ばきりと大きく響く惨たらしい音を気にすることもなく、ダイナモは近くに倒れている手頃なレプリロイドの胸のアーマーを手でこじ開け、動力炉の付近を手探りで触った。機能停止したばかりの身体の中はまだ熱かった。
「ボウヤには刺激がちょっと強かったかな?」
そういえば、と彼は背後を振り返る。イレギュラーハンターに入っているくらいなのだから、あの先輩たちのように苦々しい顔でもするのだろうかと期待していた。
ボウヤと声をかけられたレプリロイドはダイナモの問いかけなどまるで聞こえていないような様子で、他の機能停止したレプリロイドを物色していた。しばらくすると彼はちょうど良いものを見つけた子供のように少しだけ機嫌良さげに口角を上げ、手持ちの銃をくるりと回してから5、6発、器用に胸のアーマー部分だけを撃ち抜いて外した。それから「よいしょっ」などと場違いな明るい声を加えながら、レプリロイドの動力炉付近にあるエネルギータンクを抜き出し、それを左右に軽く揺らして残るエネルギー量の乏しさを確かめるとわずかに顔をしかめた。
「キミ……こういう事、しちゃうんだね」
儚く期待の裏切られたダイナモは、彼──アクセルに近寄って上から声をかけた。ただでさえ薄い光がダイナモによって遮られたことで、アクセルはさらに表情を険しくし、どこか鬱陶しそうに聞き返した。
「こういう事って?」
「エネルギーを漁ったりとか、さ」
「ああ……まあ、エックスが見たら怒るかもね」
そう言ったアクセルはふっと吐き捨てるような笑いを零し、同胞だったはずのレプリロイドの潤滑液を浴びながら銃にエネルギーを移し始める。この年端もいかない少年のような見た目のレプリロイドをただの世間知らずのボウヤだと思っていたダイナモは、認識を改める必要を感じた。
「アンタみたいな事、ボクはしないと思ってた?」
「正直ね。よくエックスには隠してられるな?」
「隠すのは得意。アンタもでしょ?」
「ご名答。オレたち気が合いそうじゃないか」
「同族嫌悪って言葉もあるけどね」
言葉の終わりと同時に、エネルギーを移し終え空になったタンクをスクラップが積み上がった山に投げ捨てる。隣に座っていたダイナモも同じように飲み干したタンクをそれに向けて放り投げると、ちょうど山の頂点で二つはぶつかって、からからと山を崩した。
「エックスたちはもう着いたかな?」
「エックスたちだもん。大丈夫だよ」
「信頼してるんだ?妬けるねぇ」
「確信だよ。エックスもゼロも強い。アンタだって知ってるくせに。戦ったことあるんでしょ」
アクセルはエネルギーを満たしたばかりの銃を何度か空撃ちし、
「ねえ、せっかくだし聞いてもいいよね」
そして銃口をダイナモの鼻先に向けた。
「コロニーを落としたのは、アンタなんだろ?」
「……そうだよって言ったら?」
ダイナモは右手を腰のブレードに近づける。それアクセルは見逃すことなく、軽い笑い声をあげた。
「うーん……悪いオジサンなら逮捕しておこうかと思ったけど……やっぱりいいや」
まるでもう飽きたかのように銃口が鼻先から逸らされるのと同じくして、ダイナモはブレードから右手を遠ざけた。しかし少年はもう一丁の銃を持っている事を彼は知っていたし、彼にはバスターがある事を少年は知っていた。
「いいんだ?」
「だってボク、コロニーの事なんて何も知らないし。当事者のエックスたちが何もしないなら、ボクがアンタに何かする権利なんてない」
「案外そういうこと気にするんだね?」
「違うよ。ボクがやるべき事じゃないってだけ」
「ふうん…… 何もする気がないなら、なんで聞いたんだ」
「好奇心さ。わかるでしょ?こういう気持ち」
アクセルはにやりと笑った。悪い顔だ、とダイナモは思った。こちら側の顔だと。
(嫌な子猫を飼い始めたな、エックスたちは……)
「エックスたちには黙っててあげるよ。ボクは優しいからね」
「黙るも何も、オレがやったなんて決めつけられちゃあ困るな」
「アハハ、まあ、そういうことにしておいてあげる」
ボクは優しいからね、とアクセルは同じ言葉を繰り返した。
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