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米田
2024-09-07 21:51:32
4185文字
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第8回歌会カーケンメテオルの読み
2024年9月1日に開催された歌会カーケンメテオルの、詠草への読みです。
とっても楽しい歌会をありがとうございました!
①ばらばらと種子こぼれゆくただしさにさみしくなったらおへそをさわる (なつこさん)
「種子」と「ただしさ」にまずネロとフィガロのことを思い浮かべました。
手からこぼれてゆくもののことを思ってさみしさを抱くのは特にこの二人なような気がしています。
きっと他の人だったらもっと健全に、種子が自分の手からこぼれていくのを見た時には、元気に育てよとかそういうことを無邪気に思う気がするんですけど、自分の手から離れていくことを正しいと思う、でも同時に寂しいと思う、という複雑な心境になるのは、いい意味でも悪い意味でも大人だなあと思います。
最後の「おへそをさわる」の意味が取れなかったんですけど、「ほぞを噛む」から来ているのかなと思って。ほぞを噛むは後悔するとか、どうにもならないことを悔やむとかそういう意味なんですけど、それを踏まえてもやっぱり二人のうちのどちらかのような気がしてしまいます。
おそへをさわる、を字面の通りに捉えるとしたら、おへそをいじるとお腹が痛くなる、というのはよく言われることで、お腹が痛くなるかもしれないけど触ってしまう、そういう破滅的な部分というのが、暗いなと思って、でもそういう暗さ私は好きなんですけど。
なにもたしかな読みはできないんですけど、明るくはない歌だなと思って、好きです。
②ひかり 愛したかった街をまもるように眠る、おきる、手に触れたくて (波澄さん)
愛したかった街、というので、ここできっと思い浮かぶ人は思い浮かぶんでしょうけど私はぴんと来なくて。
フィガロかな
…
?とちょっと思ったんですけど、彼が今までに住んでいた地のことを街と表現するかな
…
?という部分に引っかかってあまりこれだ!とはならなかったです。
眠る、おきる、という文字から、ここだけで一度きりの言葉ですけど、これが何度も何度も繰り返されるんだろうなという、リフレインの余韻があってすごいなと思いました。
ひかり、という冒頭の言葉が照らすように、歌全体がほのかに照らされていてぼんやりと明るくて、でもギラギラとはしていなくて、やさしい手触りの歌だと思いました。
手に触れたくて、というのが誰の手なんだろう、というのもわからずなのですが、大切なものに触れる時のおそるおそるといったような、そっと手を伸ばす慎重さのようなものもあり、そこにどうしようもなく臆病な、でもたしかな愛を感じました。
③都会とはコールスローが甘くない世界、ちいさな夕日の世界 (谷さん)
ぱっと見でリケの歌かな、という直感だったのですが定かではありません。
彼がいたところは中央の国ですからまあまあ都会だと思いますし
…
でも彼は物語が始まるまではほとんど外に出たことがなかったでしょうから、外の世界のほとんどを都会だと思っていても不思議はない感じはします。
コールスローを甘くして作ってくれていた人がいるんだね、という愛しさがありますね。
作ってくれた人はきっとこの歌の主体のことが好きだし、主体も作ってくれた人のことが好きなんだろうな、というのが伝わってきます。
彼以外が作ったコールスローを初めて食べて、甘くないコールスローもあるんですね、と言いながら見た街並みは、背の高い建物が多くて空が小さく窮屈に見えたかもしれません。
はじめて触れた出来事に対する新鮮な驚きというか嘆息というか、みたいなものが伝わってきて、すごく純粋でいいなと思いました。
④絞め上げる手をはなす はて はてのないこのよをひとりゆくと云うなら (米田)
自作でした。
ホワイトの歌。怖い歌を作るぞ!という意気込みの元に制作。
自分という存在が、相手にとっての不自由な足枷に過ぎないのかもしれないと気付いた時の落胆、虚脱、そして相手のこれからを思って手を離す愛、を歌った歌です。
ホワイトがスノウとの戦いに負けた、そしてホワイトが死んだのは、ホワイトが最後は自分の気持ちよりスノウの意思を尊重したからという解釈で、だから絞め上げていた手を離した、力が抜けた、でもそれは無意識のことでまだその時点ではホワイトも無自覚でのことだった、その一瞬で勝敗は決してホワイトは死んだのかもしれない。
最初に出てくる「はて」は疑問系のはて、で、おや、どうして今自分は手の力を緩めたのだろう、という疑問がある状態。もちろん「果て」の繰り返しとして読んでもらっても大丈夫です。
