ld_zab
2024-09-12 10:10:05
1903文字
Public
 

船上ガイドVSロイヤル・フォーチュン(供養)

何でも許せる人向け、ぶつ切り
バーソロミュー出て来ない
なんか本物月ドバイに最終的に着地して皆でニコニコしてる世界
そんなものはなくなりそうなので今のうちに
全部捏造です。

ロイヤル・フォーチュンが喋ります。人型があるようなないような。

供養です。そのうち書くかも

 月に浮かぶ作り物の海。
 戦いのあと、バーソロミュー・ロバーツは満を持して自らの船を海に顕現させた。彼の旗艦、ロイヤル・フォーチュンは月という環境故に現れることができなかったが、BBの計らいで退去前の僅かな時間だけ接岸可能となったのだ。
 敵船も目標もない海に出る必要など本来はないのだが、今回の経験が船乗りとしての側面を刺激されたのか、バーソロミューは彼女を展開する。それから角度を変えるように移動しつつ眺めると満足したように頷き、そのままマスターの元に戻っていった。
……まあ、いい海風に当たれば。ええ、それはもう……とりあえず帆を張りたくなる生き物ですからね、海賊わたしたちは」
 ——でもアンカーを下ろして放置だなんて。それは酷い仕打ちです。そう内心悪態をつきながら船は海を眺める。一隻の船が近づいてくるのに気がついた。
 立場を伝える信号フラッグは無い。ただ、この海にはもう敵性存在がいないことはバーソロミューを通して知っている。船はやたらと丁寧にロイヤル・フォーチュン号に並ぶとスマートに停船してみせた。
……どなた?」
 船長譲りの警戒心を、船長からは引き継がなかった物言いで表す。横についた船はそれを気にすることもなく、平坦な音声で回答した。
「はじめまして、Ms.ロイヤル・フォーチュン。私は“船上ガイド”。Mr.ロバーツ所有の砂上船、E-Ⅳ号の搭載AIです」
 ロイヤル・フォーチュンは見抜く。ロバーツの船団の旗艦たる彼女がわからない理由などない。
「所有の逸話はないでしょう。貴方は今、この場所だけの存在です。この場所から去れば、それで終わりです」
「肯定します。同時に私はアナタの“気に食わない”という感情を理解します」
……機械なのに?」
「私も同じだからです」
 さしずめ冷たい視線が交わったというところだろうか。互いに同じ人物を敬愛していれば起こり得る軋轢である。
 続けて船上ガイドは音声を再生した。
「彼は素晴らしい人物です。私は嫉妬という感情を理解しました。アナタは合理的ではないと言いますか?」
「驚いた。……私、貴方が嫌いよ」
 冷たいような、へそを曲げたような声色が響く。ただ、AIたる船上ガイドは怯むことがなかった。
「関係性のバランスが取れていません。これを改善しましょう。私はアナタを知りたい」
 本来AIに好き嫌いという概念はない。船上ガイドも、好みや嫉妬等の概念を獲得しただけで、人間や妖精のように苛烈なまでの情動を保持しているわけではない。
 何より船上ガイドは、そういった敵対心よりもバーソロミュー・ロバーツへの好奇心のほうがずっと優先事項である。
「Mr.ロバーツからアナタの話を聞きました。素晴らしい船だと誇らしげに語っていましたよ」
「ええ。私は彼の自慢の船です。当たり前でしょう」
「青く美しく、広大で恐ろしい海を渡る特別な船。彼がそれを語るとき、大抵の場合目を輝かせていました」

★☆


……バーソロミューを支えていたのは知っています。……ええ。ええ、ありがとう。貴方がいてくれて本当に良かった。彼を陸に留めるなんて、酷い話だもの」
 ロイヤル・フォーチュンは笑っていた。
 ——不甲斐ない私の代わりに、彼を守ってくれたのは、他でもない砂上船だ。彼の側にいながら何もできなかったロイヤル・フォーチュン自分自身を今、こうやって悔いることができるのも船上ガイド彼女のお陰。分かっています。
「一理あります。仕事中に船を動かしている間、彼のストレス値は変動しませんでした」
……それはよほど良いクルーがいたのでしょうね。……貴方のことです、船上ガイドさん。船の上で自由気侭になれるほど、海賊は甘くなくってよ」
 言葉の意味を正確に理解できない船上ガイドは返答に迷ったのか、別の話題に切り替えた。海賊、と聞いて気になっていた話題の優先順位が上がったのかもしれない。
「ラムアタックの頻度は高かったのですか?」
「な……衝角ラム!? それはちょっとお行儀が……いえ、私には砲撃がありますから。ぶつけるよりも横につけた方が強かったものですよ?……なんて。一番の勝利要因は彼の威厳でした」
「威厳?」
「ええ。バーソロミュー・ロバーツの名前を聞くだけで降伏してしまう人もいましたから」
 自信満々に答えるロイヤル・フォーチュン。
「それよりも……貴方そんなに突撃していたのですか?」
「はい、数度。どう数えたらいいか分からないものまで」
「なんてこと、そんな小さな身体で!彼だって船体へのダメージを考えないわけではないでしょうに!」