inte9rer
2024-09-11 17:21:58
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『異世界より、君に一目』第八話

 釜石を賭けて、八幡とのゲームを持ちかける三井鉱山。
 ゲームの舞台はテキサスポーカー、二対二のチーム戦が始まる!

 ポーカーのルールは……こちらのサイト(https://mpj-portal.jp/forbeginners/beginner-about/)などをご参考下さい。

「ゲームって言っても……まずはルールを言わなくちゃ、始まらないよな?」
 鉱山は金庫を下ろすと、トランプの山札を切り始めた。
「折角だから……チップありのトランプゲームをしようぜ!」
 すると戸畑が椅子の下のカバンを取り出して、チップコインのケースを机の上に出した。
「そう!ここは10ラウンドのテキサスポーカーのチーム戦で勝負ですよ!八幡!」

「八幡……私はルールを知っているので構いませんが、貴方は大丈夫ですか?」
 二瀬の目線に一瞥すると、八幡は鉱山の方を睨んだ。
「ポーカーをするのは構いません、が、先にそのトランプを確かめさせて下さい」
 その言葉に、鉱山はニヤリと笑って、切っていた山札を大人しく差し出した。
「イカサマの確認か?別に、いくらでも見ていいさ……
 八幡がめくるトランプの札を二瀬も注意深く覗き込む。しかし、真新しい様子のカードには折り目一つなく、そして絵柄にも異常は見つからない。
 二人の様子を見ながら、戸畑は腰に手をついて不敵に笑っている。
「無駄ですよ〜!イカサマなんてしなくたって……結末は決まってるんですからね!」

「貴方がたがルールを決めるなら、我々からも一つ条件をつけさせて下さい」
 ついに怪しい箇所を見つけられなかった二瀬は、鉱山の方を見て提言した。
 八幡が驚いたように二瀬を見る。
「ほう?ま、言ってみな」
「ラウンドの開始時に山札を切ること、そして、山札から手札を配って、場の五枚のカードをめくること……それはこの私にやらせて頂きたい」
 その内容に、戸畑がム、と眉間にシワを寄せた。
「えぇ?狡いですよ、そんなの!普通はディーラーによる交代制でしょう!」
 しかし不満げな戸畑の様子とは裏腹に、鉱山はへへへ、特徴的な声をあげて笑った。
「いやいや、別に……このおじさんが山札に触るのさえ怖いってんなら、構わないぜ?」
「んむ〜」
 戸畑は納得いっていないようだったが、言い返す言葉もないのか、大人しく椅子に座った。
 二瀬は八幡の方に手を差し出す。
「八幡……勝手に差し出がましい申し出をしてしまい、すみません。ですが、彼らが山札に何かを仕込んでいて、貴方に被害が出ると困りますから」
「はぁ?山札を引いたくらいで出る被害ってなんですかぁ?めくったら爆発しちゃうカードとかですか!?」
「おいおい、どんだけ、おじさんのこと信用してないんだよ、二瀬!」
 二瀬の言葉に敵方二人が文句をつける。しかし、八幡は真剣な顔で二瀬に山札を預けた。
「えぇ、二瀬……絶対、私達が勝って、釜石を連れて帰りましょう!」

「山札は二瀬担当なら、ディーラーは八幡から行こうか!」
 鉱山が迎賓室の戸棚からガラスで作られた、面取りで形どられたうさぎの彫像を取り出す。それを八幡の方へすべらせたると、分厚いニスで覆われた机の上を滑らかにすべっていった。天井に吊り下げられたシャンデラを反射して、彫像の周りにプリズムがまばゆく。これがディーラーを指し示すマーカーということだろう。
「最初のチップは……100でいかせて下さい。そして参加費金額は5でスタートです。どうせ掛け金が無いなら、計算が一番簡単な最小単位のほうが良いでしょう」
 その言葉に、戸畑がチップコインを配った。二瀬も山札を切って、それぞれ二枚の手札を配りだす。
「ディーラーの順繰りは八幡から時計回り、次は二瀬、三番目におじさん、最後に戸畑……それでOKかな?」
 八幡と二瀬はほとんど同じタイミングで頷く。それを確認して、鉱山は席についた。

 
 
