ダベミ
2024-09-09 22:46:01
2431文字
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チャーハン大捜査線 夢小説?〜新人刑事編

なんでできたのかは謎

中野華子中野華子中野中野私は中野華子。今日から警視庁チャーハン課に配属されることが決まった、新人刑事だ。

チャーハン課といえば、風のうわさによれば素晴らしい功績があり、この街の様々な未解決事件を解決に導いてきたらしい。
そんな場所に自分が配属されるなんて、夢みたいな話だ……

早速指定された場所に行くと、大柄な男性が1人、こちらに背を向けて何かを食べている。この匂いは───香ばしい醤油とごま油のフレグランスがふわりと漂って私の胃を刺激する。
間違いない、これは一級品の……!と思ったところで、
ぐぎゅるるる。
私のお腹が突然鳴ってしまった。

「あっ……!」

思わず悲鳴にも似た声を上げてしまう。

「ん?」

男性はこちらを振り返った。大きな眼鏡が特徴的だ。

「貴方は……いや、もしかして、今日から配属されるっていう新人か?」

私の服装を見てすぐ察したその人が言った。ということはこの人が、伝説の刑事!

「はい!本日付で配属されました、中野華子です!お会い出来て光栄です、関太さん!」

「はは、よせ。俺は大したことのない、ただの刑事だぜ」

その人が……関さんが遠慮しがちに言った。けれど知っている、この人こそがチャーハン課のエースだと。
私の頬も中華鍋の油みたいに熱くなってきた。

「ところで腹でも空いてるのか?いい店を知ってるんだ。部下と合流がてら、そこに向かうとするか」

「えっ、でも……

「ああ、張り込みしてたんじゃないかって?違うよ」

ふっ、と笑って、関さんは言った。

「日課の、チャーハン摂取だ」

両手には皿とレンゲ、そして更には半分くらいに減っていたが、確かにチャーハンが盛られていた。
全く、この人はほんとに根っからのチャーハンバカだ。
とても美味しそうに見えたが、冷めないうちにぺろりと平らげた関さんは、にこやかに笑いながら私を別な場所に連れて行った。

「あ、関さんどこ行ってたんですか」

「ははは、すまん。また美味そうなチャーハンを見つけてな」

「いっつもそうなんだから……

とある中華料理屋、ランチタイム間近で忙しない厨房を見ながら、待ち合わせていた人と顔を合わせる。
関さんの部下、山本さんと言う人らしい。チャーハンは関さんほど食べられないが、食べ物に対するこだわりは強いみたい。

「山本、例の情報は入ったか」

「はい。この店の水曜、11時45分に必ず来店する客がいます。そいつが例の組織の関係者のようです。何か重要な情報を持っていると思います」

「でかした」

ふたりは声をなるべく潜めて、情報をやり取りした。小さすぎるから、中華鍋をカンカン叩くおたまの音でかき消されてしまいそうだ。
それにしても……なんだ、ただ行きたいから来たわけじゃないのか。勝手に安心した。

「よし新人、その怪しそうなやつを見つけ次第マークするぞ」

「はい!」

初めての仕事、初めての本格的な捜査。どこかココロが踊ってしまいそうになるのもまた事実。けれど、逸る思いをなんとか諌める。
違法チャーハンを製造している連中はほとんど証拠を残さない。だから、基本的に逮捕は現行犯でなければならない。
そうなると焦りは禁物、決定的証拠が無い限り逮捕には至れない。

お店特製のチャーハンを嗜みつつ待つこと数分、きっかり11時45分にそいつは現れた。一見普通の人だが、何故かずっと手におたまを握っている。
一般人が、どうして?
そしてそのおたまの底に、光る何かがあるのを目視して───

「止まりなさい!チャーハン刑事です!」

警察手帳片手に跳ね上がるように立ち上がり、怪しい男に告げた。
はっ、とした男と同時、横からも鋭い声がする。

「バカ、よせ!まだあいつは何もして……

しかしもう遅い。
出てしまったからにはもう引っ込められない。
怪しい男も、はっとした顔をしてから踵を返して走り始めた。

「待ちなさい!」

「待つんだ、新人!おい、中野!」

関さんの声が背後からしていたが、かと言ってここで足を止めて男を逃がすわけには行かない。
そのまま数百メートルの追いかけっ子が始まった。
怪しい男はおたま片手にしているわりに結構足が早く、私ではなかなか追いつけない。

しばらくして人通りの少ない路地裏に差し掛かって、男の足が突然止まった。

……? 無駄な抵抗はやめなさい」

私自身も限界だ。
息を切らしながら、こちらに背を向けたままの男に声を掛ける。
最悪の場合、少し手荒な手段を使う他ないだろうか、と悩んでいた次の瞬間。

カチャリ、と。

冷たい金属の音がした。

「え?」

振り返った男の手にはおたま……と、

「拳……銃?」

まさか、撃たれ……


「───しゃがめ、新人!」

背後から飛び出してきた大声に、慌てて私は両手で頭を抱えながら大きくしゃがみこむ。
質量のある何かが後ろから走ってきて、どしん、と私の前に着地したのが分かった。
続けて、パァン!と破裂音、硝煙の臭い。
発砲したのだ、あの男が。

「ぐ……!」

……! 関さん!」

顔を上げれば、私の前に関さんが立ちふさがっていた。男の拳銃は効かなかったらしい。なぜか聞くより早く、男は逃げ去り、ここには私と関さんだけになる。

「無事でよかった」

「すみません、私……

うつむく私を、大きな布団みたいな体が包み込んでくれた。
その暖かさと、ちょっと油っぽさが心を安心させてくれる。

「お前はこの世に一人しかいないんだ、中野。だから、絶対無理するんじゃない」

……はい、すみません、でした……

「怪我はないな」

……はい」

「それなら、よかった。次は気をつけろよ。あんな無謀なことをして……その勇気、閉店前のチャーハンみたいに、いつ無くなってもおかしくないんだからな」

「肝に、命じます……