山茶花
2024-09-11 20:28:01
6917文字
Public [シルデュ♀]受け女体化学パロ
 

君じゃなきゃダメみたい(9)【090GP010】

シルバーが女性の抱き方を勉強する話。

※現代学パロです。男子そのまま・女体化キャラ入り交じっています。
※独自設定が多く含まれます。
※今回はシルデュの他にマレセベ♀要素が含まれます。

↓大丈夫な方はスクロール


「親父殿、折り入ってお願いがあります」
……うむ」
 夕食時。俺は真剣に、親父殿に向けて頭を下げる。親父殿も俺の纏う真剣な空気を読み取ってくれたようで、真面目に話を聞いてくれている。……いざ、切り出そう。
「女性の抱き方を教えてくれませんか……!!」
 俺の言葉に、親父殿は机についていた肘をずるりと落とす。
「お、おお。あまりにも真剣に頼んでくるから何事かと思ったぞ。……そのくらいのことならもうちょっと気軽に頼んでも良かったのではないか?」
「いえ、親父殿。こういうことは軽んじてはいけないと思います。俺の身だけならばともかく、よそのお嬢さんも巻き込むことですから」
 ほんに真面目じゃのう、保健体育教師やっとる甲斐があるわと親父殿は呟き、それから俺に言った。
「ほんならわしも真剣に聞くが、お前……今の性知識はどんなもんなんじゃ?」
「え、ええと……
……彼女とはどこまでいったんじゃ? ん?」
「からかっていませんよね? 親父殿……
「真剣じゃ!」
 その言葉に、俺は観念して親父殿にすべてを話す。
「その、この間、彼女の家に行って……
「ほうほう!」
……その、いい雰囲気になったんですが、まだ俺も彼女も心や知識の準備ができていないというところで、打ち止めになりまして……
「いい雰囲気、っちゅうと? キスでもしたんか? そういやお前この間口紅つけたまま授業に出てきおったのう!」
「い、いえ、その! キスは、もう結構していて……
「おお! わしの想像しておるよりも息子は意外と手が早かったわい。ひと安心じゃな!」
「親父殿、本当にからかっていませんよね!?」
「何を言う! わしがこんなにも真剣にお前の話を聞いたことが今までにあったか!?」
「それは、できたら今じゃなくてもあってほしいのですが……
 まあ、あまり真面目くさって話すのも、親父殿にも照れくさい思いがあるのだろう。俺は気にせず、続けて話していく。
……彼女の身体に、少しだけ触れてしまいまして……
……下半身か?」
「じょ、上半身だけです!」
「なるほど、胸か腰でも揉んだか。それで思わず理性を飛ばしそうになったが、このままじゃいかんっちゅう気持ちになってやめた、と」
……まあ、そんな感じです」
 親父殿はふうむ、と考える。
「なんぞ大失敗でもしたんか? 柔肌に爪でも立てて傷をつけるだとか、彼女を痛がらせて泣かせるじゃとか」
「い、いえ。そういうことはしておりません。……俺が気付いた限りは、ですが」
「なら、自分でこっそりと調べた方が良いのではないか? 思春期の男子は大抵そうするそうじゃぞ?」
「それが……
 学校の図書室にはそうした蔵書はなく、また、インターネットを利用して調べてもみたものの、どんな情報が正しいのか分からず、友人たちに聞いても、どうしたら『正しい』のかは知らない者がほとんどで……
 そこまで伝えると、親父殿は溜め息をついた。
「確かに、現状おぬしのような真面目な若者が正しい性知識を手に入れる機会や場所は少ないな」
「はい。それで、恥を忍んで親父殿に相談しようと思った限りなのです」
……うむ。うーむ。頼ってくれるのは、ありがたいんじゃが……。わしもまともな女の抱き方なんて知らんぞ?」
「えっ!? ほ、保健体育の教師ですよね!?」
「阿呆! 学校教育で女の抱き方を教えるかっ! 女の身体の構造については教えてやれても、彼女の抱き方なんぞ知らんわ!」
「で、では、親父殿は今までどうやって女性の相手を……?」
「そういったやらしい目的のお店のお姉ちゃんたちならそりゃ多少は抱いたことはあるが、向こうは多少痛かろうがなんじゃろうがサービスしてくれる立場じゃぞ!? 実際気持ちいいかどうかとはまた別じゃ!」
 そこまで聞いて、俺はあることに思い至った。まさか、親父殿。あなたは――
……あの、つかぬことをお伺いするのですが……親父殿には、想い合って身体を通じ合わせた相手などは……
………………
 親父殿はそっぽを向いて黙っている。
……申し訳ありません」
「謝るんじゃないわっ! ったく、我が息子よ。青春まっただなかのお前には少々実感が湧かんかもしれんが、傍にいて身体を繋げ、恋を叶えるばかりが恋愛ではないんじゃぞ! そしてわしはそういうタイプではないっちゅうだけの話じゃ!」
「は、はい! 肝に銘じておきます!」
 そこまで言うと、親父殿は他に手立てはないか、と額に手を当てて考えた。
「ああ、そうじゃ。お前の傍には、今ものすごい熱愛をしておる人生の先輩がおったではないか。あれに聞いたらどうじゃ?」
「と、言うと……
「マレウスじゃよ。あれも一体どこで女の抱き方を覚えたんか知らんが……、少なくとも、今のわしよりはマシなことが言えるじゃろ!」
 こうして俺は、恥を忍んでマレウス様に女性の抱き方を尋ねることになったのだ。

