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澄ひろえ
2020-03-14 19:22:03
6286文字
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Priceless
ククゼシホワイトデーにちなんで書いた物です。ほぼククール一人称で進んでいきます。3DS版準拠です。
ホワイトデーのお返しにゼシカが望んだものは・・・。
此処はベルガラック。暗黒神の野望を食い止めんとするエイトたち一行はこの宿屋に宿泊する事に決めた。
「今まで連戦続きだったから明日は一日休暇にしよう」
リーダーであるエイトの言葉にに異を唱える者はいなかった。もちろんその日を休暇にした事には意味がある。
その日は3月14日・・・「ホワイトデー」
一月前の女の子の想いに男の子が答える日。そこには悲喜こもごもなドラマがある。
そして、そのドラマに巻き込まれた自称カリスマ騎士がここに、ひとり。
「はぁ・・・このククール様とあろう者が・・・どうすりゃ良いんだ」
俺は宿のロビーに設置されているソファに腰掛けて悩んでいた。
とは言っても、別にたくさんの女の子からチョコを貰いすぎてそのお返しに悩んでるわけじゃない。
実際今年は一つしか貰わなかった。
問題は・・・その貰った相手とチョコの中身。
「これは義理?」ってからかってみたら「・・・そんなの自分で考えたらわかるでしょ・・・バカ」と顔を赤らめてそう返してきやがった。
――
つまり、そういうことなんだろうなぁ・・・
手作りのチョコは少し形がいびつで苦かった。でも、そんなのどうでも良かった。俺のために作ってくれた。その想いで充分だった。
そして、今日。俺だってあいつの想いに答えてやらなきゃな・・・そう考えて最初の悩みに戻る。
「手作りチョコの3倍返しってどうすりゃ良いんだ・・・?」
昨夜こっそりエイトとヤンガスに聞いてみたが、エイトは「知らない」ヤンガスは「自分で考えるでがす」って答えやがった。まぁ、最初っから期待はしていなかったんだが・・・。
そうして、今朝エイトは馬姫様と一緒に不思議な泉に、ヤンガスはゲルダと一緒にどっかへ出かけていった。モリーのとっつあんは・・・バトルロード格闘場に行ったんだろう。
「ったくどいつもこいつも・・・にしてもどうすっかなー」
「おはよう、ククール」
いきなりかかった声に心臓が跳ねた。声をした方を見やると・・・悩みの種のもう一つ。手作りチョコを貰った相手。
「お、おうゼシカか」
ゼシカはトントンと軽快に宿屋の階段を降りてくる・・・ってその服は何だ。
黒のインナーの上にノースリーブの白いシャツ(のくせに背中は大きく開いている)紺色の縁取りに紫色のひらひらした生地を幾重にも重ねた短いスカート。ブーツもいつもの革のショートブーツではなく、白いロングブーツ。
そして、ツインテールの留め具にも赤と白のリボンが飾ってあった。
(シャイニーチュチュ・・・って言ってたっけか)
錬金大好きエイト君の産物。ちなみにレシピは不思議な泉の近くにあるじいさんの家にあった。あそこはマジカルスカートのレシピもあったし、じいさんの趣味をちょっと疑ってしまう。
「一人で何ぶつぶつ言ってたの?」
お前の事で悩んでたんだよ!・・・なんて口が裂けても言えるわけがない。
「あーまぁ、今日の事についてだな・・・」
「ふーん?・・・ま、いいわ。ちょっとお願いがあるんだけど」
若干スルーされた気もしたが・・・ゼシカが俺にお願い?珍しいけど、よくよく考えてみれば他に人いないもんな。
「昨夜エイトにね。錬金に使う材料買ってきて欲しいってメモ渡されたんだけど。結構量があって・・・手伝ってくれないかしら」
そう言って、ゼシカは一枚のメモを取り出してヒラヒラと振ってみせる。
「見せてみな」
俺はゼシカからメモを受け取る。そこに書かれていた物は。
スーパーリング 6個
聖女の盾 2枚
