山茶花
2024-09-11 20:29:07
9253文字
Public [シルデュ♀]受け女体化学パロ
 

君じゃなきゃダメみたい(10)【091GP011】

みんなで海に行く話。

※現代学パロです。男子そのまま・女体化キャラ入り交じっています。
※独自設定が多く含まれます。
※今回はシルデュの他にマレセベ♀、リドエー♀要素が含まれます。

↓大丈夫な方はスクロール


「そろそろ見えてきたぞ~。シルバーよ、窓を開けてみよ!」
「窓、ですか? ……ああ、潮風の匂いが漂ってきますね」
 今、俺たちは、親父殿が運転するワゴン車の中にいた。マレウス様の講義の甲斐もあってか、皆無事に今年の夏休みは補習には引っかからずに済んだようで、俺たちは誰ひとり欠けずに海に行くことができることになった。そして今、実際に海に向かっている車の中だというわけだ。
「海が見えてくると、なんだかワクワクしてきますね!」
「ふっ、そうだな」
 隣に座るデュースの明るく元気な声に、俺も浮き足立っていく。そして他のみんなも、車窓から見えていく砂浜にだんだん気分が高揚してきたようで、車内での会話が弾み始めた。
「着いたらまずは何しよっかな~!」
……最初は準備体操じゃないかい?」
「も~、副会長ってば真面目すぎっ!」
 一番後ろの席に座っている、リドルとエース。
「マレウス様と海……。楽しみですね、マレウス様!」
「そうだな。海には売店なども出されていると、リリアから聞いた。たくさん食べて、たくさん遊ぶといい」
 手前に座るマレウス様とセベク。
「皆、はしゃぐのは良いが、怪我や事故にだけは気を付けるんじゃぞ!」
 そして運転手と引率をしてくれる親父殿。今日はこの7人で、存分に海を楽しむことにしよう。

