ろころころ
2024-09-10 17:28:45
3426文字
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交流短編(ねここさん宅 🌐🎹さん)

カツ丼の流れで度々エターナルシティに姿を現すようになった🌐🎹さんとすれ違ったアルバートと🌐🎹さんをルパンと銭形警部のノリで追い回してるレオンの話


昼のシティは賑やかを超えて最早騒々しい。昼間でありながらチカチカと点滅するネオン、ショップから流れる数々のBGM、信号が赤を照らせば乗用車がエンジンを鳴らし、若者の嬉声と怒声が混ざり合い、それら全てが結局して生み出すのは唯の雑音。アルバートはこの統一性の無い雰囲気が好きでは無かったが、この街で活動している以上、任務であれど買い出しであれど此処へ足を運ばねばならない事実が変わることは無かった。
先日の任務はそこそこ激しい活動内容を要求されたため、任務以外にも普段使いしていたウエストバッグのファスナーの引手を焦りで力任せに引っ張ってしまった。その結果、引手の部分のみが抜けてしまい開閉が出来なくなってしまったのだ。こうした任務時による私物の故障や破損は保証制度が効く為アルバート自身で支払う必要は無いのだが、街へ買いに出ねばならぬのは変わらない。何時任務に呼び出されるかわからないため時間に余裕のある時に買い替えねばならず、渋々寮の自室から重たい足と体を半ば引き摺りながら出てきたと言うわけだ。

ロック調のBGMが耳にキンキンと響き渡る中靴屋の前でアルバートは妙な服装の男が前から歩いて来るのを目にした。白いフード、怪しい仮面、長い前髪と横髪は黒でありながら所々青がかっておりローブのような装飾の多い白い衣服。一瞬、コスプレイヤーか何かかと思ったが、それにしてはその男の放つ雰囲気が何処か異端なものに感じた。その間にも男もアルバートも足を進めるため、二人の間の距離は三メートル、二メートルと狭まる。休暇中とはいえアルバートは救助隊員、街の平穏を守る為不審な者は徹底的に調べ上げねばならない。もう少し近くで見極め、あわよくば捕まえてやろうと思い、漸く二人の間が一メートル程になったその時。

『ごめんなさい、トト。私の身勝手を許して。……でも、私は信じているわ。貴方は小さく残った火種のように、何時かは大きく燃え上がれるような強い子だって』
…………っ!」
警戒に気づかれぬよう俯きながら男との距離を縮めていたアルバートの耳に、突如懐かしい声が聞こえる。

『トトお兄ちゃん!次は何して遊ぶ?』
『俺、大きくなったらトトお兄ちゃんみたいに小さい子達の面倒見るんだ!その時は、トトお兄ちゃんも一緒に遊んでやってあげてよ!』
『アルバートは、賢くて良い子だねぇ。お前なら、この世界の何処かで助けを求めている人のことだって救える。私達はそう信じているよ』

『あつい、いたい、こわい、………たすけて、たすけて、たすけて
『いやだ!しにたくない!いやだよぉ!あぁいやだ……トトおにいちゃんたすけて!』
………どうか、お前だけでも逃げておくれ私達の代わりに、助けを必要とする子供達を助けておくれ………お前ならなれるさ…………………
…………愛しているよ、アルバート』


……………あ」
嗚呼、みんなが助けを求めている。行かなければ。行かなければならないのに、炎が道を阻んで、瓦礫が崩れ落ちて………足が竦んで視界が揺らいで……助けに行くことが出来ない。

『トト!エステル!君達だけでも逃げるんだ!早く!』
『俺達の役割は、常に仲間より前に出て仲間を守ること。お前らが無事生きて帰ってくれるんなら、俺達にとっては任務大成功ってわけさ。お前たちが無事帰り着いた暁には、任務の成功を祝ってくれよ?』
『トトくん………私、どうすれば良いですか……私は皆さんを治すことが役割なのに何も出来なかった…………助けにも行けなくて……逃げて見捨てて……こうして今更遅い後悔を繰り返して……どうして、私なのでしょうか、どうしてこの力を持つのが、私なんかなのでしょうか!どうして!』

