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山茶花
2024-09-11 20:31:45
5923文字
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[シルデュ♀]受け女体化学パロ
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君じゃなきゃダメみたい(12)【093GP013】
シルデュ♀が夏祭りデート行く話。
※現代学パロです。男子そのまま・女体化キャラ入り交じっています。
※独自設定が多く含まれます。
※今回はサブカプ要素ありません。シルデュのみです。
↓大丈夫な方はスクロール
「行ってきます、親父殿」
「おお、気を付けて行ってくるんじゃぞ!
……
しかし、彼女と夜遊びとは
……
。あやつも大人になったもんじゃのう」
そんな親父殿の言葉を背にし、俺は自宅を出発する。今日は、デュースと約束していた夏祭りのデートの日だ。正直、俺の方は適当な恰好でいいだろうと思ったのだが、このことを知ったマレウス様とセベクによって「彼女に合わせた恰好くらいしていけ」と半ば強制的に勧められ、仕方なく甚平を着ていくことになった。紺色の生地に、何か伝統的な花柄と幾何学模様がところどころに合わせられていて、和装にしては派手な印象だ。
お陰で目立っているのか、道を行くとちらちらと振り返られる。
「お兄さん、カッコイイですね! お祭りにひとりですか~?」
華やかな赤い浴衣を身に着けた女性に声をかけられる。
「いや、俺は
……
」
このあと約束があって、と言う前に、何か暖かいものが腕に触れた。どうやら、誰かに腕を組まれたようだ。思わずそちらを見ると、水色の浴衣に身を包んだデュースがいて、俺の腕に腕を絡ませていた。
「先輩、お待たせしました! 行きましょ?」
「あ、ああ。
……
それじゃあ、俺はこれで」
デュースに連れられるまま、俺はその場を後にする。道を行くとやがて、賑やかな祭囃子の喧騒が俺たちを出迎え始めた。
「先輩ってば、目を離したらすぐ他の女の子に声かけられちゃうんだから」
「すまない
……
、先に着いていたんだな。待たせてしまったか?」
「いえ、私もちょうどさっき来たところでしたから。
……
それよりも、見てください、先輩。どうですか?」
デュースは石橋の上でくるりと回ってみせる。水色に、何の花だかは分からないが、百合のような紫の花びらがあしらわれた浴衣を黄緑の帯と水色の帯留めで留めていて、とても綺麗だ。丁寧にまとめられた髪に飾られた、ちゃらちゃらと音を立てて揺れる紫陽花のかんざしも、ほんのり紅を差し、薄化粧をしているような顔も。
「ああ、とても綺麗だ。
……
楽しみにしていた甲斐があった」
そうして頭を撫でてやろうとして、手を止める。
「ふっ、頭を撫でたりしたら、せっかくのお洒落を台無しにしてしまうな。これだけにしておこう」
代わりに頬にキスをすると、デュースは顔を赤くして、先輩も恰好いいです、と褒めてくれた。
「ありがとう。それじゃ、行こうか」
「
……
はい」
デュースに手を差し出し、祭りの喧騒の中へと飛び込む。あちらこちらの屋台が、賑やかに道を行く客に向けて声をかけあっていた。
「さあ、何からやりたい? 遊ぶでも食べるでも、なんでもいいぞ」
「じゃあ、あれやりませんか?」
そう言ってデュースが指したのは、射的屋だった。
「そうだな、行ってみるか」
屋台に並び、順番を待つ。見ている限り、威力を安全に弱められた銃で、景品を撃ち落とすルールで、一回に渡される弾の数は6発のようだ。先方の客が当たらず悔しがったり無事小ぶりな景品を当てたりしているのを眺めて待っていると、やがて俺たちの順番も回ってくる。
「先輩、何狙いますか?」
「そうだな、お前は欲しいものがあるか?」
「ふふっ、獲ってくれるんですか? 先輩が獲ってくれたらなんでも嬉しいですけど
……
あ!」
「ん?」
デュースの視線の先には、小さなヒヨコのぬいぐるみが鎮座している。
「本当にヒヨコが好きだな、お前は」
そう俺が言うとデュースは巾着袋から財布を取り出し、店主に料金を渡して銃を受け取る。
「まずは私からやってみますね!」
しかしその挑戦もむなしく、ヒヨコのぬいぐるみはわずかに位置をずらすばかりだった。だが、それで弾の威力は確認できた。
「もう、悔しい~!」
「そう言うな。もう少しで落ちそうだろう。店主、そのまま狙っていいか?」
「あいよっ! 二人で力合わせてヒヨコ狙いだね、頑張って!!」
俺も続けて挑戦しようと、店主に申し出る。店主は景品の位置を戻さないことを快諾してくれた。良心的だ。これなら、いつか親父殿が言っていたように、簡単に景品を取られないよう中に重石を入れているということもないだろう。
(あれを確実に落とすとなれば、少々この弾の威力では不安だが
……
。6発あれば、十分だ)
「さあイケメンの兄ちゃん、彼女にカッコイイとこ見せちゃってー!!」
店主の煽りに囃し立てられ、周囲も盛り上がる。
……
困ったな。これは失敗できないぞ。
「6発で仕留められればいいが
……
」
風の向きとヒヨコの持つ体積のバランスを計算し、5発で落とす想定をする。いざというときのために予備の弾を1つ残しておけ、というのは親父殿の教えだ。
皆が息を呑んで見守っている、ような気がする。すう、と息を吸って、風向きが追い風になった瞬間に狙いをつけ、弾を発射した。
……
今だ!!