 やがて砂浜の向かいにある駐車場に車が停まり、親父殿が言う。
「ほれ、着いたぞ~! 遊びに行く前に、男衆はパラソルの設営を、女子は荷物運びを手伝っていくんじゃぞ!」
 親父殿の号令に、それぞれ車から荷物を運び出す。皆で協力してテキパキと砂浜にパラソルを設営し、シートを敷いて一通り荷物を置いてしまえば、サングラスを頭にかけた親父殿がやってきた。
「うむ、良い出来じゃ! それじゃ、遊びに行ってきてよいぞ! 何かあったらすぐに戻ってくるようにな。……散!」
 親父殿の号令で、俺たちはそれぞれに遊びの計画を立て始める。エースとデュースは二人で何か話しているようだ。
「ユウも来れば良かったのにね~!」
「仕方ないって。ユウ、カップルしかいないところにひとりで参加するの気まずいって言ってたし……
……アタシは違うんだけど! ユウの奴、何を勘違いしてるんだか……
 マレウス様とセベクは、まず売店を見てみるようだ。
「せっかく来たのだからな。どんな店があるのか、見てみたい」
「ではあちらの店に行ってみましょう、マレウス様!」
 俺はどうしようかとまわりを見ていると、リドルが声をかけてきた。
「キミは彼女と遊ばないのかい、シルバー?」
「リドル。お前こそ、エースはいいのか?」
「ボクはキミと違って、そういう立場ではないからね。今のところは」
……俺が見てる限りは、エースもお前のことを悪いように思ってはいない気がするが」
「おや、キミがそんなことを言い出すなんて、意外だね。それとも、恋人が出来てからそんな話題にも興味を持つようになったのかな?」
 そうして俺たちが立ち話をしていると、エースとデュースが傍にやってくる。
「ね~、アタシたち水着に着替えたいから、更衣室見張っててくれる?」
「分かった、すぐに行こう」
 リドルと共に、女子たちの着替えを警護しに更衣室へ向かう。女子たちが入っていった更衣室のドアに背を向け、周囲を見回していると、やがて何事もなく彼女たちは姿を現した。
「お待たせしました!」
 水着に着替えた二人が姿を現す。エースとデュースは二人とも、髪を揃いで後ろに結びまとめている。前にもゆっくり家の部屋で見せてもらえたが、真夏の日差しの下で見る彼女の水着は何か特別に輝いているような気がする。……なんだか最近の俺は、同級生たちの価値観に毒されてきてないか? いや、彼らのせいにするのは良くない。俺が単に良からぬ考えを持つようになってしまっただけだ。不甲斐ない。
「ちょっとシルバー先輩、黙ってないで何か言ったげなよ~。カレシでしょ~?」
「あ、ああ。……その、可愛い。よく似合ってる」
「あ、ありがとうございます……っ」
 アタシは? とねだるエースにも可愛いと言ってやると、エースは満足そうにして俺たちにも着替えをするよう勧めた。
「先輩たちも着替えてきなよ! アタシたちここで待っててあげるからさ!」
 断る理由もない。勧められるままに彼女たちと入れ替わりで着替え、更衣室を出ると、外で待つ彼女たちに声をかけている男を発見した。
「キミたち二人? お友達なの? すごい可愛いね、水着よく似合ってる! 俺たちと一緒に遊ばない?」
「え~、ごめんけどこの子カレシいるから~!」
「じゃあ、キミだけでもさ!」
 リドルと目を合わせ、頷きあって俺たちはその男たちに絡まれる彼女たちへずかずかと近付いていく。そして不躾にエースの肩を掴んでいた腕を掴み離させた。
「俺たちの連れに、何か用か?」
 俺が腕に軽く力を入れてひと睨みすると、男はい、いやなんでも! と言い残して去っていく。
「すまないな、待たせてしまったようで」
「ヘーキ! ってか先輩すごいね、イケメンの威嚇、ナンパ男に効果抜群じゃん!」
「そうなのか? ……まあ、俺の顔が何かの役に立ったのなら良かった。デュース、お前は平気か? 身体に触れられたりしてないか」
「私は平気ですよ、先輩。助けてくれて、ありがとうございます。……カッコ良かったです」
「そうか、良かった。気を取り直して、遊ぶとしようか」

 そうして俺たちはまず、せっかく着替えたのだし暑いから軽く海に入ろうということになった。
「お前たちも着替えたのか? ふふ、僕も店で面白いものを見つけた。共に戯れるとしよう」
 どうやら売店に行ったあと、水着に着替えてきたらしいマレウス様とセベクも合流し、皆で水遊びをすることになった。マレウス様はおもちゃの水鉄砲を大変お気に召したようで、俺やリドルを容赦なく狙ってくる。
「マレウス様、先ほどから男だけ狙ってませんか?」
「ふっ、こんなもので女性陣を狙うわけにもいくまい? それに彼女たちを狙ったところで、お前たちは庇うに決まっている。なら最初からお前たちに当てた方が良い」
 リドルと顔を見合わせ、否めないなと笑う。すると隣から大きくばしゃりと水をかけられた。
「そっちがかけてこなくても、アタシたちはかけるもんね~!」
「ふふっ、先輩、髪までびしょぬれですよ!」
 どうやらエースとデュースが二人で俺たちに水をかけてきたようだ。
「やったな?」
「どうやら彼女たちは容赦なく濡らされることをお望みのようだね、シルバー?」
「ああ、そのようだ。……やってしまおう!」
 リドルと共に、手ですくった水をエースとデュースにかけ返す。そのうちマレウス様とささやかに水をかけあっていたセベクにも思い切り水がかかってしまい、全員を巻き込んでの水遊びはあちこちに飛沫の上がる大盛況となった。……とても楽しい時間だ。

