ナスカ
2024-09-12 00:00:08
13790文字
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天使のはしご〜ゴーストアンドレディ感想〜

2024/09/11に鑑賞したゴーストアンドレディの感想文です。

皆さんグットハーブニング! ナスカです!
本日(2024/09/11)は劇団四季による最新ミュージカル「ゴーストアンドレディ」を観劇して参りました!

初報を聞いたときから、とってもとっても、とーーーーっても観たかった舞台です!!!

「近代看護の母」「クリミアの天使」と名高いフローレンス•ナイチンゲールと、彼女に取り憑いたゴーストのグレイの間に芽生えた、不思議な絆と愛の物語です。原作は「うしおととら」や「からくりサーカス」の藤田和日郎先生が手掛けた「黒博物館ゴーストアンドレディ」。漫画原作の作品なんですね。

私が初報の時に「絶対見たい!!!」と思った理由はただ一つ。それはナイチンゲールが主人公のひとりだから、ということでした。

私がナイチンゲールを知ったのは小学生の時です。当時私は、ヘレン・ケラーの伝記を学校の図書館で借りて穴が空くほど(比喩ですよ!)読んでいました。
ヘレン・ケラーの伝記の中では、ヘレンのお母様が「娘にはナイチンゲールのように心の優しい人になってもらいたい」と言っている描写がありました。
ではそんなナイチンゲールとはどんな人なのか。私は次はナイチンゲールの伝記に没頭しました。
それをきっかけとして小学生の私は、マリー・ローランサンやシュバイツァー、キュリー夫人にクララ・シューマン、イエス・キリストなどなど、様々な偉人の伝記を読むようになりました。そこで得た知識も多いです。

ナイチンゲールは、そのような意味で私の人生において非常に重要な存在。そんな彼女が! 劇団四季のミュージカルになる! これは観ないわけにはいきません!!!

さて、私は「初見の衝撃」でしか得られない感動が大好きなので、歌曲や楽曲の予習をしませんでした。原作の履修ならしてもいいのでは? とも思いましたが、結局未読のまま。公式サイトを見てざっくりとした内容を頭に入れてはいましたが、本当にざっくりです。

その分受ける刺激の強さといったら! 凄まじいことこの上ない!!

いえ、御託を並べていても仕方がないでしょう。感想に移りましょう。


まず席についた時、『やけに照明の数が多い』ことに気づきました。最新ミュージカルですし、何か仕掛けがあるんだろうなと思いました。(これがまさかね……)

開演時刻になり、少しずつ客席の照明が消えていきます。二階の左側、右側と照明が消えて、次は一階の照明が……「いよいよ始まる」と身構えた瞬間。

〉〉〉バダーンッ!!!!〈〈〈

と物凄い音とともに真っ暗になりました。静かにどよめく客席。おい誰だシャンデリア落としたの!!!()

と思っていたら、上手からランプを運んでくる人の姿が。たぶんアンサンブルの方だとは思いますが……。運んできた人の姿が消えて少ししてから、なんとランプはバチバチと消え千切れ、残った燃えカスが青い光となってスルスルと緞帳の前を飛び回ります。出た!四季の謎技術!
青い光が辿り着いた先に、全身灰色の男が立っていました。彼こそがグレイ。芝居好きのゴーストです。
グレイは我々観客の存在に驚き、「お前ら、オレが見えてんのか!?」と問いかけてきました。ゴーストだから人間には見えないもんね。そりゃ驚くわ。
客席が拍手で応えると、グレイは「誰もが知るあの人の、誰も知らない秘密の物語」を観るように語って緞帳が上がります。

なるほど、「芝居好きのゴーストが、たまたま居合わせた人間相手に『あの人の秘密』を物語る」。という体裁で進むのが、この舞台なんだと私は思いました。非常にミュージカルと相性の良い設定です。

緞帳が上がった向こうは、グレイが長年居着いている劇場でした。どうやら彼は「シアターゴースト」として、この劇場の有名人だそう。他にもいたよね、劇場内の有名人……(パリの方を見ながら)

さて、観客が帰ってしまったその劇場に、一人だけ残っている女性がいました。彼女はゴーストであるグレイに話しかけます。当然グレイは驚きました。そりゃそうだ、だってゴーストは人間には以下略。