 手札を配り終えた二瀬が、手札に手を置いて宣言する。
「では、ラウンド1を始めましょう」

 八幡はその開始の宣言と同時に自身の手札をとって確認する……
 ♤のK、♧の10。Kがある分、ペアであれば強く出られるし、ストレートの範囲である。
「さーて、参加費徴収の時間だ……参加しないやつはいるかね」
 ディーラーの横に座る二瀬と三池がブラインドベットであるの5ドルのチップを出した。戸畑も同額のチップ、5ドルを場に置く。
 しかし、八幡は一人10ドルを置いた。
「私は倍額、レイズです!」
 自分の手札は中々強く出られる自信がある以上、資金的に余力のあるうちに賭け金を上げておきたい。
 鉱山が驚いたように口笛を鳴らす。二瀬は少し眉間をシワを寄せたが、しずかに八幡と同額、10ドルになるよう5ドルのチップを置き、コールした。他の二人もすぐさまコールで追加のチップを置く。
 チップの合算は40、二瀬が机の中央の山札の横にチップを置いた。その反対側の中央に三枚のカードを置いて、めくる。
 役づくりの基本となる最初のコミュニティカードは……
 ♧の9、♢の10、♧の2だ。
 八幡の役に10のワンペアができた。すかさず八幡が5ドルのベットを置く。しかし、二瀬はチップの代わりに手札を机に置いた。
「私はドロップです……
 どうやら手札が相当悪かったのか、このラウンドでは投了のようである。
 その横で、鉱山がコールのチップを置きながら八幡を見た。
「おぉっと、不吉だねぇ……そういえば、一つ言ってなかったルールを追加してもいいか?」
 八幡の顔が険しくなる。
「警戒しなくていいぜ、チップの計算に関する話だ……チーム戦だとは言ったが、チップの計算はあくまで一人で行う。チーム内での合計はなしだ」
「つまり、集めたチップは、最悪"渡す"必要があるというわけですね……えぇ、構いませんよ。元より、私が一位になるつもりですから」
 掛け金を集めて、ドロップで金を保守して逃げても、二位になってしまっては意味が無いということか。しかし、今更八幡にはそんなことは関係無い。二人を会話を他所に、戸畑もコールのチップを置く。
 チップの合算は55、二瀬が再びカードを一枚めくる……
 ♤の5。
 しかし強気の八幡はパスをせずベットする。他の参加者二人の意思も変わらない。5ドルのチップが3人分、ポッドに溜まったチップの合算は70、二瀬が再びカードを一枚めくる……
 ♤の10。
 やはり、すぐに5ドルのチップが3人分集まった。鉱山が八幡に楽しげな目線を送った。
「最終的なポッドは85ドル。では、ショーダウンです」
 場に出たコミュニティカードは♧の9、♢の10、♧の2、♤の5、♤の10、プレイヤーのカードは……
 八幡が♤のK、♧の10で、10のスリーカード。
 鉱山が♡の10、♤のJで、10のスリーカード。
 戸畑が♢の9、♧の6で、9と10のツーペア。
「八幡と鉱山が10のスリーカード、しかし……
「言わなくても分かってるさ。Kのある分、八幡の勝ちだな」
 二瀬の言葉も待たず、鉱山は自身の手札を山札へ返した。素直なその態度に二瀬は少し面食らいながらも、ポッドのチップを八幡へ渡した。
 自身の強気の賭け金を上手く回収できた八幡は嬉しそうにそれを受け取った。
「まずは私と二瀬で一位と二位ですよ!さぁ、早く次の試合を始めましょう」
 その様子に、鉱山も笑顔で頷く。
「へへ……最初っからスリーカードとは、幸運で景気が良いねぇ!面白い試合になりそうだぜ」
 
