山茶花
2024-09-11 20:36:13
8675文字
Public [シルデュ♀]受け女体化学パロ
 

【番外1】ハッピーバレンタイン!【097GP017】

シルデュ♀がバレンタインを過ごす話。

※現代学パロです。男子そのまま・女体化キャラ入り交じっています。
※独自設定が多く含まれます。
※今回はシルデュの他にマレセベ♀、リドエー♀、(あとちょっとジャミカリ♀)要素が含まれます。

大丈夫な方はスクロール↓










 食堂へ行くと、先に集まっていたらしいエースとデュースと、それからセベクが楽しそうに話しているのを、マレウス様が愛おしそうに見つめている。俺もそこへ合流し、みんなの会話に加わることにした。
「ねーやっぱ今年は手作りするー?」
「楽しそうだな。何の話だ?」
「あっ、シルバー先輩! 先輩は、どんなチョコが好きですか?」
「チョコ、か?」
 チョコという言葉に、少し……いやかなり、苦い思い出が蘇る。毎年この時期は、下駄箱も机も大変なことになるし、何枚紙袋を持ってきても、チョコを持ち帰るのに足りなくて……。その上、何が入っているか分からない食品を、警戒もなく食べられるわけでもないし、もしすべてが安全なものであり、食べられたとしても、さすがに飽きてしまうだろうという量を毎年たくさんの人から渡されている。
 お陰で、セベクからは逆にもうチョコレートを渡さない方が親切だろうと、毎年チョコレートの代わりにインスタントコーヒーをもらっていたくらいだ。
……その、甘いものは嫌いというわけではないのだが、特別好きでもなくて……。特に、チョコレートには、あまり良い思い出が無い、ともいえる」
「えっあ、そ、そうですよね……っ。先輩、たくさんチョコもらってそうだし……っ」
「ああ、そうなんだ。バレンタインはいつも大変で…… ……待て、バレンタイン……?」
 明らかにしょげた様子のデュースと、あちゃー、という顔をしているエースと、どうしたものかといった顔で腕を組んでいるセベク。三者三様の女子の反応で、俺はすべてを察する。これはまずい、やらかした。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! お前のは別、特別だから!」
「本当ですか?」
「ああ。その……これはあまり、褒められた話ではないと思うから、口外はしてほしくないのだが……。察しの通り、バレンタインには、その、結構な量のチョコをもらうことが多く……。とてもひとりでは食べきれない量であることと、それから、過去に……その、『恋のおまじない』と称して、受け取ったチョコに、血液……などを代表とした異物が入っていたこともあり、今は、すべて見つからないように廃棄する手筈になっている。とはいえ、セベクやマレウス様の母君など、信頼できる方からの贈答品は受け取っているし、食べている。だからお前のものも受け取れる」
 もし、俺に渡してくれる気があるのならの話だが、と最後に付け足す。すると、デュースは目に見えてぱあっと顔を明るくした。
「それなら渡したい、です! ……えっと、でも……ヘンなものが入ってて嫌だったなら、手作りはやめた方がいい、ですか?」
「いや……大丈夫だ。お前が俺に、おかしなものを渡すとは思ってない。前、調理実習のとき俺に食べさせてくれた蒸しケーキも、とてもおいしかった」
 そう言ってぽんぽんとデュースの頭を撫でてやると、デュースは嬉しそうにえへへと笑った。
「ならデュースも一緒に手作り決定ね!」
 エースが、デュースとセベクの腕に絡みつくようにしながら、そんなことを言う。なるほど、今年は女子だけでバレンタインのチョコレートを作る約束をしているのだな。良かった。セベクは中学の頃からずっと、そういう戯れにも実は憧れていたからな。
「今年のバレンタインは楽しみですね、マレウス様」
「おや。……そうだな、シルバー。この時期は毎年、お前がぐったりしている様ばかり見ていたが、今年は元気な姿が見られそうで安心したぞ」
「それは……ご心配をおかけしました」
 俺とマレウス様は、二人、どんなチョコを作ろうかとはしゃぐ女子たち三人を邪魔しないよう、静かに見守っていた。