そしてなんと彼女はグレイに対し、「私を殺してほしい」と頼むのです。えっ!?!?いきなり!?!?初対面の人に!???
彼女が人伝に聞いた話では、グレイは生前人を殺していたとか……。グレイは「自分は決闘代理人であって殺し屋じゃない」と釘を刺します。
とか何とか書いていますが、グレイは結構飄々としていてお茶目な雰囲気です。そんなに重くはありません。対する彼女は敬語をしっかり使うし、所作も美しい。
そう、彼女こそがフローレンス•ナイチンゲールこと「フロー」でした。

フローはあることを理由に死を願っていました。それは『家族がフローの仕事を蔑み、仕事が出来ないよう結婚させようとしている』こと。どうやらフローは16歳の時に神から啓示を受け(グレイは『ヤツは若い女にしか声をかけない、ジャンヌ・ダルクとか!』とツッコミ)、それを境にゴーストが見えるようになりました。また、一家で施しをしていた貧しい家の坊やが亡くなり、その姉から「今更祈っても弟は帰ってこない!帰れ!」と罵られたという経験も……。やがてフローは、自分のやるべきことが『看護の道』であることを確信します。

けれど19世紀当時の『看護師(時代的には看護婦と呼称)』や『病院』のイメージは酷いもので、「病院は貧乏人がいくところ(金持ちは医者を雇う)」「看護婦は患者と寝るアバズレ」などなどの印象が一般的な認識だったとか……
フローは良家の令嬢。家族は自分たちの考えは勿論、世間体のこともあってフローに看護婦をしてもらうわけにはいかなかったのです。
けれどフローは諦めず、何やかんやで看護婦になり、ロンドンの病院で(聞き間違えでなければ)婦長を経験し、戦時大臣のお墨付きまでもらっています。そしてフローは更に、劣悪な環境だというクリミアにあらスクタリ野戦病院へ向かい従軍看護婦として働きたいと思っているのです。

グレイはフローが「私を殺して」「私の家族を見て」とあまりにも食い下がるので「ひとまず家まで行ってやる」とついて行ってしまいます。

それではここで改めて主人公二人をご紹介。

グレイ。芝居好きのゴーストで、元決闘代理人。捉え方によっては、ストーリーテラーでもあるかもしれません。
どうやら過去に手酷い裏切りを受け、そのために死んでしまったとか……。しかし通常の彼からはそんな暗い過去を感じさせません。劇場に居着いている彼はあらゆる舞台の台詞を引用し、その場を茶化したりする可愛らしい一面も。

フロー。良家のご令嬢なだけあって言葉遣いも所作も丁寧。周りよりも声の音圧が低いかな……?と思っていたら、最後とんでもないことになりました。
やや頑固なように感じるけれど、強く優しく真っ直ぐで気高さがあります。クリミアへ向かう看護婦団のまとめ役であり、看護婦たちからは「団長」と呼ばれて親しまれています。


……歌曲とか舞台の仕掛けの話もしたいのに、ストーリーとキャラしか追ってないな!? 頑張ってそっちの話もしよう。

まずはフローが馬車で実家まで向かう場面。
グレイは自分と他の幽霊や化け物たちを比べ「俺は違う」というそのまんまな歌曲を歌います。ハムレットの死んだ親父は「仇を取れ!」と語るだけ、ヴァンパイアは陰気で血を吸わないと生きていけない。けれど俺は違う、と。ちなみにグレイは空気中にある霊気を吸って生きてる(?)らしい。
ここで出ている大道具はフローたちを乗せている馬車だけ。その背面から出たり入ったりするグレイに、後ろ側から続々と現れるアンサンブルの皆さん!どこに隠れていたの!?すごい!やっぱり四季の舞台の仕掛けはどうなっているのかわからない!