一発撃ってすぐに装填し、タン、タン、タン、タンとリズムを刻むように連続でヒヨコの頭部を狙い、5発で素早く撃ち抜く。思ったよりは重かったが、これなら倒せる。
5発目を撃ったあと、大きく傾いたところからまだ台座に居残ろうとするヒヨコを、デュースがあぁ、と残念そうな声をあげて見守る。そこにダメ押しとして最後の一発を打ち込み、ようやくヒヨコを撃ち落とした。
「きゃあ! すごいすごい、ほんとに落としちゃった!!」
デュースを含め、いつの間にか見守っていたらしい観客たちからも盛り上がりの声が上がる。店主もおお、と感嘆のような声をあげると、ヒヨコのぬいぐるみをすぐにシートから拾い、軽くパタパタと砂埃をはらった。
「おめでとう!! はい、景品のヒヨコだよ!!」
店主からヒヨコを受け取り、銃を返す。
「兄ちゃん、銃の装填がずいぶん手慣れてたけど
……
その道のプロか何か?」
「俺ではない。父の指導の賜物だ。それに、あなたの屋台が良心的だったのも幸いした。5発なら落とせていなかったからな」
俺が一礼すると、集まっていた観衆も、去っていったり自分たちも射的に挑戦したりとそれぞれに散り始めた。
「ほら、デュース」
撃ち取ったヒヨコをデュースの鼻に押し付ける。わぷ、と声をあげてデュースは嬉しそうにそれを受け取った。
「えへへっ、前のヒヨコちゃんと一緒に大切にしますね!」
「ああ、そうしてくれ」
それから次は、ヨーヨー釣りに挑戦した。デュースが、さっきは失敗しちゃいましたけど、私こういうのは得意ですからと言って次々にヨーヨーを拾っていく。さくさくとヨーヨーを釣ってそれが7個を数えた頃、今度は俺が感嘆の声をあげる番だった。
「すごいな。俺は1つ目で切れた。こよりに力を強く入れ過ぎたようだ」
「ふふっ、先輩は力が強いですもんね! さあ、この調子でどんどん行きますよ!」
そのままデュースは8個目を取り、9個目を取ろうとしてこよりが切れてしまった。
「ああっ、残念。でも、記録更新です!」
「前はいくつだったんだ?」
「6個!」
「なら、確かに記録更新だな」
デュースは満足したようで、店主に1つでいいですと告げてどの水風船にしようかと迷っているようだった。そのとき、デュースは近くで眺めている子どもの存在に気付いたようだ。
「どうしたの、僕、水風船欲しいの?」
「あっ、えっと
……
」
子どもは何やらもじもじしている。デュースはよーし、分かったと言って子どもの手を握り、言った。
「なら、お姉さんと一緒にやってみよっか!」
「
……
いいの?」
「いいのいいの! こういうのは自分で取った方が楽しいもんね!」
そうしてデュースは店主にもう一度お願いします、と言って、少年の手に手を添え、コツを教えながらヨーヨーをすくう。
「このヒモのところは短く持って、水につけずに
……
、浮いてる輪ゴムのわっかを狙うの! よし、あれを狙おう!」
少年がデュースと共に固唾を飲みながらゆっくりとヨーヨーに触れる。ゴムひもがうまく針にかかったところで、デュースが叫ぶ。
「よし、今だっ! 引き上げろっ!!」
そうして少年は無事、水風船を己の手でひとつ手にすることができた、というわけだ。少年はお姉ちゃんありがとう、と誇らしげに水風船を見せびらかして帰っていく。デュースは店主から自分の分の水風船をひとつ受け取ると、傍で成り行きを見守っていた俺の元に戻ってきた。
「ごめんなさい先輩、お待たせしました」
「いや。
……
面倒見がいいんだな」
「なんていうか、私も小さい頃、お小遣い少なかったりして、あんまりお祭りとかで遊べなくて、いいなって見てたこと多かったから、ああいう子見てると放っておけなくて
……
」
「ふっ、そうなのか。
……
良いものが見られた。将来、子どもにも教えてやってくれ」
「子ど
……
っ」
「ん?