 そして、バレンタイン当日。ひとつ大きく息を吐いて、下駄箱を開けた俺は、やはり目の前で起こった菓子の雪崩に軽く頭を抱えた。
「なぜ、なぜだ……? なぜ、去年よりも量が増えているんだ……っ!」
 そんなことを呟きながら大量のチョコレートの前に途方に暮れていると、後ろから登校してきたらしいカリムとジャミルに声をかけられる。
「あっはっは、何度見てもすげえ量だな~! おはよう、シルバー!」
「おはよう、シルバー。今年も大漁だな」
「おはよう、ジャミル、カリム……
 既に憔悴気味の俺を見て、ジャミルは告げる。
「どうしたんだ、そんなに意気消沈して。いつも妙なところでやる気に満ちている君らしくないぞ」
「うっ……。それが、なんだか、去年よりも量が増えた気がして……
「量か。確かに、去年よりもわずかに増えているような気がするな」
 ジャミルが、俺の前にあるチョコレートの山を見て、本人なりに分析してみせる。
「ふむ。これはあくまでも、俺が見るに、の話だが……。今まで全員を、ある種平等に断っていた君に彼女ができたことで、『もしかしたらいけるかも』と思う女子が増えたのかもしれないな。さらに穿った見方をすれば、君の彼女と自分自身を比べて、『あの子がいけるなら私だって』という考えの子が増えたのかもしれない」
「そう、なのか……。普通、彼女ができたらこういったものの量は減るものだと思っていたが……、そう、うまくはいかないみたいだな……
 失意の中、とりあえずの措置として鞄に入れてきた紙袋を取り出し、チョコレートの山をそこに放り込んでいく。手伝うぜ、とカリムが手を出し、それに合わせてジャミルもチョコレートの整理を手伝ってくれた。ああ、とても助かる。本当に良い友人たちだ。
「紙袋、二袋しか持ってきていないのか? もう既にいっぱいだぞ。君、まだ机も残っているのに、これじゃとても足りないだろう」
「うっ、やはり机にもある、だろうか……?」
「あるだろうな、この調子じゃ……。仕方ない、俺の手持ちの分を少し分けてやるよ」
「ありがとう、ジャミル。準備がいいんだな」
 するとジャミルは少し不満げに答えた。俺は褒めたつもりだったのだが、何か悪いことを言っただろうか。
「まあ、カリムは愛想がいいからな。なぜか男である俺よりも多くチョコをもらいがちなんだ。大抵は友チョコか義理なんだろうが。……それで、カリムもまあ受け取るのを断らない。そんなカリムのもらったチョコレートを持ち帰るのに苦労するから、いくつかはこうして持ち帰り用の紙袋を用意してあるというわけだ。……ま、苦労すると言っても、君ほどじゃあないが」
「そうだったのか。分けてもらって大丈夫だったのか?」
「こういうこともあるかと思って、多めに用意してあるから、平気だ」
「分かった、ではありがたくいただこう」
 そうしてジャミルと別れ、カリムと共に2ーAの教室へと向かう。やはり机の上やら引き出しの中やらにあふれるほど置かれたチョコの山に、俺はもう一度溜め息をつく羽目になるのだった。