舞台は移り、フローの実家ナイチンゲール家。そこではフローの両親と姉、そして婚約者であるアレックスが待っていました。帰ってきたフローは「俺は違う」の場面でもグレイが披露した壁抜けに驚きます。私も驚きました。というのも、完全に『明るい室内』を通り抜けているようにしか見えなかったからです。ただこれは、照明効果のほんの小手調べに過ぎませんでした。

フローはアレックスの求婚を断り、家族全員から責められます。「我儘」だの「いつも自分の意見を押し通す」だの「傲慢」だの……家族全員言いたい放題です。すると家族三人の影が大きくなり、恐ろしい化け物のようになって家の壁に投影されました。
「傲慢なのはお前らだ!」とグレイが叫びレイピアを引き抜くと、その剣先を両親、そして姉に突きつけました。
途端に、その化け物のような影は引き裂かれ、やがて消えていきました。
「すごい!!こんな演出見たことがない!!!」
見ていない四季の舞台はまだまだありますが、この演出の目新しさは素晴らしかったです。本当に凄いライティングでした……
私はてっきりフローの家族に取り憑いていた化け物を退治したのかと思いましたが、グレイ曰く「魂を麻痺させただけ」だそうな……。家族はフローの目標に対し無関心になり、グレイは「これで殺す必要はなくなった」と帰ろうとします。
ところがフローはグレイを呼び止め、「もし役に立てなかったら、期待に応えられなかったら」と吐露します。高い志を持ったフローに対しグレイは「こういう子が絶望したら最高の悲劇じゃん!やば!俺がこの悲劇を作るんだ!」と大盛りあがり。シェイクスピア曰く「この世は舞台、人間は役者」だとか。グレイはフローが夢を追いかけ、その先で絶望した瞬間に殺してやると約束しました。対してフローは「死ぬ気になればなんでも出来そう!」と意気込むのでした。「絶望のどん底で」というタイトルでありながらも、何故か希望に溢れているように感じましたね。
けれどグレイは独り言ちます。「ゴーストが人間を殺すと、そのゴーストは塵となって消える」と……

さて、そもそもフローがクリミアへ向かうことになった理由は何故でしょう。きっかけはイギリスタイム誌の新聞記者ラッセルが書いた新聞記事による報道でした。スクタリ野戦病院が非常に劣悪な環境であるということを報じられたことで、国民は戦時大臣や女王に対して「何とかしてやってくれ!」と声を上げたのです。そこで戦時大臣は、優秀な看護婦であったフローに看護婦団のまとめ役をお願いしたというわけで。
フローは看護婦たちを率いて歌う「走る雲を追いかけて」は非常に印象的で、看護婦団の団結の強さや意志の硬さ、患者たちを救いたいという決心を感じました。女声だけで高らかに歌われるというのも、19世紀を舞台にした劇というだけあってより伸びやかな印象を受けました。

ここで登場人物を二人追加でご紹介。

まずは新聞記者のラッセル。体格はオペラ座のピアンジや美女と野獣のル・フウを思わせるコミカルタイプです。しかし彼が「親愛なる読者の皆様!」とフローの活躍を真摯に書き語ることで、野戦病院の状況やイギリス国内、やがては世界を変えることになるのです。フローを英雄に仕立て上げたのも彼……と言うと何だか怪しい言い方になってしまいますが、ラッセルの悪な側面は全く描かれず、素晴らしいジャーナリストとして活躍しました。

もう一人はエイミーちゃん。フローを看護の道へ導いた「レディ•エリザベス」の姪です。フローに憧れ、自ら従軍看護婦に志願しました。前世様の背中を見て騎士に憧れたオービルみたいな感じの子ですね(一部にしか伝わらない喩え)
志願したのはいいものの、最初は上手く包帯が巻けずに患者さんの前で泣いてしまったり、フローのようになれないことに悩んだり、色々な出来事を経て成長していきます。

当時はまだ飛行機などありませんから、イギリスからクリミアへ向かうためには船旅になります。その波止場の表現の仕方が凄かった!
波止場は当然移動式のセットなのですが、どうやって海を表現するかと思ったら、なんとスモークに青の照明が当てられているのです!イギリスの冷たい冬の海の様子が伝わってきました!
一度ドーバー海峡を渡りフランスへ上陸。その後さらに地中海を東へ向かいつつ北へ……。というのが、舞台上に掲げられた地図に、赤い点線で描写されているのです!わかりやすーい!!