…………………………
知っている声、知っているけどもう聞くことの無い声。彼らは決して恨んでいない、誰のことも助けられず、ただひたすらに逃げて、逃げた先でも逃げようとした自分のことを、何一つ恨んでいないのだ。寧ろ恨んでくれれば楽だった。自分は悪者だからと何をしたって許されるのに。彼らは命を懸けてでも何時だって、アルバートに救世主のバトンを繋いできた。だから逃げることなんて出来ない、放り投げることも出来ない。アルバートという青年は何時だって受け継がれた命(めい)に縛り付けられ、清く正しい救世主でいなければならないのだ。

────── どうして何時も自分なのか。何故自分なんかが選ばれてしまうのか。
アルバートは立っていられなくなり、気づいた頃には両膝を地面に着け座り込んでいた。人々はそんなアルバートの姿に対し奇妙なものを見るかのようにちらりと視線を送っては、その場所を敢えて避けるようにして通り過ぎて行く。


その後、重たい首を動かし後ろを見たが、もうその時にはローブの男の姿は何処にも見当たらなかった。













………なるほどねぇ」
男は遠くで蹲る青年をフードの影から目にし、ボソリと呟いた。こんなにも人が溢れかえっていふのにも関わらず、青年の周囲だけは半径一メートル程の円形の空間が出来上がっている辺り世の中の無情さを流石の男も感じざる負えなかったのかもしれないし、ただ青年が”何”に見えたのかを察しただけかもしれない。
そして再び歩みを進めようとする男の視界に、何かが飛び込んできたかと思えばそれは男の頬に突き刺さる。とりあえず最初の感想としては痛い、そしてその次に抱いた感想は甘い匂いがする、そして最後に抱いた感想はベタベタする、であった。
「や──っと見つけましたよこのカツ丼タダ食い男!人の金で食べるカツ丼はそんなに美味しかったですか!?私は焼肉の方が良いと思います!はい論破!」
「やぁスパイ君、きみってもしかして実はそこそこ暇?」
「貴方を追ってるので暇じゃないです。怪しき仮面男を追う任務……なかなかロマンの詰まった警察って感じしません?」
「確かにロマンはあるかもしれないね。けれど果たして、そのロマンは本物なのかな?」
「なんです、貴方の姿が仮面男じゃないって話ですか?……ええ私はまだ許してませんから私が有意義にサボっていたところをマッチョなキキュイさんの姿で邪魔してきたのは
「ただきみの恐怖の対象がマッチョなキキュイさんだったってだけじゃないかな?」
仮面の男はベタつく頬を拭い、そういえば先程の攻撃の正体を探ろうと諜報青年の手元に目を移す。
「きみ、また買ったのか。懲りないねぇ」
「なんですか!これは初めてですよ!フルーツ飴って看板があったのでシャインマスカット飴を買いましたが………だから!なんで皮が着いてるんですか!恰も果物専門ですって顔しながら最も美味しい形で売られていないなど有り得ないです!果物への侮辱ですよ!侮辱罪で訴えてやります!」
「そもそもシャインマスカットって皮ごと食べるマスカットって意図で開発された品種だから、その言い分こそシャインマスカットに対する侮辱に値するんじゃない?」
「巫山戯た格好してるくせに最もなことで返さないでください!」
ぎゃあぎゃあ騒ぎ立てる落ち着きのないスパイを他所に、そういえばと男は振り向くと、先程の青年は自分を探しているのだろう辺りを座り込んだまま怯えた様子で見渡していた。嗚呼、可哀想に。そう呟いたのは果たして本性か、形だけの言葉か。
「ちょっと聞いてます!」
「あの子ってきみの知り合いだったりするのかな?」
「はぁ?いきなりなんです……うわっカマトト野郎じゃないですか。何してるんですかあんなところで
そう言いながらも、自称有能警察官は早足で座り込む青年の元へ駆け寄った。
顔見知りが自分の元を離れていったところで、男はまた歩みを進める。任務を放棄してまで友人の元へ駆け寄る等、何だかんだで随分お人好しなことだと男は呑気に鼻歌を歌う。あのお間抜けな警官はまた男の逃避術に嵌ったことに後々文句を付けに来るのだろう。


警察の彼が青年の元にたどり着いたのだろうか、後方から声が聞こえる。

「ちょっと貴方何してるんですか!ダルマの真似なら家でやってください。通行の邪魔です。早く退かないと貴方の隊員名が風に飛ばされたカラーコーンになりますよ?」

前言撤回。いやちょっとそれは酷くないか、と仮面の男は思った。


END