 それから、休み時間と昼休みの度に女子という女子から呼び出しを食らい、ようやく食堂で昼食の席に着けた頃には、皆もう先に食事を取り終わっていた。
「遅れてすいません、マレウス様! それに、他のみんなも……
「シルバー先輩、お疲れ様~。なんか朝からめちゃくちゃ大変そうだったね」
 俺の謝罪に、真っ先にエースが反応してくれる。彼女はいつも、こうして雰囲気を調整してくれるところがあるな。こういう女子がデュースの友人であってくれるというのは、心強いものだ。それと同時に、俺たちの友人であるということも。
「先輩、ほんとにたくさん呼び出されてたみたいでしたけど……大丈夫でしたか?」
「あ、ああ。大丈夫だ。お前こそ、その……気になってはいないか?」
「私なら大丈夫です。先輩がモテるのは、この一年でよく分かりましたから……。それよりも先輩、本当に疲れてないですか? もし疲れていたら、無理しないで、休んでも大丈夫ですからね?」
……ありがとう、その気遣いがあれば、俺は大丈夫だ。ただ……
「ただ?」
「このあと少しだけ、二人で過ごせる場所に行きたい気分だ」
 うっかりそんな言葉を口にして、思わず自分の口を手で覆う。マレウス様がそんな俺を見て、楽し気にからかうように言った。
「ほう、あのシルバーが自分からそんなことを言うとは。僕は構わないぞ、スペード。シルバーを連れて、休ませてやると良い」
「は、はい! ドラコニア先輩がそう言うなら、分かりました!」
「い、いえ、俺は大丈夫ですから、マレウス様!」
「遠慮するな。毎年この日のお前はひっきりなしの呼び出しを受け、疲れているだろう? そうだ、生徒会室を貸してやろう。あそこなら他の者は寄り付くまい。僕はセベクと、リリアのいる体育教官室にでも遊びに行き、そのまま放課後の打ち合わせでもしていよう」
「だったら、俺たちの方が親父殿のいる体育教官室に……
「スペードと二人で過ごしたいのだろう? 二人で、な? 僕はちゃんと聞いていたぞ、シルバー。遠慮なく生徒会室を使うと良い」
 マレウス様は有無を言わさない態度で笑みを浮かべる。これは、半分ほど俺のことをからかっていらっしゃるな。だが、残り半分は心配だというのもどことなく伝わってはくる。仕えるべき主君に心配をかけてしまったとあっては、逆らうわけにはいかない。
……分かりました、では、お言葉に甘えて……
 そうして、俺は食事を終えたあと、ほんのわずかな時間ではあるが……デュースと二人で過ごすことになった。

「お疲れ様です、先輩」
「ああ、ありがとう」
 生徒会室の中には、緑色のソファが一対と、書斎机が置かれている。あとで片付けるのならば何をしても自由に使っていいとのことだったので、遠慮なくソファへ座り休ませてもらうことにした。デュースはそんな俺の隣で、ソファの片隅にちょこんと座っている。
 ……何故だろう、今日の俺は、精神的に疲れているせい、なのだろうか。その、デュースがソファにちょこんと小さく座っている光景を見ているだけで、どことなく、そこはかとなく癒される気がする。
 そうしてデュースを見つめていると、デュースが心配そうに俺を見つめ言った。
「先輩、座ってるだけで大丈夫ですか? もし眠かったら、ここに寝てもらっても大丈夫ですよ?」
「こ、ここに……って?」
 ぽんぽんとデュースは己の膝を叩く。ま、まさか、膝枕……ということだろうか? いや、それは良くないだろう。何より、そのように心地良さそうな場所で横になどなってしまったら、俺が眠ってしまう気しかしない。
「だ、だめ、ですか?」
「い、いや、ダメじゃない! ……が、その……。眠ってしまったら困るので、もし、眠ったときは、都度起こしてくれるなら……
「それなら任せてください! どうぞ!」
 デュースは自信満々に己の膝を差し出す。俺は、その柔らかそうな、いや、実際とても柔らかい太ももに己の頭を乗せることへわずかな緊張を覚えたが、ええいままよと思い切ってデュースの膝へと己の身を任せた。
「せんぱい」
 デュースの甘い声が、頭上から響いてくる。どこからか良い香りがして、落ち着かない。……俺の身体のことだ、横になどなればすぐさま眠りに落ちるかと思っていたが、寝てられるか、こんな状況で。
「寝心地はどうですか?」
……とてもいい」
 良すぎて寝られないくらいだ、という煩悩は心の中だけにしまっておく。俺の言葉を聞いたデュースは、良かったです、と俺の前髪を梳くように指先で撫でていく。それが心地良くて、先ほどまでの興奮はどうしたのか、思わずうとうとと眠りそうになってしまう。
「先輩、起きてください」
「あ、ああ……今、起き、る……
 柔らかなデュースの声が耳元へ落ちるように響く心地良さに、むしろ眠気が強くなってきてしまう。このままではいけないと身体を起こそうとしたとき、偶然にもこちらを覗き込んでいたデュースの唇と口が触れ合った。
「あ……
「す、すまない。今のは、そういうつもりではなくて」
「い、いえ! だ、大丈夫、です……
 デュースとお互いにそっぽを向いて慌て合う。もう、既にひとつに結ばれることもあったというのに、なぜ俺たちは今さらこんなことでも照れてしまうのだろうか。それはやはり、俺とデュースだから、なのだろうか。やがて、デュースの方が控えめに俺の制服の裾を引いて、言った。
「あ、あの。できたら、もう一回、ちゃんと……しませんか?」
……ああ。かまわない」
 これは願ってもないことだ。デュースに向き合い、もう一度その顔を引き寄せてくちづける。せんぱい、とデュースの薄くやわらかな唇が開き、俺の手に頬をすり寄せた。
「今日、放課後……先輩のお部屋にお邪魔しても、いいですか?」
「俺の部屋、か?」
「はい。……私もバレンタインのチョコレート、用意してきたので……。ちょっと、他の子より特別なシチュエーションで渡したいな、って」
 もしダメだったら、代わりに放課後にちょっとだけ時間もらえたら大丈夫なので、とデュースは言う。
……ああ。そういうことならば、問題ない。大丈夫だ。ぜひ、遊びに来てくれ」
「わ、良かった! じゃあ放課後、楽しみにしてますね!」
「ああ」
 毎年、災難な日だとばかり思っていたが、今年は少しだけ……いやかなり、去年までよりもいい日になりそうだ。