プリンセスローブ 1着
作りたい装備の下に必要となる材料ががずらっと書いてあったが・・・おいちょっと待て。
「おい、これ、材料売ってる場所バラバラなんじゃねーか・・・?」
「そうなの。だからちょっと困ってて」
俺はため息をついた。エイトもエイトだ。自分はさっさと出かけたくせに何だってこんなメモをゼシカに渡したんだか・・・。
「・・・ダメかな。やっぱり面倒くさい?」
俺のため息を否定と捉えたらしい。ゼシカの眉尻が下がる。
「いや、こんなのゼシカ一人に任せてられるわけないだろ?ルーラあった方が絶対いいだろうし」
俺の返答に今度はゼシカの顔がパッと輝き「ありがとう!」と言った。切り替えの早いお嬢さんだな。
それに・・・確かに面倒くさいが、これは逆にチャンスだ。
あちこちの街に行くって事はいろんな店を回るって事で・・・ゼシカの気に入る物が見つかるかもしれない。
それを買ってプレゼント・・・ってのもありっちゃありだろ。やっぱり送るからには本人が気に入った物で喜んで欲しい。
「とは言え、俺もどこで何売ってたか全部覚えてるわけじゃないからな。とりあえず、この街で揃えられそうな物から買っていくか」
「ええ。頑張りましょう」
ゼシカが宿の外へ向かって歩き出す。ゼシカの後ろ姿・・・むき出しの背中、短いスカート。すらりとした生足に白いロングブーツ。
「・・・」
何というか・・・こりゃ露払いも頑張らないといけませんねぇ・・・俺は急いでゼシカの隣に並んだ。
「ククール?」
「あんまり俺から離れるなよ」
「う、うん!」
ゼシカの声が微妙に弾んだように聞こえたのは・・・気のせいだよな?
「ベルガラックはお店よりカジノの景品の方が該当する材料があったわね」
「そうだな。店だと毒針くらいだったか」
カジノの重い扉を開けて俺たちは外に出た。俺の持っている袋の中には聖者の灰やスパンコールドレスが入っている。
「フォーグとユッケも仲良く協力してカジノを経営しているみたいね」
「そうして貰わないと困るだろ。俺たちがあんだけ命懸けで護衛したんだぞ」
「そうね・・・ふふっ」
「あ?何がおかしいんだよ?」
いきなりクスリと笑い出したゼシカを俺は訝しんで見つめた。俺何か変な事言ったか?
「以前のククールならそんな言い方しなかったかな・・・って」
「何だよ、それ」
不意に思い出したのは護衛後に仲間で交わした会話。あの時の俺は本心隠して捻くれた会話してたからか・・・。
「さぁ、荷物を宿屋のエイトの部屋に置いたら次の街に行きましょ!」
話の流れをすぱっと断ち切ってゼシカはさっさと宿に向かって歩き出す。だーっ、だから俺から離れんなっつーの!俺は袋の中身がこぼれないように注意しつつゼシカの後を追った。
次に訪れたのはサザンビーク。ここならバザーもあるし、大量ゲットが期待出来るな。
「バザーの場所って変わったのね」
「ああ、あの空が赤く染まった日から城の近くの建物に移動したみたいだな」
しかし、空の色が変わったからと言って人の購買欲までは無くならなかったみたいだ。バザーを行っている建物の扉を開けると多くの人でごった返していた。
「うわーすごい人出ね」
「ああ、気をつけて進めよ。ゼシカ」
「そうは言っても、この人混みじゃなかなか進めな・・・きゃっ」
他の客に押しのけられて、ゼシカの体がバランスを崩しぐらりと傾いた。そのまま後ろに倒れそうになる。危ねぇ!俺は咄嗟にゼシカの体を抱き留めた。
「っと・・・大丈夫か?」
「・・・・・・」
ゼシカは驚いた表情でしばらく俺を見つめていた。・・・あれ、おかしいな。いつもならこの辺で「いつまで触ってるの!」とか言って怒る頃なんだが。思考停止してないか?
「・・・おーい、ゼシカさーん?」
俺の問いかけにやっとゼシカは我に返ったようだ、自分の状態に気付いたらしい。
「も、もう平気だから」
ゼシカは俺の腕を支えにして体勢を立て直した。さっと服の乱れを直している。なんかゼシカの顔赤いな。人混みの熱気のせいか?