フローたち看護婦団は無事クリミアへ到着!……したものの、陸軍の連中は「女なんかいらねぇ!」の一点張り。女は感情で行動し、秩序第一の軍には必要ないと。前に兵士たちの妻を看護婦として受け入れたところ風紀が乱れたとか……
ここでのシーン、キビキビしている陸軍たちとワサワサしている看護婦団の対比がまさに「感情的」「秩序」を表している感じがしてよかったです。感情的と言うと何だか悪い事のように聞こえますが、その強い感情が危機を救うことにもありますからね。

陸軍に拒否られたフローを前に「おっ?諦めるか?絶望したか?おっ???」とグレイは迫ります。シェイクスピアの言葉を引用するグレイを見て、フローは何かを思いついたようです。そのタイミングでマルセイユで購入した食糧が届きました。フローは「食べ物を無駄にすることはできないので!この食べ物を負傷兵の皆さんに食べてもらって、こっちが助けてもらいたいです!」と必死で『演じ』ました。
フローや看護婦たちのゴリ押しに陸軍は「勝手にしろ!」と言い放ち、かくしてフローたちはスクタリ野戦病院で仕事を始めたのでした。

舞台は切り替わり、兵士たちが厳格な様子で行進……してたかと思ったら、恐ろしい銃声と共にどんどんボロボロになっていきます。気がつけばそこは野戦病院の中。不潔で、室内に転がるだけの者たちもいます。食事は生煮えの肉ばかりだというのだから本当に恐ろしいです。
そこへフローら看護婦たちが鍋いっぱいの粥を作って現れました。傷病兵たちは温かい食事に喜び、看護婦たちは病院内の清掃から始めました。

やばい、これ以上ストーリーに則って話していたら一万文字じゃ収まらないわこれ。

ここからフローは順調に病院の状況を改善。けれどそれを陸軍医長官のジョン・ホールが妬みます。こいつは悪役と呼ぶべきですね。志願者たちがたくさんいるからと兵士たちを使い捨ての道具のように扱うとんでもない奴です。兵士たちを一人の人間として扱うフローとは大違い。けれどその背後には何やら怪しい影が……???

そんな反対勢力の煽りを受けるのはやはり傷病兵。担ぎ込まれてきた17歳の兵士ボブは、一度あの世に行きかけます。下手の方からボブに射し込む照明はまるで『天使のはしご』のように美しく清らかで温かな雰囲気です。
けれどフローにはゴーストが、要は人間の魂が見えます。フローはボブの魂に語りかけ歌いかけます。「貴方の物語には幸せな終わり(ハッピーエンディング)が待っている。ここで死んではいけませんよ」と……
無論それは看病の比喩だったのでしょうけど、それがボブの魂を身体に引き戻しました。いや〜まさかここの照明があんな形で登場するとはな……うっ……(思い出し泣き)

臨死体験から戻ってきたボブはこれ以降ゴーストのことを視認できるようになり、ストーリーにもしっかり絡んできます。フローを慕うボブ、めちゃ可愛いです。

一方グレイは全く絶望する様子の無いフローに付いてきたことを「最悪だ!」とまで言っちゃいます。まあそうだよなぁ、なかなか自分好みの悲劇が出来上がらないんだもんなぁ。
フローは不眠不休で働き、イギリス国内の要人たちに手紙を書きまくっていました。グレイはそんなフローの元へ『倉庫からくすねてきたオイルランプ』を持ってやって来ました。
ここ!!!ここですよ!!!!フローレンス•ナイチンゲールの象徴と呼べる『ランプ』を、彼女に渡したのはグレイっていうのが激アツ!!!!!フローレンス•ナイチンゲールのイメージがグレイの行動に由来するもの、という設定なのが堪らなくキュンとしちゃいます!!だってキャッチコピーが『この愛は、絶望を知らない』なんだもん……。この二人に愛が芽生えるのは約束されているんですよ。

文字を書けるフローをグレイは羨ましがります。ここでグレイの育ちが良くないことが察せられました。グレイは舞台を書きたいという夢を語り、フローは「口述筆記すればできるわ! クリミアから帰ったらそれやりましょうよ!」と提案。
まさかそれこそ、この『ゴーストアンドレディ』なのだろうか……?? 思えばグレイが最初の場面で存在しているし、「フローを殺さなかったからグレイは消滅してない」という予想を立てました。史実でフローは90年近く生きますが、それはゴーストのグレイという守護霊を得たからなのでは……??