……
どうかしたか?」
「い、いえ
……
。はい、いつか
……
いつかその日が来たら、いっぱい、いろんなこと教えてあげます!」
「ああ、そうしてくれ」
それから、そろそろ小腹が空いてきたということで、屋台の食べ物を見回ることにした。
「クレープ、焼きそば、フライドポテト、たこ焼き、かき氷にお好み焼きにりんご飴
……
! なんでもあって迷っちゃう!」
「好きなものを選ぶといい。余ったら食べてやる」
「ダメ、余らないから困ってるんです! 浴衣の帯締めてるのに、いっぱい食べたらお腹苦しくなっちゃう!」
そうか、それは大変だと笑うと、もう、笑いごとじゃないんですからっ、とデュースは怒る。
結局夏祭りといえば! と言ってたこ焼きを買うことにしたようだ。
「あとはやっぱり
……
クレープも!」
「腹が苦しくなるんじゃないのか?」
「デザートは別腹なんですっ! 特別なのっ!」
「ふっ、そうなのか」
たくさん食べることを隠さなくなったデュースがほほ笑ましくなり、笑ってしまう。さて俺は何を食べようかと思案していると、いくつかの屋台から香ばしい匂いが漂ってきた。
「なら、俺はあの辺りにするか」
焼きものの屋台に並び、焼きトウモロコシとじゃがバターを購入する。ついでに親父殿へのお土産にとイカ焼きを追加で買っておいた。
近くで待っていたデュースの元へ戻ると、ううっ、おいしそうな匂い~! と、悔しがられてしまった。
「そう悔しがるな。お前もひとくちずつ食べたらいい」
「もう、先輩ってばすぐ私のこと甘やかすんだから
……
」
「悪いな、趣味なんだ」
そうして食事を持って高台に登り、河川敷に腰を下ろす。
「そのままでは、せっかくの浴衣が汚れてしまうかもしれない。せめてこれくらいは敷いておけ」
ハンカチを広げて敷いてやると、デュースは遠慮がちにありがとうございますと言ってそこへ座った。気にするな、ハンカチは汚れるためのものだと俺もその隣に座り、夜空を見上げる。
「花火が上がり始めるのは、もう少し後のようだな。とりあえず食事にするか」
「はいっ! ふふっ、あちこちからずーっといい匂いがしてて、お腹すいちゃった! いただきまーす!」
「いただきます」
たこ焼きのパックを開けて頬張り始めるデュースを横目に、焼きトウモロコシにかぶりつく。
「ほら、約束通りお前もひとくち食べていいぞ?」
「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ
……
」
控えめにひとくちをかじるデュースの口の小ささに、俺は少し驚いた。俺はいつもこんな小さな口にキスをしていたのだろうか
……
。
焼きトウモロコシを食べ終えると、デュースがくすくすと笑って俺の口元にハンカチを添えてきた。
「先輩、口元にタレがついちゃってますよ。ほら、じっとして」
「ああ、ありがとう。気が付かなかった」
次の食事も食べてしまおうと、じゃがバターのパックを開ける。こちらには割り箸がついていたので、細かく切ってバターの多く染みたところを、少しふうと冷ましてデュースに差し出した。
「ほら、口を開けろ」
「あ、あーん
……
」
「
……
うまいか?」
「! おいしいですっ!」
目を輝かせるデュースに、そうかと笑って満足し、俺も食事に戻る。
「先輩もおひとつどうぞ? お返しですっ!」
そう言ってたこ焼きを差し出してくるデュースに、そう言われてはしょうがないな、受け取ろうと言ってたこ焼きにかぶりつく。
「ん、
……
うまいな」
「ですよね! このたこ焼き、タレが甘辛でおいしいんです! おいしいものを一緒に食べるのって、嬉しいですよね!」
「ふっ、そうだな。
……
ああ、でも。クレープはひとりじめしてかまわないからな。別腹になるほど大好物なのだろう?」
「だ、大好物ってほどじゃ
……
! もうっ! からかってるでしょ!?」
「少し」
「もう~!」
そうしてデュースが苺とカスタードクリーム、ホイップクリーム、生クリームの3種のクリームが贅沢に乗ったクレープを食べ終え、口の周りをクリームでいっぱいにした頃、それを拭い取ってやっていると会場にアナウンスが流れた。
『
……
まもなく、花火の打ち上げを開始いたします
……
』
俺たちはまわりを少々片付けて夜空を見上げ、そのときを待つ。
「花火、楽しみですね!」
「ああ」
じっと待っていると、そのうち盛大な音楽と共に金色の吹き上げ花火が火花を上げ、打ち上げの火蓋を切った。
ドン、ドンと轟音が鳴り、夜空にいくつもの色とりどりの火花が咲く。デュースは道中買ったうちわで自分を仰ぎながら、華やかな空を見つめている。
「綺麗
……
」
夜空を見つめ、光が照り返されて地面も人も輝く。そんなデュースの方ばかりを、俺は見ていた。
……
花火よりも、それを見つめるお前の方が、もっと、なんて恥ずかしいことを考えながら。
「先輩、あの花火
……
」
デュースが不意にこちらを向いた瞬間、唇に向けてくちづける。
「
……
花火が、どうしたんだ?」
「わ
……
忘れちゃいました
……
」
ほほ笑むと、デュースはうちわで顔を隠してしまう。それでも赤くなった横顔は隠しきれていなくて。
嬉しくなって、デュースの手に手を重ね、ぎゅっと握りしめる。
「来年も見に来よう。俺と、二人で」
「
……
はい、きっと
……
」
肩を寄せ合い、夜空を見上げる。こうして時折胸の鼓動を打たせながら共に過ごす時間をこれから幾度も重ねられるようにと、今はただ思うばかりだった。
*おしまい
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