「ごめん。ありがと。気をつけるから」
「まぁ、時間はあるんだ。焦らずゆっくり行こうぜ」
「ええ」
取りあえず、俺が人混みを押し分けて、ゼシカがその後ろを付いて歩く作戦で何とかバザーでの買い物を完了させた。
「あー暑かった」
建物の外に出て、俺は額の汗を拭った。俺の騎士服は厚手の上に素肌を晒す部分もない。熱がこもって拭っても拭っても汗が滝のように流れ落ちる。
「ククールの服じゃ暑いわよね。私ノースリーブで良かった」
俺はゼシカを見る。確かに涼しげな格好ではあるんだが・・・あれだけの熱気だ。汗をかかないはずはなく、玉のような汗がつっと胸元に伝って・・・。
「・・・戻るぞ」
「え?まだ、武器防具屋見てないわよ?」
「いいからベルガラック戻って小休止の後昼飯食べて再出発だ。いいな。わかったな!?」
「え、ええ・・・わかったわ」
俺の勢いに圧倒されたかのようにゼシカは頷いた。取りあえずこの状態のゼシカを他の男たちに見せるわけにいかねぇ。俺は速攻でルーラを発動させた。
「あー・・・疲れた・・・」
それからあちこちの街をルーラで飛び回り、材料集めが終わったのはもう夕方になっていた。俺は宿屋のロビーのソファーにぐったりともたれかかるように座り込んだ。
ルーラの連発はもとより、ゼシカを好奇の目で見つめてくる野郎どもにひたすら睨み効かせてたからな。気が休まる暇も無かった。
(何人かは麻痺して地面に倒れてた奴もいたが・・・まぁ死んじゃいないだろう。多分)
でも、疲れたけど楽しくなかったわけじゃない。ここんところゼシカは戦闘メンバーから外れており(そういう時は不思議な泉で姫様と話をしているらしい)俺は回復の要だから戦闘メンバーから外れるわけにいかず・・・最近ゼシカと会話なんてほとんどしてなかった気がする。
店を探す道すがら、ゼシカと交わした日常会話は戦闘で疲弊していた俺の精神を回復させるのに充分だった。
(ゼシカもなんだかんだ言って楽しそうだったしなー)
「ククールお疲れ様。私これエイトの部屋に置いてくるわね。みんな戻ってきたら夕ご飯食べに行きましょ」
ゼシカは材料の入った大きな袋を持って階段を上がろうとする。まさにその時俺ははっと思い出した。顔がさっと青ざめる。
・・・あ、やべぇ。
エイトへの目的は達成したけど、俺の目的は達成してねぇじゃねぇか!
「ゼシカ!」
俺は慌てて立ち上がり、ゼシカに声を掛ける。ゼシカはびっくりした顔でこっちを見た。
「な、何?」
「あー・・・あのさ。今日ってホワイトデーだろ」
「・・・ええ、そうね」
「それで・・・俺、ゼシカにお返し送らないとって考えてたんだけど。もう夕方で店閉まってるし・・・その、何も買ってやれなくてごめん」
俺はゼシカに頭を下げた。あー、俺マジで最悪だ。ホワイトデーすっぽかすとか、ゼシカもがっかりしただろうな。カリスマ騎士の名が泣くぜ・・・。
「・・・ククール、頭上げて。謝らなくて良いよ」
しばしの沈黙の後、聞こえたのはゼシカの優しい声。頭を上げると、ゼシカは少し顔を赤らめている。
「もう・・・欲しかったものは貰えたから」
「え?」
俺が首をかしげて聞き返すと、ゼシカはますます顔を赤らめて
「じゃ、これ置いてくるから!」
そう言うが早いがゼシカは階段を駆け上がっていった。俺はというと呆然とその後ろ姿を見送っていた。
なんなんだ一体。ゼシカは俺から何を貰ったんだ?昼飯は奢りはしたが、そういう意味じゃなさそうだし。わからねぇ。全然わからねぇぞ・・・。
「あ、ククールただいまー。買い物やってくれた?」
呆然と立ち尽くしている俺の背中にかかるのは我らがリーダーの明るい声。どうやら楽しい時間をお過ごしになられたようで。
「エイトお前な・・・なんであんな買い物メモゼシカに持たせたんだよ」
俺は振り返り、多少恨みがましい声でエイトを問い詰める。だが、エイトは動じる事なく少し肩をすくめてあっけらかんと答えた。
「昨夜ククールがホワイトデーのお返しの事聞いてきたでしょ?その後に、ちょっと思うところがあってゼシカにあのメモ渡したんだよね」
「だから、なんで」
「『ククール多分明日暇してるから一緒に行ってきなよ』って言って渡したんだ。で、実際ククールは一日ゼシカにつきあったんでしょ?」
エイトの言葉に俺はアゴに手をやりながら考える・・・えーと、つまりどういう事だ?落ち着け俺。さっきゼシカは何て言った?