 それから、放課後。呼び出しの女子に捕まる前に、俺は裏門へと急ぐ。マレウス様とセベクは、カップル限定のチョコレートフェアへ行くのだと言って、二人で既に出発している。それであればデュースを連れて俺も着いていきますと進言したのだが、もう他の護衛を手配してあるから約束を優先しろと、当のマレウス様からすげなく断られてしまった。
 そんなわけで俺はひとり裏門に辿り着き、物陰に身を隠してデュースを待つ。デュースには既に人目を避けて裏門の方にいると伝えてあるから、こちらへ向かってきてくれるはずだ。
 デュースを待っていると、腕を組んだ……というか、男子の方に女子が一方的に腕を絡めたように見える二人組が歩いてきた。
「え~ちょっと、アタシ以外からもチョコレートもらったの~!?」
「家庭教師先の子と、その親御さんからもらったんだよ……。断るわけにもいかないだろう。というかキミ、分かってて言ってるよね?」
 ……ああ、リドルとエースか。なら、絡められた腕を解かないのも納得だな。通りがかった二人の前に顔を出し、デュースはもうすぐかと尋ねると、エースが、今アタシたちのクラス終わったからもうすぐ来ると思うよと答えてくれた。
「ありがとう、恩に着る」
「シルバー……キミも毎年、大変だね」
「ああ、恋人ができたらもう少し落ち着くと思っていたのだが、当てが外れたな……二人はこれからデートか?」
「そ! と言いたいところなんだけど、副会長ってばせっかくのバレンタインに家庭教師のバイト入れててさ~! 仕方ないから、一緒に限定のショコラティーラテ飲みに行くことで許してあげようってことになったの!」
「そうか。気を付けて行ってきてくれ、健闘を祈る」
「ボクたちは戦場にでも行くのかい、シルバー……? まあ、キミの方も頑張って」
「ああ、それではまた明日、二人とも」
 そうしてリドルたちと別れると、エースの言葉通りすぐにデュースは裏門前に姿を現した。俺の姿を探してか、キョロキョロと辺りを見回している。すると、そんなデュースに声をかける女子がいるのを目にした。……もしかして、俺関連のトラブルだろうか? だったら、助けに行かなくては。だが、様子を見るにどうやらそういうものとは違ったようだ。
「あの、デュースさん、これ……受け取ってくださいっ!」
「えっ……私に? その、シルバー先輩へ代わりに……、とかじゃなくて?」
「はいっ、デュースさんに受け取ってほしいんです……っ!」
 目の前の光景に、思わず俺は驚いてしまう。え、女子から女子に、か? 俺の恋敵としては、数名ほどデュースと同学年の男子がいるのを知っていたが……まさか、そこには女子も混ざっていたのか!?
 エースが時々、デュースの一人称に僕というものが混ざったり、昔していた男子のような言葉遣いになるのを揶揄して、『デュースくん出ちゃってるよ~?』とからかっているのは知っていたが……。もしかしてそういうところが、他の女子から注目を集めていたのだろうか?
「え、ええっと。その、私は、もう好きな人がいて……
「はいっ、知ってます! でも、気持ちにケジメつけるために、受け取ってほしいんですっ!」
「そ、そういうことなら……受け取らなきゃ、オンナじゃない、か? 分かった。ありがとう。気持ちだけは受け取っておく」
 そうしてデュースがチョコレートを受け取ると、その女子はありがとうございましたと言って立ち去っていく。俺はその光景に少し呆然としていたが、デュースを迎えてやらなければいけないことに気付き、急いで物陰から姿を現した。
……ずいぶんモテているんだな、デュース」
「シルバー先輩! 見てたんですか?」