 ラウンド2、二瀬が山札を切って、再びプレイヤーに手札を配った。ディーラーは二瀬だ。
 八幡のカードは……♢の2、♧の5。思わず心中で嘆息する。柄はあっていないし、数字も弱い……。ストレートの範囲ではあるが。
 しかし、他の四人も強気に出られる手札ではなかったようだ。ブラインドチップからコール無し、5ドル4人分がポッド集まる。
 二瀬が最初のコミュニティカード三枚をめくった。
 ♧の6、♤の9、♤のJ。
 悪い……八幡の手札からは何もつながっていない。ストレートも望み薄だろう。
「私はパスです、八幡は?」
 二瀬が八幡に目線を送る。八幡は眉を上げた。
「すみません、私はドロップです」
 こんな手札では、試合を投了した方が得だろう。戸畑が不満げな声をあげた。
「え〜!ちょっと!大金の抱え逃げですかぁ!?」
「おぉ、悲しいね、じゃあおじさんのベットをやろう」
 鉱山が5ドルを出す。しかし、戸畑が出したのは、10ドル、レイズだった。
「ふふ〜ん、僕は二瀬や八幡と違って、自信がありますからね!」
 二瀬はいつもの淡白な無表情で戸畑を一瞥すると、黙ってコールのチップを出した。しかし、鉱山は肩を落として手札を置いた。
「おいおい、戸畑ぁ、随分ノリノリだなぁ、じゃあおじさんはやっぱり降りたほうがいいかな」
 ドロップらしい。ポッドに集まったのは、45ドル。四枚目のコミュニティカードが出る。
 ♧の3。
 ディーラーの二瀬は再びパスを出した。戸畑のレイズを潰すためだろう。戸畑が5ドルを出し、二瀬もコールで従う。
 五枚目のコミュニティカードが出る。
 ♤のK。
 二瀬はしばし思案していたが、5ドルをベットした。すると、戸畑は嬉しそうにレイズの10ドルを出した。
「さぁ〜二瀬!ドロップか、それともベットか選びなさい!」
 戸畑の言葉に、再び二瀬は彼をの方を見てしばらく黙っていたが、チップを置いた。
「コールです……さぁショーダウンしましょう」
 八幡が心配そうに二瀬を見るが、彼はやはり、いつもの無表情を貫いていた。
 最終的なポッドは75ドル。場のコミュニティカードは♧の6、♤の9、♤のJ、♧の3、♤のK。
 プレイヤーのカードは……
 二瀬が♤の3、♤の2で、♤揃いのフラッシュ。
 戸畑が♧のJ、♢のKで、JとKのツーペア。
「二瀬、あぁッ……よく勝ちましたね!」
 嬉しげな八幡の声の横で、戸畑が絶句した。二瀬は微笑んでポッドのチップを回収する。
「へへ、最初の♤二枚揃いからの粘りがちだな……最初の戸畑を調子づかせてレイズさせたわけだ」
 鉱山が大仰な拍手をした。八幡はやる気たっぷりに鉱山たちを見る。
「さぁ!私達の連勝でさい先も上々、このままじゃあ10ラウンドも行かないんじゃないですか!?」
 八幡の挑発に、戸畑がうぐ〜ッと悔しげなうめき声をあげる。しかし、鉱山はただ黙って楽しげにニヤニヤするだけだった。

 ラウンド3、手札が配られる。ディーラーは三池だ。
 八幡の手札は……♧のK、♡の7。
 Kが来たのは幸運だ。ストレートには繋がらないが、ペアがくれば中々弱くない手札である。しかし、鉱山は手札をめくると、すぐにそのまま机の上に置いてしまった。
「おっとっと……あぁ、残念ながら、おじさんはもうドロップだなぁ」
「ちょっと!三池!何弱気になってるんですか!」
 相方の戸畑は鉱山をなじりつつも、そのままベットを置いた。八幡ら二人もそのままコールでベットする。今回のラウンドの参加者は三人のようだ。
 コミュニティカードの三枚が場に出る……♢の6、♢の5、♤のQ。
 良くない、八幡のカードにはほぼ繋がっていない。だが、戸畑のベットしたのを見て、八幡も五ドルのチップを出した。
 二瀬がコミュニティカードの四枚目をめくる……♢の10!
 そして、やはり戸畑がベットのチップを出した。
 八幡は眉間にシワを寄せたが、しばし思案して、コールのチップを出すことにした。その姿を見て、二瀬が手札を机に置いた。
「私は……ドロップです。すみません……
 二瀬の不安げな目線の意味は八幡にも分かる……つまり、次のターンでドロップすれば、必然的に戸畑の勝ちだ。しかし、今もっともチップの少ない戸畑をここで追い詰めて、いち早くゼロに追い込みたい気持ちもある。
 戸畑が五枚目をめくった……♧の7。
 八幡の手札に7のワンペアが確定する。戸畑は鼻を鳴らして、平然とベットした。
 思わず、八幡は悩む。ワンペアでは不安が残る。コミュニティカードに♢が三枚出ている以上、戸畑が♢のフラッシュを持っている可能性もあるのだ。
 しかし、自分の資金に余裕があるならばどこまでも攻めの気持ちでいるべきではないか?臆せば敗れるのが勝負の哲理だ。であれば、ここはレイズだろう。10ドルのチップを出す。
「八幡〜!僕を侮らないで下さい!」
 八幡の強気な態度を見ても、戸畑は臆さずに10ドルを置いた。ここで負ければ彼は20ドル、オール・インせざるを得ない圏内に入る。
 二瀬が目を丸くして戸畑を見る。鉱山は困ったように笑った。
「おいおい……戸畑ぁ、お前……
 そして、戸畑は自分の手札を場へ表に置いた。
「さぁ、八幡〜ッ!ショーダウンです!」
 最終的なポッドは60ドル。場のコミュニティカードは♢の6、♢の5、♤のQ、♢の10、♧の7。
 プレイヤーのカードは……
 八幡が♧のK、♡の7で、7のワンペア。
 戸畑は……♡のQ、♡の3で、Qのワンペアだった。
 戸畑の勝ちである。鉱山が口笛を鳴らした。
「おいおい戸畑ぁ!よくワンペアで勝負に出たなぁ!」
「ふーん!これが僕の勝負勘ってやつですよ!」
「あぁうん、お前はホントに久原の子どもだなぁ〜」
 戸畑は鉱山に背中をポンポン叩かれながら、上機嫌でポッドのチップを回収していった。
「気落ちしないで下さい、八幡……まだまだ我々二人の勝ちですから」
 二瀬は、悔しそうに拳を握る八幡に言葉をかけると、再び山札を切った。