 やがて一通り水をかけあったあと、セベクの腹がぐうと鳴った。どうやら身体を動かして、腹が空いたらしいな。
「ふふ、波打ち際での戯れも良いが、いったん食事休憩としようか」
 マレウス様の号令で、俺たちは一度砂浜へと上がっていく。先に海から上がり、デュースに手を差し出すと、ありがとうございますと手を取って海から上がってくれた。
「アタシかき氷食べたーい!」
「身体を冷やさないかい?」
「暑いから平気、ヘイキ! ほら行くよ、副会長!」
 エースはリドルを引っ張って売店へと行くようだ。
「焼きそば、たこ焼き、お好み焼きに焼きトウモロコシ……。どれもあまり馴染みのない料理だな」
「もしご興味がおありでしたら、お好きなものをご賞味ください、マレウス様! 残った分は私が食べますから!」
 そんなみんなの後を歩きながら、俺たちも何か食べようか、とデュースに言う。
「どれもおいしそうで、迷っちゃいますね! でもたくさん食べたらお腹出ちゃうから……
 そう言ってデュースは水着から露出している腹をさする。……十分細い腰だと思うが、何か問題あるのか?
「何を言う。お前は細すぎる、もっと食べた方がいい。それに多少腹が出たところで、俺は気にしない。せいぜい触り心地が良くなるくらいだろう」
「も、もう! 何言ってるんですか、えっち!」
 デュースにばしりと背中を叩かれる。……俺はそんなに変なことを言っただろうか?

 それから売店を一通り見た俺たちは結局、腹持ちが良いものが食べたいとカレーライスを一杯ずつ食べることにした。パラソルで留守番してくれている親父殿にも、同じものを買っていく。それでも身体を動かすのが好きな俺たちには足りないかもしれないと、たこ焼きをふた船追加で買って、ひとつは親父殿に渡し、もうひと船はデュースと半分に分け合った。
「おいし~! このたこ焼き、玉子の味が強くてクセになりますね!」
「そうだな。うまい」
 ひとつの皿からこうして二人で分け合って食べるのは初めてのことだな、と内心感慨に浸る。
 他のみんなの様子を見ると、みんなもそれぞれに楽しそうに食事を分け合っていた。
「いかがですか、マレウス様! こちらもひとくちどうぞ!」
「うむ、悪くない。もうひとくちもらっていいか、セベク?」
「はい、お好きなだけ!」
 マレウス様は、セベクに食事を口に運んでもらっている。あれはたぶん、味が気に入ったというよりはいちゃつきたいだけだろうな、とマレウス様の内心を推測しつつも、お行儀が悪いですよという言葉は見ないフリをしておくことにした。
「あ! このかき氷、さくらんぼついてるじゃん、やったー! アタシ好きなんだよね!」
「そうだったのかい? なら、ボクのもあげるよ。ほら」
「ありがとー! ……はむっ」
 リドルはリドルで、かき氷に乗っていたさくらんぼをエースに手ずから差し出している。そしてそれをエースも疑問に思わず食べていて……アイツらはいつになったら恋人になるんだろうか?
 デュースも同じことを思っていたようで、俺にこっそりささやくように言ってきた。
「ふふっ、エースとローズハート副会長、いい感じですね! 私たちも、二人のこと応援しましょうね!」
「ああ、そうだな」