「ほう? それでシルバー、お前は僕のところへ来たのだな?」
「は、はい……。大変な失礼は承知の上で、お尋ねしたいと思いまして」
「良い、良い。それにしても、お前がもうそんなに関係を進めていたとはな。僕へ聞きに来るにしても、冬頃のことかと思っていたぞ」
 親父殿にも似たようなことを言われたが……。俺がこうしたことを尋ねに来ることは、マレウス様に予測されていたのだろうか?
「さて、それでシルバー。女性の抱き方だったか?」
「は、はい。マレウス様はどのようにしてご存知になられたのですか?」
「ああ。セベクに聞いた」
「せ、セベクにですか!?」
……ふふ、さすがに名前を出すと彼奴に怒られてしまうだろうか。まあ、男同士の秘密ということにしておいてくれ」
「は、はあ……
 俺が照れくさくなって自身の後頭部を手で撫でると、マレウス様は続ける。
「とはいえ、僕の言っていることは冗談ではないぞ。女性の身体のことは、女性自身が一番よく分かっていると思わないか?」
「確かに、それはそう……ですね。彼女たちは自分の身体のことを、傍目に見ているだけの俺たちよりもずっとよく理解しているでしょう」
「ああ。それに、お前にとっては意外なことかもしれないが……彼女たちにだって、性欲というものはある」
「せ……っ」
「ふふ、お前は女性のことを、特に特別な女子に関しては天使か何かと勘違いして、神聖視している節があるからな。彼女たちも同じ人間なのだぞ? そうした欲はあって当たり前のことだ」
「そ、そうですよね……
 俺が顔を逸らすと、マレウス様は愛い愛い、と言って笑った。
「初々しいな。初めの頃のセベクを思い出す」
「あ、あの、あまり赤裸々な話は……
「お前は赤裸々な話をしに来たのだろう? まあ、聞いていけ。何かの糧にはなるかもしれない」
……は、はあ」
 俺が黙ると、マレウス様は続けて話し始める。
「とはいえ僕とて最初から、慣れたものではなかった。女性の身体など、どのように触れればいいかと、内心も外側も戸惑ってばかりだった」
「マレウス様でも、そうなのですか?」
「ああ。そうしているうちに、僕が戸惑っていることに気付いたセベクの方から、どんな風にしてほしいかを言葉で伝えてくるようになった」
「は、はあ……
 やはり幼馴染のことを詳しく聞くのは気が引ける。セベクという言葉をマレウス様の彼女と少し遠回しに置き換えて、マレウス様の話を聞いた。
「求められる言葉のその通りにすれば、向こうは喜んだ。向こうが喜んでくれれば、僕も心地が良かった。そして僕は学んだ。そうした行為は、女性を喜ばせるのが一番の目的なのだ、と」
「女性を、喜ばせる……
「そうだ。己の快楽に溺れず、相手を気遣い、喜ばせる。……どんなことでも変わらぬ、基本的な事項だな。それが巡り巡って、己の満足にも繋がるのだろう。僕はそう解釈している」
 なるほど。己の快楽に溺れず、相手を気遣い、喜ばせる……。そうか。それは人と接するときに、忘れてはいけない事項。それが例え、性行為の最中でも……。いや、むしろ、恋人と最も密なコミュニケーションを取るべき、そういうときだからこそ、そうするべきなのだろう。さすがはマレウス様だ。どんなことからでも本質を見抜いてしまうとは。
「それなら、俺にも出来そうです」
「ああ。彼女たちはちゃんと、自分の喜ばせ方を知っている。僕たちがしてやれるのは、それを彼女たちからうまく聞き出し、叶えてやることだけだ。少なくとも僕は今、そういう風にしている。……ふふ、思ったよりもだいぶん赤裸々に語ってしまったな。とはいえ技巧や技術などの具体的な話は出来なかったが……参考になっただろうか?」
「はい、とても。……ありがとうございます、マレウス様。本当に、感謝いたします」
「ふふ、良い良い。またお前とも男同士の話がしたいと思っていたからな。何かあれば、話しに来ると良い。こういった悩みでなくとも、ただの惚気話だって聞いてやるぞ?」
「はっ。……ありがたきお言葉、感謝いたします」
 そうして笑い合うと、マレウス様は最後に少しだけ首をかしげた。
「それにしてもリリアの奴、好いた女を抱いたことがなかったのか…………その昔、僕のお母様を好いていたというあの話は、本当だったのだろうか?」

