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三毛田
2024-09-08 10:03:20
3936文字
Public
穹丹
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詮索されるのは好きじゃない。らしい
「穹、今いいか」
「いいよ~。丹恒、どうしたの?」
「本を読んでいたら、うっかり熱浮羊乳をシャツにこぼした。今洗濯中なんだが、代わりのシャツも昨日洗濯したばかりでまだ乾いていなくて。お前のシャツを一時借りたい」
「いいよいいよ! 今出すから入ってきて」
扉の影から顔だけ覗かせ、少し恥ずかしそうにしているのをもう少し眺めていたかったが、そう促す。
「ぁ」
いつものズボンに、タンクトップ一枚。
薄っすら胸が盛り上がっていて。非常にえっちである。
普段は隠れている鎖骨も丸見えで、舐めたいとか噛みつきたいとか思った気持ちを唾液と共に飲み込む。
「穹?」
「大丈夫。何でもない。上だけでいい?」
「ああ。その言い方をするということは、上下セットのものでもあるのか?」
「まあね。ネットで買ったスウェットってやつ。部屋着なんだけどさ」
グレーの上下をベッドに出すと、興味深そうな表情で手を取って。
「伸縮性があり、思っているより軽いな。部屋着としてだけでなく、寝間着としても使えそうだな」
袖、首、裾、それからウエスト、足首とゴムを伸ばして確かめている。
「こっちはいつものシャツ」
隣に置くも、スウェットが気になるのか、ずっといじっていて。
「着てもいいよ。新品だったから、一度洗っただけでまだ来てないし」
「いいのか?」
「うん。もう一着あるし、着てみて気に入ったら持って行っていいから」
「それはさすがに悪い。信用ポイントを送ればいいか」
「うーん。それを着た写真を撮らせて」
「それだけでいいのか」
「いいよ」
だって、俺の持ち物を身に着けた丹恒の写真は、いくつあってもいいからね。
「貰うかどうかは、後で決める」
「うんうん」
「ちゃんと聞いているか」
「聞いてるよ~」
丹恒が可愛いなとしか思ってないけど。
いそいそとスウェットを着て、ズボンも脱いで履き替える。
今日もパンツが白でした。健康的でよろしいです。黒いパンツを穿いた姿もそれはそれでセクシーでいいとは思うけど。
「靴下脱いで、素足でゴロゴロするとかなりリラックスするよ」
「資料室でそこまでリラックスするわけにはいかない」
「俺の部屋ですればいいじゃん」
「いや。それはさすがに」
「これから依頼に出かけようと思ってたところだからさ。新しい本も届いてるし、飲み物はパムに届けてもらうよう頼んでおくから」
丹恒に部屋に来て欲しくて、ネットで見かけた本を買うようになり。それを置いておくための本棚も、壁側に設置して。
視線があっちこっちに動く。
どうやら、心が揺れ動いているらしい。
「そして、なんと! 読書用のチェアもあります!」
「わざわざ買ったのか」
「俺がゲームをする時にたまに使ってるんだ。しかも、リクライニング機能付き!」
「うぐぅ
……
」
心が揺れ動いているようだ。
「ここで、俺が帰ってくるまで待っててくれると、俺が嬉しいんだ」
手を取ってそう告げると、何かを告げようとして唇が動いたがそれを飲み込む。
「わかった。待ってる」
「遅くなったら寝てもいいし、そこのテーブルでご飯を食べてもいいし」
「食事は、なるべくお前と一緒に摂りたい」
それは殺し文句じゃん。ズルいって。
「わかった。遅くなる場合は連絡入れるね」
「ああ」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
頬にキスをすると、キスを返してくれる。
幸せだなと思いながら、列車を降りて依頼者の元へ。
「これから帰るね。と。パムにも個別に連絡入れておこうっと」
丹恒にメッセージを送り、その後パムにもご飯は何かと訊ねる連絡を入れ。
「返事が来ないなぁ。寝てるのかな」
それならそれでいい。可愛い寝顔を、久しぶりに見たいから。
「ただいま~」
「おかえりなさい」
「おかえり。もう食事は運ぶか?」
「ううん。お風呂入ったらにする。丹恒、ラウンジに来た?」
「いや。見てないな」
「そっか。ありがとう。って、なの?」
「ちょっと前からこうなのよ。理由を訊ねても教えてくれないし」
ラウンジには、丹恒以外のみんなが揃っていた。のだが、なのは拗ねたように頬を膨らませて、ソファーの上で膝を抱えていた。
「資料室に行っても丹恒がいなかったから、穹の部屋かなって思って。訊ねていったら、見慣れない服だったから根掘り葉掘り聞こうとしたら、急に不機嫌になっちゃって」
「冷たくあしらわれたと」
俺の服だって知られたくなくて、素っ気ない態度をとったとかそんなところだろう。これは多分、拗ねて寝てるな。