 食事を終えたあと、女子たちは一度化粧直しに行くらしい。その間待たされることになった俺たちは、親父殿のパラソルまわりに集まって適当な話をしていた。
「待っている時間というのは長く感じるものだな」
「そうですね」
 マレウス様に何か話題を提供した方が良いだろうかと思い、俺は普段から気になっていたことを尋ねてみる。
……二人は、それぞれ彼女たちのどんなところを好きになったのか聞いてみても?」
 するとマレウス様とリドルは同じ顔で驚いてみせた。
「シルバー、キミがそんなことを尋ねるようになるなんてね。本当に意外だよ」
「同意だ、ローズハートよ。だが、そんなシルバーの変化は喜ばしい。僕たちも応えてやらねばなるまいな?」
 そうですね、と応じたリドルがまずは話し始める。
「とはいえ、ボクのはあまりシルバーやマレウス先輩のような甘い恋愛とはいえないのだけれど。ああいう子が傍にいると、ボクの視野も広がる……と言えばいいのかな」
「視野が広がる?」
「価値観が更新される、と言ってもいいね。……正直、好きだ惚れたなんて言い合って照れてあげられるような、甘く可愛い気持ちや関係ではないけれど……これからの人生を共に歩むなら、彼女のような人がいいと思ったんだ」
 俺はマレウス様と顔を見合わせる。リドルの奴、かなり本気でエースの人格そのものに惚れこんでいることに、自分では気付いていないんだな。マレウス様はこれは僕も負けていられないなと語りだす。
「しかし、困ったな。僕の理由はとても単純だ」
「どんな理由なのですか?」
 俺が尋ねると、マレウス様は笑った。
「ふふ、簡単なことだ。ずっと一途に自分のことをとびきり好きでいてくれる女性は、可愛い。そうじゃないか? シルバー」
……なるほど、理解しました」
 マレウス様の気持ちはよく分かる。俺も、一年以上ずっと、自分自身をまるきり変えてみせるほどデュースが俺のことを想ってくれていたと知って、心を揺り動かされたからだ。
「で、シルバー。キミは?」
「えっ、俺もか!?」
「そうだ。ひとりだけ聞き逃げするのは許されないぞ?」
「俺は……その……
「うん?」
……正直、よく分からないんです。傍にいたら、大切にしたいと思い、俺のために着飾ってくれれば、可愛いとも思う。……一年以上も俺のことを想って、自分のすべてを変えてくれた、それは、アイツの一番いじらしいことだと思っています。でも、思いの期間だけで言うなら、もっと長く俺を想っていて、努力もしたと告げる女性もそれなりにいたのに、なぜ、アイツだけは違ったのか、俺はアイツでなくてはいけなかったのか……。未だに、時折自分の胸に聞いているくらいで……
 そう言うと、マレウス様とリドルが今度は顔を見合わせる番だった。
……単純に、可愛いと思ったんじゃないかい?」
「そうだな……実はものすごくお前好みの異性だったのではないか?」
「そ、そんな単純な理由なんですかね……? どうにもしっくり来ませんが……
 俺たちは三人で首をかしげる。様子を見ていた親父殿が、全部じゃろ全部! めっちゃタイプな子がものすごい好きでいてくれて、あっちゅうまに惚れたんじゃろ! と呆れてツッコミを入れていた。それでも俺は、親父殿の言葉でさえ、何かしっくり来るような気がしなかった。

 そんなことを話していると、女子たちが戻ってきて、俺たちは適当にばらけて遊び始める。マレウス様は強い日差しに少々疲れたと言って、親父殿の待つパラソルの傍でセベクと共に砂遊びをするようだ。
 エースはまだ水遊びがしたいようで、リドルの腕をまだ遊ぼうと引っ張っている。デュースも、せっかく海に来たんだからもっと水遊びしたいですね、と言うので、俺もそれに倣おうかと思ったとき、エースがとんでもないことを言い出した。
「ね~、リドル副会長。日焼け止め塗り直すの、手伝ってくれない?」
「自分で塗ればいいじゃないか、日焼け止めくらい」
「背中のとこ手届かないから! ね、お願い!」
 リドルは、はあと溜め息をつく。気持ちは分かるぞ、リドル。俺も彼女とか好きな子にそんなこと頼まれたらどうしようかと思う。
「まったく、どの男にでもそういうことを頼んでいるのかい?」
「誰にでもじゃありませーん。アンタだけです~」
……なら、仕方ないな。さっさと済ませるよ」
 え、ホントに塗るのか? シートに寝転がって水着の紐を外し始めたエースと、エースの指示に従って日焼け止めを塗り始めたリドルに、とりあえず俺たちは邪魔みたいだな、とデュースに耳打ちし、二人でその場を静かに去った。