患者たちを見回ると、フローは一旦グレイと離れました。けれど病院の闇夜に紛れ、ジョン・ホールの刺客と思われるならず者が……。フローを殺しにきたのでしょうが「味見をしてから」などと言ってます!おい待てふざけんなてめぇらフローに何しようとしてんだゴラァアアアアアア!!!!
そこへ駆けつけたのはエイミーと、国内で結成された衛生委員会の一員であるアレックスでした。建築の専門家としてクリミアにやって来たというのです。
ならず者は警備兵に足を撃たれながらも逃走。フローはエイミーに対し、「私たちは看護婦なんだから、彼らが運ばれてきたら治してあげて」と告げました。ちょぉおおおおおフロー天使すぎ……あんな奴ら許さんくていいよと思うけど、そこがフローなんだよなぁ……うぇえええん

アレックスは「フロー、頑張っているのは凄い。けどもうこんなところで働くのはやめてほしい」と声をかけます。そんなアレックスの存在が、グレイにとっては面白くありません。それでもフローの決意は固く……「今自分に必要なのは前に進む勇気をくれる人」だと歌います。
それが「不思議な絆」という、第一幕最後の曲です。一対の階段のセットにグレイとフローが見つめ合ったり、隣り合って昇り降りをしながら共に歌うのです。星空に包まれたような美しい照明効果。殺されること、悲劇を作ることを目的に近づいたお互いに生まれた「不思議な絆」に相応しいですね。舞台上の雰囲気としては、美女と野獣第一幕のラストを思い出しました。

再度見回りに向かうフロー。怪しい気配を探りに行くグレイ。同じ建物内で別れた二人。そんなフローの元へ舞い降りたのは……女騎士のゴースト……!!!

というところで第一幕は終了しました。この時点でめちゃお腹いっぱい!曲もダンスも演技もストーリーもミチミチたっぷり!!これからどんな展開が待っているのかとワクワクしました。


第二幕の始まりはボブがグレイに拳銃を向けるところからスタート。ゴーストが見えるようになったボブは「なんなんだお前! あの方につきまとって何考えてるんだ!!」とガチギレ。けれどグレイは「銃弾なんか突き抜けちまうぜ」「それより俺行くところあるから」とサラリとかわしていきます。この絡みがまた次に活きてくるんですよね……ふふふ。

一方フローは例の女騎士のゴーストに絡まれていました。ここで女騎士のゴーストをご紹介。
彼女の名前は「デオン・ド・ボーモン」ジョン・ホールに取り憑いたゴーストで……ってあれっ?どこかで聞いたことあるような……
あーっ!!!「女装した権力者」を調べていた時に出てきた人!!!!でもおかしいぞ?この人男じゃなかったの??だから女装した権力者で調べたら出てきたのに……。けど一人称は「ボク」だし、でもおっぱいあるし……

なんと、この作品のデオンは「女として生まれたけど父親の命令で男として生きていた」という設定だそうで!しかもフランス人だし、オスカル様か??!
と思ったものの、オスカル様との違いは「完全に男と偽って生きてきた」「女であることに劣等感を抱いている」ということでした。けれど最終的に女性だとバレて殺された、という経歴持ち。
うーーーーーーんこれは性癖が……性癖が歪みそうなキャラ付けだ……。私はもうとっくに性癖が歪んでいるので今更ですが、デオンでそういうキャラに初めて出会った人はかなり性癖を歪まされそうですね。へへへ。「天使」と呼ばれるフローを殺すという名誉を手にして消滅したい、というのがデオンの目標です。

性癖歪むとかぶっ壊れるとか言いましたが、デオンとフローは対照的なキャラですよね。フローは女性であることを全面に押し出しているのに人々から讃えられています。女性でいることを否定したデオンから見れば、それはそれは屈辱的だったのでしょう。
デオンの生きた時代は相対的に見てフローの生きた時代よりも女性への捉え方が古かったはず。仕方ないことではありますね……