「ああ、見ていた。……まさか、バレンタインに恋人が他の女からもらっているのを見る側の気持ちを体験するとは思わなかった……。お前は、今朝からずっとこんな気持ちでいたんだな」
「あ、あはは……。でも、私のは今の一個だけで、他のはエースとかセベクとかと、友チョコ交換しただけですから」
「本当か? ……同学年の男子には渡したりしてないか。……ユウだとか、ジャックだとかに」
「た、確かにその二人とエペルには、義理チョコなら渡しましたけど……。でもっ、セベクとエースと、三人で作った義理を合同で渡しただけですっ!」
「そうか。なら、いいのだが」
「もう、ヤキモチ妬きなんだから」
「お前もだろ」
 そんな軽口を叩きながら、デュースの手を取ってさっさと裏門を出ていく。一年に一度の勇気を出しているのだろう彼女たちには悪いが、これ以上、他の女子に捕まってはいられない。俺には俺の、大切な子との約束があるんだ。
 そうしてどうにかこうにか家へ帰り、デュースを俺の部屋へと連れていく。いつも通りデュース用のクッションを用意してやり、そこに座ることを勧めた。
「ありがとうございます、では、さっそくなんですけど……!」
 クッションに座るなり、デュースは上品そうな白い紙袋を俺の前に差し出してくる。今日の本題だな。
「ハッピーバレンタイン、シルバー先輩! 私からのチョコレートですっ!」
「ありがとう、デュース」
 デュースから包みを受け取る。中身を覗いてみると、細かく四角い形に切られた生チョコが、いかにも手作りという風のラッピングに包まれて入っていた。
「うまそうだな」
「えへへ……っ、セベクとエースと一緒に、頑張りましたから!」
 二人も同じ生チョコなんですけど、みんな少しずつ味や作り方が違うんですよ、とデュースは言う。
「味が違うのか?」
「はい! エースはイチゴの味の生チョコで、セベクはアイスを入れて作ってました!」
「そうか。俺のは何味だ?」
「それは、食べてみてからのお楽しみ、です! ……あの、私から食べさせてみても、いいですか?」
「では……お言葉に甘えようか」
「はいっ!」
 再び包みを渡すと、デュースはチョコレートの包みを取り出してラッピングのリボンを解き、透明なフィルムの中から、紙でできたトレイに入った生チョコをひとつ、その細い指で持ち上げた。
「はいっ、あ、あーん……!」
……ああ」
 自分から言い出しておいて、照れているのか。可愛いな、と思いながらデュースの手首を掴み、己の口に寄せさせてそのチョコレートを口の中に放る。
「ん、これは……
「ど、どう、ですかっ?」
……うまい。それにどこか、コーヒーの味がするな。俺がよく飲んでいることを覚えていてくれたのか」
「は、はい! ふふ、良かったぁ……
 デュースの身体からは、へなへなと力が抜けていく。まったく、そんなに緊張していたのか。……お前が作ってくれたもので、俺が喜ばないことなどないというのに。
「続きも食べていいか?」
「はいっ、もちろん!」
「良かった。では、遠慮なく」
 そう言ってデュースの腰をぐいと引き、俺の片膝の上に座らせる。
「え、シ、シルバー先輩っ!?」
……もらうのは、チョコだけじゃなくてもいいんだろ?」
 そう告げて、抱き寄せたデュースの首筋にキスをすれば、デュースはようやく俺の意図を察したようで、真っ赤になっていた。
「もうっ…………シルバー先輩のえっち」
「悪いな、お前のせいだ」
 次のチョコレートを口の中に放り込み、甘くほろ苦い風味が広がる中、そのままデュースの口へとキスを落とした。
 ――きっと俺のバレンタインデーは、ここからが本番だな。
 一か月後のお返しはどういうものにしてやろうかと思案しながら、今はただデュースとのチョコレートよりも甘いひとときを楽しむのだった。

*おしまい