「エースってば、大胆なんだから……
 デュースは先ほどの光景を思い出して顔を赤くしている。まあ、それはそうか。俺も少し、リドルの意外な一面を見た気分だ。
……俺たちは健全に遊ぶとしよう。もう少し深いところに出て、海の中にでも潜ってみるか?」
「あ、いいですね! お魚とか、サンゴとか見たいです!」
「では、潜ってみよう」
 俺たちはふたりで浅瀬よりも少し深い、足がつくかつかない程度のところまで泳ぎ、海の中へと潜ってみる。息を止めて目を開け、まわりを見渡すと、海中を泳ぐ魚が俺たちのまわりをぐるりと一巡していった。息継ぎをしに、水面まで戻る。
「ぷはっ。……ふふっ、お魚さん挨拶してくれましたね。可愛かったです!」
「そうだな。歓迎してくれているようで、嬉しい」
 何回か潜って海の景色を楽しんでいると、不意にデュースの姿が消えた。
「ん? デュース? どこへ行ったんだ?」
 水面に上がり、もしかして海流に乗って流されてしまったのではないかとまわりを見渡して心配していると、目の前に水飛沫が上がり、唇に柔らかいものが当たった。
「ばあ。……なんちゃって!」
……まったく、悪戯っ子だな」
 潜ったまま俺に近付いてきたデュースの、悪戯なキスだと気付き、俺はその身体を抱き寄せる。
「えへへ。こうやって先輩と一緒にたくさん遊べるの、楽しいです」
「ああ。俺も、楽しい」
 そして今度は俺からキスをし返してやると、砂浜でキラリと何かが反射するのに気付いた。……あれはもしや、親父殿が双眼鏡で俺たちを見てないか!?
「ひ、人目もあるから……、今はここまでにしておこう、デュース」
「はーい……
 残念そうなデュースには悪いが、親父殿に見られていると気付いてなお開き直れるほど俺の神経は太くない。そろそろ浜の方へ戻ろうとデュースの手を取り、波の打ち寄せる中を歩いて行った。

「見ておったぞ~、息子よ。ラブラブじゃのう!」
……やはり見ていらっしゃったのですか……
 親父殿の待つパラソルへ戻ると、サングラスの隙間から親父殿は俺をからかってくる。ひとまずそれは放置し、売店で買ってきたドリンクを俺は親父殿に差し出す。
「冷たい飲み物の差し入れです、どうぞ」
「おお、助かるわい! 我が息子ながら気が利くのう! ……ちべてっ! 何するんじゃ!」
「日差しのせいか顔が火照っていましたから」
「本当か~!?」
 親父殿の頬に冷たいドリンクを当てながらそれを渡し、ひとまず目的の差し入れは達成する。
「今、何時くらいですか? 親父殿」
「うむ。三時半くらいじゃな。もうじき夕方になるぞ。最低でも五時半には引き上げるから、それまでには戻るように他の連中に会ったら言っといてくれ」
「分かりました」
 俺は傍で待っていたデュースに向き直り、この後の予定を尋ねる。
「このまま親父殿と休憩してもいいが、お前はどうしたい?」
「なら、ちょっとお散歩したいです」
「分かった。行こう」
 親父殿に、俺たちはあちらを散歩してきますと言い残し、波打ち際の散歩へと出かけた。