デオンに殺されそうになったフローの元へグレイが駆けつけます。ここね、四季の舞台でこんな殺陣が見られると思わなかったほどカッコよかったです!!決闘代理人である二人の戦い、見ていてハラハラしますしワクワクしました。
デオンは一時退却。それを目撃したボブはグレイを一応信用し、グレイは「フローを殺すのは俺なんだからそれまでフローを守る」と決めたようでした。
でも私は知ってるぞ〜〜〜〜〜そうしている内に本当にフローを守りたくなっちゃうんだろ〜〜〜〜〜〜フフフ〜〜〜〜〜〜。

騒動が二つ続き、フローは今度こそ患者たちの見回りへ。熱心な看護をしていても、どうしても死者は出てしまうのが本当に辛いところ……。それでもフローは死にゆく傷病兵を目元をオイルランプで照らしながら、その手を握って、「眠るまで」側にいてくれる……。本当に、天使ですね……(語彙力)
この傷病兵も、かつてボブが消えていきそうになった天使のはしごの向こうへと導かれていきました。

めちゃ頑張ってるフローたちなのに、一度下がった傷病兵の死亡率が再び上昇。ついには看護婦の中からも患者が出てしまいました。おまけにエイミーがアレックスと良い感じになって(ちょっと前に舞台端でエイミーがアレックスに花を贈る場面があった)、イギリスに帰ることになってしまいます。
アレックスからは「本国から『死亡数が上がったのは大量に傷病兵を受け入れたからだ』と言われた。僕ではもう君を守れない」と言われてしまい、フローの絶望感は極まっていきます。
いやいやいや母数増やせばそりゃ死亡人数は増えるだろうよ!?!?当たり前では!?!?

自分一人で戦っているようでしんどくなるフローは「絶望した」と語り、グレイに殺してもらおうと思います。けれどグレイは「お前は本当の絶望を知らない」と、頑なに口にしなかった自身の過去を語り始めました。それは途中まで大きなシーツに影絵を駆使したもので、芝居好きのグレイにはぴったりな演出です。

グレイが居着いていた劇場は、彼が赤ん坊の時に捨てられた場所でした。孤児院で育つも扱いが酷く、とある地主に雇われその息子の剣術の相手になります。そこで剣の才能を開花させ、グレイは地主の養子に迎えられるかも……というところでした。ところが遊んでばかりの息子はグレイを逆恨み。グレイは慌てて地主の家を飛び出し……ここでシーツをぶち破って若き日のグレイが登場。えっ、若い頃のグレイカッコいい!いやゴーストの姿もかっこいいけどね!
生まれた劇場に逃げ帰ったグレイは舞台女優に一目惚れ。舞台に通い詰めるため、選んだ仕事が決闘代理人だったのです。

ここでグレイ(ゴースト)はグレイ(生前)から青いコートを受け取りました。まるで役者交代って感じです。
グレイは贔屓の舞台女優を助けたのをきっかけにイイ感じになり、酒場で歌って踊る場面が入ります。酒場での場面って、陽気でダイナミックで、見ていて楽しいですよね。
グレイは本格的に舞台女優に恋をして、『レディにはお目汚し!』なことまでしちゃいます!キャーッエッチーッ!!!ついには結婚の約束までしました。
けれど舞台女優はとある貴族の愛人で、グレイと結婚する気など更々無かったのです。それを伝えに来たのが、その貴族に仕えていた生前のデオンだったというわけで!!!!
グレイは失恋と裏切りのショックで、凄腕剣士の本気を出せずデオンに殺されてしまいました。うわーーーーーそりゃ女のことを信用できんわけだ!!!!

フローは一人ぼっちで死んでしまったというグレイに「側にいてあげたかった」と告げて……。もうお前らとっととくっつけよーーーーっ!!!!もだもださせんなよーーーーっ!!!!!

やっべ、一万文字越えた……でもまだ続くんです……

距離がグッと縮んだ二人の元に、ホールの命令を受けたデオンが再び現れてフローを殺しに来ます。ここのデオンが凄くてね、舞台上の二階にいたはずなのに消えた途端舞台上にある本棚のセットからニュルッと出てきた!これこれ!オペラ座のファントムもこんなことやってたよね!!相変わらずこの四季の謎技術すげー!!