 ラウンド4……再びディーラーになった八幡の手札は、♡のQと♡のA。
 絵柄が揃っており、なおかつ数字もストレート範囲の上にかなり良い。5ドルのベットが一巡する。ドロップはいないようだ。二瀬がコミュニティカードをめくった。
 ♧のQ、♡の7、♧の5。
 八幡の手札にQのワンペア。かなり高い点数だ。これは自信がある。
 その勢いで八幡は5ドルのベットを置いたが、二瀬がドロップした。どうやら二瀬はとことん自身の金額を保持していく作戦らしい。鉱山と戸畑はそのままコールでベットし、四枚目のコミュニティカードがめくられた。
 ♢のA。
 来た!これで八幡の手札はQとAのツーペアだ。ペアの中ではこの上なく良い役である。鉱山と戸畑がベットを回してくると、八幡は自身の5ドルのベットのその上に、さらに5ドルを乗せた。
「リレイズです!」
「ほぉ?」
 鉱山はニヤリと笑ってコールする。戸畑もそれにならった。どうやら他の二人も中々強気らしい。
 四枚目のコミュニティカードをめくる……♡の10。
 八幡が再びリレイズの心持ちで5ドルをベットすると、鉱山がなんと10ドルを出した。
「レイズだぜ。へへ……さぁ、今回もリレイズするかい?官営様よ!」
 八幡はしばし考え込む。フラッシュもストレートも、今回のコミュニティカードでは作れない。鉱山がAのペアを持っているとしても、自分にはQのペアがある。
「勿論、リレイズですよ!」
 自信げに八幡が20ドルを置いた。鉱山も満足げに口角を上げて20ドルを置く。
 戸畑が、若干恨みがましそうな目で八幡を見て、彼も10ドルを出した。鉱山が呆れたように戸畑を見る。
「おい戸畑ぁ、おんなじチームなんだから、俺が残ってる試合はドロップしたって良いんだぜ……
「嫌ですよ!ドロップなんて、試合に参加できないのが一番つまらないじゃないですかぁ!」
 ムスーっとふくれる戸畑を見て、二瀬がうなだれた。どうやら戸畑にはパスもドロップも選択肢には無いらしい。彼には絶対、賭け事をやらせるべきじゃない……。気を取り直して、宣言した。
「では、ショーダウンです」
 最終的なポッドは125ドル。場のコミュニティカードは、♧のQ、♡の7、♧の5、♢のA、♡の10。
 プレイヤーのカードは……
 八幡が♡のQ、♢の10で、Qと10のツーペア。
 鉱山が♡の5、♢の5で、5のスリーカード。
 戸畑が♢の9、♤の7で、7のワンペア。
 ……鉱山の勝利だった。鉱山が笑い声を上げてポッドの大金を回収する。
「へっへ……おぉ!ありがとよ〜八幡!これで俺が一位なっちまったなぁ!」
 チップの合計は、鉱山が150ドル、二瀬が125ドル、八幡が90ドル、そして戸畑が40ドルであった。
 八幡はしばしショックを受けていたようだが、すぐに首を振って気持ちを切り替える。まだまだラウンド4なのだ。覆せない差ができたわけではない。二瀬も八幡に目を合わせてうなづく。