「丹恒の様子は俺が見てくるから大丈夫」
「可愛らしい喧嘩ね」
「喧嘩じゃないもん!」
両頬を膨らませ、姫子を見上げる。そんな彼女を、姫子は優しい目で見て。
「三月ちゃんはこっちに任せて。あんたは自分のやりたいことをやればいいわ」
「ありがとう。パム、ご飯を運んでもらタイミングはまた連絡するから」
「うむ。わかったぞ」
彼らと別れて客室車両へ。そして廊下を抜けて、さらに奥へ。
部屋に寄って一度丹恒の様子を確認する。
扉に背を向け、ベッドに寝転がっている。黒髪が背中を覆っているので、今は飲月の姿なのだろう。
そっと入ってお風呂セットを持って、浴室へ向かい。
外に出ていってついた埃や汚れを洗い流し、浴槽でリラックス。
髪の毛を乾かすタイミングで、パムに連絡を入れて。
「丹恒、ただいま。帰ったよ」
ちゃんと乾かしたけど、ちょっとぼさぼさなのは見なかったことにして、部屋に戻って丹恒を揺り起こす。
「ん
……
きゅ、う?」
寝返りを打ち、ゆっくりと瞼を持ち上げて。
眠いのか、碧い瞳はとろんとしている。
「そうだよ。俺。ただいま」
「おか、えり
……
」
何度か寝返りを打った後、ゆっくり起き上がって。髪の毛がカーテンのようになっているの、すごく、すごく。えっちですねえ。
目を擦ってから、こちらに手を伸ばしてきて。抱きしめるために近づいて、こちらも手を伸ばす。
「ん
……
風呂に、入ったのか」
「うん。埃っぽかったからね」
「匂いが、薄い
……
」
「え。普段匂ってる? もしかして、臭い?」
肩のあたりを嗅いでみるも、お風呂を出たばかりだからシャンプーとボディーソープの匂いしかしない。
「飲月の時にだけ、ちょっと鼻がよくなる。ふふ。穹の匂いだ」
嬉しそうにふわふわと笑い、首に顔を埋めてきて。
「そろそろパムがご飯届けてくれるから、ちゃんと起きてくれると嬉しいな」
「ん。起きる」
俺から離れると、大きく伸びをして。それから、前に来ている髪を後ろへと払い丹恒に。
「まだ眠い?」
「少し」
「なのに色々聞かれたんだって?」
そう問いかけると、ちょっとだけ不満そうに。あ。拗ねた。可愛い。
「ただの部屋着なのに、しつこいからちょっと冷たく対応してしまった」
「後で謝ろうか」
「
……
ああ」
一瞬悩むそぶりを見せたが、頷いて。
と同時に、扉をノックする音。
「デリバリーじゃ」
「ありがとう、パム」
「二人分じゃから、ちと多いぞ」
「大丈夫。俺はお腹すいてるし、丹恒も食べられるよ」
「それならよいが。食べ終えた食器は、ワゴンに乗せておいてもらえれば、後で取りに来るからな」
「わかった。今日も美味しそう」
美味しそうだと褒めると、嬉しそうに耳をパタパタさせてラウンジの方へと戻っていく。
「丹恒、ご飯だよ」
「ちょっと顔を洗ってくる」
「じゃあ、俺はセッティングしておくね」
「手伝わなくて悪い」
「ううん」
「疲れているのはお前の方なのに」
「俺が、丹恒と過ごす時間が好きだからしてるんだ」
そう告げると、恥ずかしそうに頬を赤らめて。早足で部屋を出ていく。
何あの反応。可愛すぎるでしょ。
「丹恒と恋人になれてよかった」
じゃなければ、あの冷徹な蒼龍がこんなにも俺の前で感情豊かになるなんて知らないままだっただろうから。
「戻った」
「おかえり」
俺がセッティングを終えたところで、丹恒が戻って来る。
「じゃあ、食べようか」
「ああ」
向かい合って座り、両手を合わせ。
「いただきます」
「いただきます」
まずはサラダから。今日のドレッシングは好みの味だ。
「メインは、鶏肉の香草焼きか」
「みたいだね。大きいお肉だ。食べ応えありそう」
「ああ。バゲットも、カーリックバターを塗ってトーストしたものだろうか」
「そうみたい。お肉、柔らかくて美味しい~」
「スープも美味いな」
「ガーリックバターを塗ってないバゲットをスープに浸して食べても美味しいよ」
「ああ。美味い」
こうして一緒に食事を摂って、美味しそうに表情をほころばせる姿も。
「穹?」
食べる手が自然と止まっていた。美味しそうに食べている丹恒の姿が、好きだなって。
「ううん。美味しいなって」
「後でパムに感想を伝えないといけないな」
「ねえ。また美味しいもの作ってもらいたいし」
金人港で買ってきたものを食べるのも悪くないのだが、パムの作ってくれた美味しいご飯を食べる方が実は好き。
「丹恒、ご飯で機嫌が直ったみたい」
「三月の方がもっと単純だろう」
「それもそうだね」
「そこは否定してやれ」
「先に言ったのは丹恒じゃん」
俺がちょっと拗ねたように言うと、おかしかったのかクスクスと笑って。
本当丹恒は可愛い。俺の服を着てるから、さらに可愛い。
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