グレイvsデオン再び!けれどグレイを庇ったフローはデオンの遠距離攻撃を受けて……倒れちゃった……
グレイはボブを呼び、ボブは他の人達を呼び、フローは二週間意識不明に……。フロー、きっと不眠不休で働いてたこともあって疲れてたんだよ……そこにデオンの攻撃を食らっちゃったから……

グレイは「裏切られるくらいなら孤独のほうがマシだと思ってた。それなのにお前のせいで今こんなんだ!」と眠り続けるフローに愚痴り……それってフローの事が好きってことよね???そうよね????
「ゴーストから受けた傷はゴーストの霊気を与えれば治るはず」という仮説の基、グレイはフローに霊気を与えました……口移しで!!!!!きゃーーーっ!!!!!愛のキッスよ!!!!!愛のキッス!!!!!!!
無事に目を覚ましたフローから「私にキスしなかった?」と聞かれちゃうグレイ🤭俺はゴーストなんだからそんなことしない!と否定するけど、いやいやバリバリキッスしてたよね????🙃

回復したフローはバリバリ働きました。病院に学校や郵便局まで併設し、兵士たちを心身ともに元気づけていきます。そして戦争も少しずつ終結の兆しが見え始めました。

そんなところにジョン・ホールからフローへ手紙が届きます。話したいことがあるから病院を出てこい、と。けれどみんな警戒して、フローを一人で行かせようとしません。ラッセルも、ボブも、残った看護婦たち、そしてグレイ……。「走る雲を追いかけて」のリプライズで「私たちも参ります」と。フローは孤独なんかじゃない、たくさんの仲間がいる。そのことを改めて実感してジーンとしました。

呼び出された港は吹雪くクソ寒。だってまだ……えっと何月だったっけ(忘れた)
そこに待ち構えていたのはホールの部下たち。彼らは見えないグレイ以外をフローから引き離してしまいました。うーんホールめ!卑劣!!

さて、残されたのはフロー&グレイ、そしてホール&デオン。ゴーストたちはフローの命をかけて戦い、それは地上戦から空中戦にまで!すごい!空中でバトってる!ゴーストってすげぇ!!!

けど地面に残されたフローはホールを相手取らなきゃいけません。ホールは「金持ちのお嬢さんがどうして兵士相手に看護なんてするのか。人のためと言いながら周囲から認められたいだけの偽善者」と言い放ちます。実はこいつ、貧乏な家の生まれでした。
フローは女性で裕福な家の生まれ。兵士たちを一人の人間として扱った。
ホールは男性で貧乏な家の生まれ。兵士たちをただの道具として扱った。

いや〜〜〜〜〜対比が綺麗ですね〜〜〜〜〜

フローはホールから拳銃を向けられても「殺しても構わない。私が死んでも同じ道を歩む人が必ず出てくる」とまるで死を恐れていない様子。
私には、そんなフローの後ろに多くの看護婦看護師が付いているのが見えました。フローがオイルランプで照らした道には、後続がたくさんいる。それは間違いなくフローが世界を変えたということ……

ところが獲物を取られたくないデオンが再度フローを狙い、グレイはそれを何とか阻止します。
ゴーストとしての命を、盾にして……

えーーーーーっ?!?!?!?嘘でしょーーーー?!?!!?だって、だってグレイは。。。生きて。。。いや死んでるけど。。。
フローが死んだあと私たちにこの物語を見せてくれてるって……こと、じゃ、ないの?????

もう大混乱大混乱。予想を大きく裏切られました。

グレイが死んだのはデオンがフローを狙ったから。デオンがフローを狙ったのはホールの命令だから。フローはホールの拳銃を握り、「貴方だけは許さない」とホールを殺そうとします。
これまでどんな人でも患者なら治さねばとしてきたフローが、多くの患者を看取ってきたフローが、あろうことか殺人に手を染めようとするんです。けれど殺す理由としては充分過ぎます。大切な人を跡形もなく奪われたことになるんですから。(この時のホールの小物感、すごかったですねぇ……😇)

すると姿なきグレイが「お前は汚れてはいけない」とフローの行為を諌め、フローもすんでのところで殺人から手を引きました。そこへ戻ってきたラッセルらがホールを連行。それでもフローは吹雪荒ぶ波止場から動けずまいでした。