 ラウンド5、八幡の手札は……♡の8、♡の2。
 微妙だ。フラッシュを狙えるが、ペアができても強いとは言い難い。
 二瀬からベットが始まる……。しかし、鉱山が早々にドロップした。
「あぁ、おじさん、ちょっとついてないなぁ」
「鉱山〜!貴方がそうやって降りると、僕が降りられなくなるんですけど〜ッ!」
「ごめんなぁ、でもおじさん、負けたくないから、本気でやってるって約束するぜ」
 不満げながらも、戸畑は参加料の5ドルを出す。八幡も5ドルを出して、二瀬がコミュニティカードを場に出した。
 ♢の6、♤の8、♢のK。
 八幡の手札に8のワンペア。悪くない。二瀬のベットに、戸畑も先程の不満顔が少し晴れた様子でコールした。どうやら、彼の手にもそこそこの役の気配があるようだ。八幡もコールして、場が一巡すると、四枚目のコミュニティカードがめくられる……
 ♧の8。
 これで手札に8のスリーカード……八幡は力んで思わず眉間にシワが寄った。二瀬のベットに、今度はレイズで10ドルを出そうと意気こんでいると、先に戸畑が平然とした顔でレイズの10ドルを出した。二瀬がその様子に黙って横目で見る。八幡も思わず警戒した……今度こそ♢のフラッシュ狙いだろうか。しかし、ここで降りるのは癪だ。八幡も10ドルを置いた。五枚目の四枚目のコミュニティカードは……
 ♢の8!
 八幡の手札にフォーカード!間違いなく、自分の手にもっとも強い役ができていることが確定した。八幡は考え込む……ここはできるだけ平静を保って、自信のありそうな戸畑のオール・インを誘うのが一番いいだろう。
「おおっとぉ、場に8のスリーカード!景気がいいねぇ……
 ドロップして観戦に徹する鉱山が楽しそうに顎を撫でた。
 八幡の読み通り、戸畑は二瀬の5ドルにレイズし、10ドルを置く。二瀬はしばし思案して八幡の方を一瞥し、コール、合計10ドルを置いた。
「レイズです!」
 そこへ八幡は20ドルを出した。二瀬が驚いたように目を丸くする。戸畑は鼻を鳴らした。
「ふ〜ん!八幡!この僕をオール・インさせたいってんなら、勿論、受けて立ちますよ!」
 戸畑が20ドルを置いた。これで彼の所持チップは0枚。これで負ければ、彼の敗退が決定する。
 横の二瀬は苦い顔をして、手札を机に置いた。ドロップのようだ。八幡は二瀬に目線をやる。
「安心して下さい。二瀬……さぁ戸畑!ショーダウン!」
 最終的なポッドは125ドル。場のコミュニティカードは、♢の6、♤の8、♢のK、♧の8、♢の8。
 八幡が♡の8、♡の2で、8のフォーカード。
 戸畑は……♡のK、♤の9で、Kと8のフルハウス……当然、八幡の勝ちだった。
 鉱山がため息をついて、首を振る。
「あーあーあ、まさかフルハウスの上のフォーカードが出ちまうとはな。運が悪いぜ」
「八幡ッ……あぁ、良かった……
 二瀬が胸をなでおろす。八幡は誇らしげにウインクを返した。
「言ったでしょう!安心しなさいと!」
 
「うッがあぁああぁ〜ッ!」
 敗れた戸畑が両手を机について項垂れる。鉱山が眉をあげて彼の背をたたく。
「おうおう、かわいそうに……ひどい兄貴分だぜ、八幡も……弟分の破滅が確定してるってのに、レイズするなんてよ!」
「うゔ〜ッ!み、い、け!」
「うおぉッ!?」
 戸畑が涙目で鉱山に抱きついた。
「貴方!負けたら、絶ッ対、許じまぜんがらぁ〜ッ!」
 鉱山は面食らいながらも、うめき声を上げて泣くその小さな背中を撫でてやった。
「おう、任せとけって……
 
 ラウンドは6で折り返しに入り、現在のチップは、八幡が160ドル、鉱山が150ドル、二瀬が95ドルである。
 鉱山は、八幡の目を見て、不敵に笑った。
「戸畑!お前の仇は、この俺様が取ってやるよ」