(もう・・・欲しかったものは貰えたから)
ゼシカが欲しかったもの。望んだものは。俺と・・・一日・・・
「
――
!!!!」
それに思い当たった瞬間、顔がカッと熱くなった。多分俺の顔赤い。断言出来る。
「結局ククールとゼシカの望みは叶ったし、僕は錬金素材手に入れる事出来たし。Win-Winでしょ」
エイトはニコニコしながら俺の肩を叩いた。なんだかさらにどっと疲れが押し寄せてきた。この策士め。コイツ絶対俺たちで遊んでやがる。
「あ、エイトおかえり。荷物あなたの部屋に置いてるから」
ゼシカが階段を下りてくる。俺は何とか平静を取り戻してゼシカを見た。服は・・・いつものに戻っている。つまり、あの衣装はゼシカなりの「特別」だったって訳か・・・。
「ただいま。買い出しありがとう、二人とも。ヤンガスたちはいつ帰るかわかんないから先に夕ご飯食べに行こうか」
「そうねぇ。行きましょうか」
ゼシカの返事にエイトは頷くと宿の扉を押して外へ出て行った。ゼシカはそれに続くのかと思いきやすっと俺の隣に立つ。
「どうした?」
「・・・今日は楽しかったわ、よ」
俯いてコルセットの紐をもじもじと弄りながら、俺にしか聞こえないくらいの声量でゼシカは呟く。そこはかとなく漂う甘い雰囲気。
「俺も・・・でもさぁ」
「でも?」
「今日はこれからなんだけど?ゼシカさん?」
俺はニヤニヤしながらゼシカの肩に手をかける。するとゼシカはパシンとその手を振り払い「もう!調子に乗らないの!」と声を上げる。ただし、その声には棘はない。
「そりゃないぜ、ゼシカさんよー」
だから俺もわざとらしく肩を竦めて言う。甘い雰囲気はあっという間に吹っ飛んだ。ああ、いつものやりとり。この方が俺たちらしいよな。俺たちは顔を見合わせて笑った。
「・・・明日からまた頑張ろうね」
ゼシカの声に俺は頷いた。そう、特別な日はもう終わり。明日からまた暗黒神の野望を食い止めるための生死を賭けた戦いの日々が始まるんだ。
「・・・ああ、頑張ろうな」
俺とゼシカは並んで歩きながら宿の扉の外で待っているであろうエイトの後を追った。
その後錬金釜を操作しながらのエイトたちの会話
エイト「・・・でさぁ、あれだけ僕がお膳立てしたのに、全然あの二人くっつかないんだよね。もう天然記念物レベルだよね」
ヤンガス「兄貴の好意を無下にしたでがすか。ところでゼシカの姉ちゃんの願いってどうしてわかったでがすか?」
エイト「なんか前にね、不思議な泉で女子会した時にゼシカが最近ククールと会話してないって言ってたって姫様がおっしゃっててさ」
ヤンガス「(それはゼシカの姉ちゃんが最近戦闘メンバーから外れてて会話する機会が無かったってだけじゃあ)」
エイト「『これは大問題ですわ!このままではお二人にとっては由々しき事態になりますわ!』って姫様がおっしゃるから二人っきりにさせようって一肌脱いだのに・・・あ、プリンセスローブ完成っと」
ヤンガス「(トロデーン組恐ろしいでがす・・・)」
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