんじゃないかって思う。すると、背後から弱々しい声音が吐息と共に鼓膜を揺らした。
「ユキさん、ごめんなさい。重いですよね? オレ、もう自分で歩けますから……
「ダメだよ。モモくん、痛くても我慢しちゃうでしょ? さっきだって、僕が気付かなかったらずっと笑顔つくって誤魔化してたじゃない」
「ぅ、……ごめんなさい」
「別に責めてないよ。モモくんのそういう所も含めて好きになったんだから」
「ユキさん……
「っ、ほら、着いたよ」
「ありがとうございます」
 モモくんのアパートの前で降ろして、手を繋いで支えながらゆっくりと階段を登る。
 本当ならタクシー拾って僕の家に行ければ良いんだけど、どこも交通規制でそれは難しそうだったから、お祭り会場から比較的近かったモモくんの家まで僕がおぶって来た。
 モモくんは小さな巾着から家の鍵を取り出して開錠に成功すると、遠慮がちに家に入るように促してくれる。
「ど、どうぞ。相変わらず散らかってて、お恥ずかしいですが……
「そんな事ないよ。モモくんの家落ち着くし、僕は好きだな」
「っ、ぁ、ありがとうございます……
 二人して家に入って、モモくんのお気に入りの人をダメにするソファに寄り掛からせると、靴擦れした箇所をみる。下駄の鼻緒が当たっていた箇所が赤くなっていて、少し血が滲んでいる。
 モモくんに救急箱の場所を聞いて持ってくると箱の中を確認した。消毒液に絆創膏、包帯など一通り必要そうな物は揃っている。
「よかった、これなら手当できそうだね」
「サッカーやってたので、しょっちゅう怪我してて、それで……
「そっか……
 労わるように足を優しく撫でて、ふくらはぎから指を滑らせて足首に触れる。
「っ、ぁ……
 微かに声を漏らしたモモくんにいけない感情が芽生えそうになるのを必死に抑えて、消毒液でガーゼを濡らして傷口に当てる。
「っ、」
「ごめん、しみる?」
「大丈夫ですよ、オレ怪我とか慣れてるんで」
「はぁそうじゃなくて、好きな子には優しくしたいじゃない」
……っ、」
 あからさまに”好きな子”という言葉に反応して顔を赤くする。かわいいな、なんて思っていると遠くからドーン……! と重低音が響き始めた。
「あ、花火、始まっちゃった。……ユキさんと見たかったな」
「また一緒に行こう? 来年も、再来年も、その先も、ずっと……
「ユキさん、……はいっ!」
 花火よりも綺麗で、可愛らしい満開の笑顔を咲かせる恋人と未来を約束する口付けを交わした。