「こっち側は人も少ないですね」
「そうだな」
 岩場の向こうは波も荒く、浜も狭いためか、遊んでいる人はほとんど見受けられない。賑やかな広い砂浜とは違い、まるでこの波打ち際で二人きりになったかのような気分だ。
 だんだん赤くなっていく夕日が、俺たちの顔や身体を照らす。前を歩くデュースが、手を後ろに組んだまま、振り返らずに話し出す。
「先輩。私……
「ああ」
……春に、先輩に告白して、OKもらってから、ずっと、ずーっと……、とっても幸せなんです。毎日、先輩は今頃何してるんだろう、何考えてるんだろう、ってたくさん考えて」
「そうなのか」
 だから、とデュースは振り向く。そして、俺に飛びつくように抱き着いた。
「ありがとうございます、シルバー先輩。私、シルバー先輩のこと、大好きです。今までも、これからも」
……デュース」
 俺の首に手を回すデュースの背中に腕を回して抱き寄せ、頬に手を振れれば、デュースはそっと目を閉じる。
 ……いいじゃないか。なぜ、好きになったのかなんて、今は理由が分からなくとも。理由は分からずとも、こんなにも幸せなのだから。それでも気になるのなら、未来の俺が、その子はお前にとって必要な存在だぞと予感させたとでも思っておけばいい。
 俺も目を閉じながらデュースにくちづければ、唇からは少し塩辛い海の味がした。
……そろそろ戻るか」
「はい」
 俺たちはパラソルで待つ親父殿の元へ戻る。まだみんなは集合していないようだったから、先に更衣室へ向かって着替えることにした。
 シャワールームでそれぞれ身体を流したあと、荷物から持ってきていたタオルを取り出し、デュースの髪を拭いてやる。
「ほら、しっかり乾かせ」
「シルバー先輩ってば、お兄ちゃんみたい」
……お兄ちゃんじゃなくて、彼氏だろ」
 笑うデュースに少しムッとして言い返せば、デュースははい、と言って顔を綻ばせた。
 更衣室へ向かい、来たときと同じように周囲を警戒してデュースの着替えを待つ。交代で着替えるのも、行きがけに男たちが声をかけていたことを思い出して高速で済ませた。その甲斐あってか、他の男には声をかけられずにデュースは待っていてくれたようだ。
「もう、シルバー先輩こそちゃんと髪を乾かさないと、濡れたまんまじゃないですかっ」
「俺はいいんだ」
「だめです!」
 怒るデュースにタオルでゴシゴシと髪を拭いて乾かされる。……本当に、幸せだ。こんなひとときがいつまでも続けばいいと、そう思った。

 パラソルを片付けに戻る前に店に寄っていきたいというので、デュースと共に寄り道をしていった。何か買いたいものでもあるのかと尋ねると、デュースは今日の記念にと星の砂を買っていくようだった。
「記念か。いいかもしれないな。俺も買っていこうか」
「本当ですか? 何色にします?」
……海だから、青だろうか?」
 そう言ってデュースの髪の色と同じような青色の小瓶をひとつ取り、会計へと進む。
「どうせなら、お前のも買ってやる」
「えっ、でも……
「こういうときは、俺に格好つけさせてくれ」
「じゃ、じゃあ……はい。ありがとうございます」
 デュースが差し出してきたのは、銀色の砂が入った小瓶で。……もしかして同じことを考えていたのだろうかと、少し笑ってしまった。

 パラソルへ戻ると、もうみんな集まっていて、それぞれに片付けが始まっていた。
「ただいま戻りました。俺たちもすぐにお手伝いします」
「おお、戻ったか。それじゃおぬしらはゴミの分別を手伝ってくれ」
「分かりました!」
 そうしてみんなで、一日中遊んだ砂浜を綺麗にしていく。そして、それぞれ手にたくさんの荷物を持って車に戻った。
「海、とっても楽しかったですね! ……あれ、先輩?」
……ぐう……
「なんじゃ、うちの息子は遊び疲れて眠ってしまったんか! まったく、昔から変わらん子じゃのう!」
「ねー、せっかくならシルバー先輩の昔の話教えてよ!」
「それなら、僕やセベクでも話せるぞ。コイツは昔……
 帰りの車では俺が真っ先に眠ってしまったので、みんながどんな話をしていたのかは分からないが、とても楽しい一日だったのは間違いないだろう。

*おしまい