ここの絶望したフローの演技がすごく痛々しくてなりませんでした。最初は死にたくてグレイに近づいて、けれどグレイのお陰で夢を実現できて、グレイの人生を知って看取りたかったと思い、グレイに殺されるどころか助けてもらって、あろうことかグレイは自分を庇っていなくなってしまった。
絶望したら殺してもらうつもりだったのに、グレイを喪って絶望するという。「殺すなら今よ!!」の叫びが、暫く頭から離れませんでした。もうここからずっと涙がダバダバで止まりません。 その上緞帳が降りてくるんです。

「は!?!?これで終わりとか嘘やろ!?!??」と驚く中、時代は一気に進んでフローの晩年。
危篤のフローは90歳。同じように老いたアレックスやエイミー、ボブに囲まれて穏やかな最期を迎えました。そしてフローの魂は老いた肉体を抜け出し……
ここもなんですけど、魂が身体から抜け出して見えるってどうなってるんですかこれ???四季の謎技術もここまで来るともうわけわかりません。

迎えに来たのはなんとグレイ!消えたんじゃなかったの!?とビビリ散らかしていたら、ギリギリ何とかなったんだとか……😂も〜心配させやがって……
それを視認できたのはボブだけでした。ボブはエイミーらから「何を見ているの?」と問われ、かつてフローから語りかけられた「幸せな物語の終わりを」答えるのでした……いや丁寧過ぎる脚本だ……

グレイはフローを「一人で逝かせたくなかった」と同じことを言うので、もう完全にフローに脳が焼かれてますね。ベタ惚れです。良いと思います👍👍👍👍

一緒に行こうというフローの誘いをグレイは断ります。きっとフローが主役の舞台を作りたいんだろうなぁ、と思う傍ら、「ゴーストである以上天国には行けない」ということなんだとも思いました。つまり、これで二人は永遠のお別れ……!?そう思うとまた涙が……😭😭😭😭

グレイに見送られ、フローは天国へと向かいます。かつて何度と無く見送ってきた患者たちが消えていった、天使のはしごの向こう側へ……。フローは本物の天使になったのでしょう。

フローを主役に据えた舞台を書くのに「ヘボ作家たちを使ったら100年以上かかった!」と語るグレイ。これはあれですかね、脚本家自身の自虐ネタでしょうか😂

グレイとフローは離れ離れになりました。ある意味ではバッドエンドかもしれません。
けれど二人はお互いに、相手の中に自分が、自分の中に相手がいることを知っています。それは何よりのハッピーエンドです。そしてグレイはフローのことを、芝居を通して人々に伝えていくはず。これが愛でなくて、一体なんなのでしょうか。

そしてラストで、ランプを掲げたフローが舞台の真ん中に現れる場面。するとなんとそれまで何に使うのかわからなかった照明たちが無数のランプとなって、フローのことを取り囲んだのです。きっとそのランプの一つ一つは、フローの切り開いた道の後続者たち。フローが世に広めた看護の精神を継ぐ人たちなのでしょう。

グレイとフローの愛はずっと続くし、看護婦(看護師)が患者を見守る愛は後続者たちへと引き継がれていく。
『この愛は、絶望を知らない』 まさにその通りの物語でした。


いやーーーーーー完全初見で挑んでよかったです!観終わって暫く呆然としちゃって、感想書くために入ったタリーズで、注文しなきゃなのに脳みその一部が壊れたみたいにボーッとなっちゃいました😇

如何せん、結末を知らない四季の演目は初めてでした。オペラ座は何となく知っていたし、美女と野獣は言わずもがな。ノートルダムはD版も原作も履修済み、ジーザスは『最期の7日間』って明記されてるから結末はわかる。
けれどゴーストアンドレディはストーリーや楽曲についてほとんど何も知らず、『フローレンス・ナイチンゲール』の生涯を小学生向け伝記程度の知識しかない中での鑑賞だったので本当に衝撃的でした。

本当に良い作品だったので、是非観てもらいたいと思います。来年の5月から名古屋へ、来年冬には大阪へ行くそうです。

ゴーストアンドレディ、素晴らしいエンターテイメントでした。本当は書きたいことがまだまだたくさんあるんですけど、これ以上書くと更にとんでもない文字数になるのでこの辺りでやめておきますね😇

それではこれにて!長い感想文にお付き合いありがとうございました!!