 マレウス様から話を聞いたあと、俺は家に帰り、意を決してデュースに通話をかける。今頃は向こうも夕食を終え、風呂から上がっているくらいの時間帯だろう。こんな夜に彼女へ電話をかけるようなことは初めてだから、ドキドキとした緊張が心臓の音を囃し立てる。
 通話の文字を押したあと、呼び出し音が鳴り、音楽が途中でプツリと止まる。
『シルバー先輩!? どうしたんですか?』
「デュース……、あの、今、時間はあるか? 話したいことがあるんだが……
『はい、大丈夫ですよ。何かあったんですか?』
……いや、その……実は……
 今日はお前と、いつかえっちなことをするための勉強をしていて、と言うと、デュースは電話口できゃっ、と小さく声をあげた。
……すまない。なんというか、そういうことばっかり考えているとは思わないでくれ。ちゃんと知識を得るべきだと思ったから、勉強しようと思って……
『だ、大丈夫です! 分かってます! 先輩真面目な人だもん、私とのことも真面目に考えてくれたんですよね!』
「あ、ああ。それならいいんだが……
『それで、その……何か、分かりました?』
「ああ。一応、その報告をした方がいいかと思って、電話したんだ。……その、いろいろな人に話を聞いてみたが、一番はやはり女性が喜ぶことをしてやることだという結論だった」
『女性が、喜ぶ……。男の人の方は、いいんですか?』
「男の方?」
『わ、私も実はあの後気になって、インターネットとか使ってちょっとだけ調べてみたんですけど……。男の人も気持ち良くなれる方がいい、みたいなこといっぱい書いてあって』
「一般的な考えとしてはそうかもしれないが、俺のことなら、あまり気にしなくても大丈夫だと思う」
 ……この間、柔らかな肌に直接触れてるだけでも相当気持ち良かったしな……
『で、でも……。私、するならやっぱり、自分ばっかりじゃなくて……。二人で、気持ち良くなりたいです』
「それは、その、ええと……。ああ、そうだ、その、今日話を聞いた方によると、『女性を心地良くすることが、巡り巡って男の満足に繋がる』ということだったから……
『そ、そうなんですか? 私が気持ちいいと、シルバー先輩も気持ちいい、ってこと……?』
……俺にも正直、どういう意味かまだ具体的にはよく分かっていないんだ。これはたぶん、実際のところになってみないと分からないんじゃないだろうか」
『実際……
 そう言って黙ってしまうデュースの表情を思い浮かべる。きっと電話の向こうでは、照れて、赤くなってしまっているんだろうな。
「ま、まあまだしばらくは実際のところまでは行かないだろうから、安心してくれ」
『そ、そうですよねっ! まだ、しばらくは……
 そのデュースの声が残念そうな気がして、俺はマレウス様に言われた言葉を思い出す。『お前は彼女のことを天使か何かと勘違いして神聖視している節があるが、彼女たちだって同じ人間であり、そうした欲もあるのだぞ?』……そう、なのだろうか?
……もしかして、残念なのか?」
『い、いえっ! そんなことはっ!!』
「正直になれ。別に引いたりしない」
……ちょ、ちょっとだけ残念な気持ちもありますけどっ、でもちゃんとお勉強してからの方がいいのは確かですからっ!』
 ……やっぱりちょっと残念だったのか。本当に、欲とかあるんだな。
「ほんとに、女でもそういうこと考えるんだな……
『きゃっ、今のは違って、その……っ!!』
 慌てるデュースに、俺は少しだけ安堵を覚える。
「いや、いいんだ。それこそ、俺の独りよがりじゃないと分かって、……少し、安心する」
『そ、そうなんですか?』
 俺は窓を開け、星を見上げる。こんな話をしながら考えることじゃないかもしれないが、夜空の星はなんだか煌めいていて、とても綺麗だ。
「ああ。お前をこんな風に求めているのが俺だけの一方的な気持ちじゃないんだと分かって、安心する」
『ふふっ。それなら良かったです。ちょっと恥ずかしいけど……私だけじゃなくて、先輩だって安心できた方がいいですもんね!』
 デュースも、俺の言葉を聞いて笑ってくれたようだ。今日の報告は、このあたりでいいだろう。
「そういえば、デュース。話は変わるのだが、今、空を見られるか?」
『空、ですか?』
「ああ。……今日の星が綺麗だから、お前と見上げられたら、と思った」
『本当だ、綺麗……
 デュースも電話向こうで同じように星を見上げてくれているみたいで、嬉しくなる。違う場所にいても同じ空の下に同じ星を見られるというのは、どんなに幸運なことだろうか。
「それじゃあ、また明日――
『あ、ま、待ってください、先輩。その……
 電話先で、ちゅ、とリップ音が鳴る。
「今のは……?」
『そ、それじゃあ、ま、また明日……っ』
 電話を切ろうとするデュースを急いで呼び止める。
「待ってくれ、デュース。……俺からも返したい」
 そう言って、通話口で唇に指を当て、ちゅ、とリップ音を立てる。
「おやすみ、デュース。また明日」
 通話が切れるのを待っていれば、小さな声でデュースが言った。
『もう、先輩、ずるい……。こんなの、通話切りたくなくなっちゃうじゃないですか……
「お前が先にやったんだろ? 俺も切りたくなくなった。お返しだ」
 そう言ってからかえば、デュースはもう、と怒ってみせる。
「それなら、もう少しだけ話しているか? 俺が先に眠ってしまうかもしれないが……
『い、いいんですか?』
……お前さえいいのなら。俺は、お前の声を聞いていたい」
 そうして窓を閉め、俺はベッドに座りながらデュースと通話を続ける。
『えへへ……
「嬉しそうだな」
『なんだか、こうやってると彼女みたいって思って』
「彼女だろ」
『きゃー! そうですよね、そうなんですよね!』
「夜まで元気だな、お前は」
『先輩は眠たいですか? 声がちょっと眠たそうな感じします』
「ん……、少しだが、眠気は来ている。恐らくだが、このまま眠ってしまうかもしれない。そうなったら、通話は切ってくれていい」
『ふふ、そうなったらしばらく先輩の寝息聞いちゃうかも』
「かまわないが、そんなもの聞いて、楽しいのか?」
『だって、そしたら先輩が横で眠ってるみたいな気分になるじゃないですか!』
「添い寝くらい、本当にすればいいだろう。この前みたいに
『あ、この前……
……ああ。ちょっとえっちなことした、この前だな……
『も、もう! 思い出しちゃったじゃないですか!』
「思い出したら、何か……まずいのか?」
『だ、だって、この前私のベッドで……っ、も、もう! 眠れなくなっちゃうじゃないですかっ!』
「ふっ、なら、もっと眠れなく、して、しまおう、か……
 言葉とは裏腹に、俺の身体には結構な眠気がやってくる。
『シルバー先輩? 眠くなっちゃいましたか?』
「ん……
『ふふっ。眠っちゃってもいいですよ?』
「デュー、ス…………すう……
『あ、寝ちゃった…………ふふっ、おやすみなさい、シルバー先輩』
 そのうちにやはり先に眠り落ちてしまい、本当にしばらく俺の寝息を聞くことになったとデュースから話を聞いたのは、翌朝のことだった。

*おしまい