下の句は彼の中で理由がわかって、ひとりでゆくというなら止めないよ、という彼の気持ち。
スノホワの他にはフィガロやミスラなど北読みをたくさんしていただいたのが嬉しかったです。
⑤千年以上お待たせしました赤々とゼロ番で幕を下ろしゆく指 (もじほこりさん)
ゼロ番というのは舞台用語でセンター、中央のことを指す言葉ということで、舞台の真ん中に立つ人がスポットライトを浴びながら、丁寧にお辞儀をしている様が目に浮かびました。
ノーヴァの歌かなと思ったのですが確信はないです。
千年以上、と初句から字余りがあってそれが最後まで続くんですけど、この初句のインパクトが効いていて気にならないというか、するする、と文章として読めてしまう。
短歌としての要素は薄くなるかと思いきや、赤々と、と、下ろしゆく指、の部分でしっかり締めていて、ちゃんと歌としてかっこいいものになっているという感じがしました。
千年以上お待たせしました、ってかっこよくてずるいですよね。
敬語が入っていて、そこから慇懃無礼な感じがちょっとして、しかも千年以上も待ってる人なんて多分そんなにいないんですよ。あの作中に。
誰に対して言っているんだろう?という疑問があるんですけど、ノーヴァ視点だとしたら、月に対して、この世の幕を下ろしてやりますよ、と言っているのかな?という気もします。
⑥土を見るだれも覚えてないくらい部屋のなにもかもまぶしい 怒り (トラネさん)
土を見る、というところでこれと言って誰のことも思い浮かべられなかったのですが、後半の、「部屋のなにもかもまぶしい 怒り」のところでザラ様かな、と思って、その次にファウストかな、とも思いました。この世に強い怒りを覚えている人たちのことを。
ザラ様だったら、アリアが死んで、アリアの代わりとして国に立つようになって、誰も自分のことは知らないし覚えていない、あの人も私のことを忘れてしまった、けれど私は今光の眩しい部屋のなかにいる、という満足と、それを上回る虚無というか、やはり怒りを覚えていることを、土を見るという一見無意味な行為の中に、何かをじっと見入る時の精神状態って危ういよねという意味合いも含めて詠んでいるのかなと思って、すごくグラグラ来る歌だと思いました。
ファウストだったら、火刑にされたあと、信じられる人もいなくなって、嵐の谷に引きこもる時に、きっと最初はもう少し明るい場所というか家だったんじゃないかと思うんですが、そこをファウストは自分の住み良いように暗いものへと変えていったんじゃないという気がしていて、その時の気持ちを思いました。今の自分のことを誰も知らない、覚えていない、だからこそ今度こそはなんだって自分のしたい通りにしてやる、この家だってこの谷だって、この世だって、全部黒く呪ってやる、最初の頃はそんな感じだったんじゃないかなと思いました。
暗いアグレッシブさのある歌だなと思って、すごく好きです。
⑦せんせい あなたをいつか護る日のためのやさしい敬称で呼ぶ (ミクニハレノさん)
初句がすごい。すごくないですか?字足らずですけどこれで十分、という感じで、むしろこれ以上のものは何もない、くらいに堂々としていて。
これ、ログストのファウストとフィガロの話についての歌じゃないかと思ったんですよ。
二人がお互いのことを先生と呼んで、ファウストがフィガロのことを送り出すシーンの、あのログストです。
ファウストがフィガロのことを先生と呼ぶ時、今まであったかな?なかったような気がする。あったとしても結構トゲトゲしい感じだったんじゃないかと思うんですけど、あのログストではお互いのことを尊重してそう呼んでいて、すごくやさしくて。
あなたをいつか護る日の、って、本当に優しい願いですよね。
今まではあなたに護られてきたけど、これからは私だってあなたのことを護れます。という、優しい覚悟ですよ。
ファウストじゃなかったらミチルかもしれない。
ミチルからフィガロへ向けての歌だとしてもしっくり来ますね。
でもやっぱり、この歌の主体は、今までは相手のことを先生って呼んでなかったってことだと思うんですよね。それが、今日からは、あなたのことを護れるように、そう祈りながらあなたのことをこう呼ぶよ、ということで先生と呼んでいるんですよね。
ファウストからフィガロへの思いって結構複雑で今まで拗れていたけれど、これからはお互い柔らかい気持ちで接することができるんじゃないかという予感があり、とてもこれからに期待できる嬉しい気持ちになりました。
素敵な歌です。
⑧傷口とガーゼのようで剥がすとき持ってゆかれてしまう感情 (あいださん)
これは具体的に誰、というのがわからなかったんですが、歌の言っていることはすごくよくわかるような気がしていて。
傷口を塞いでいたガーゼと傷がいつのまにか癒着してしまっていて、それを剥がそうとしてもうまく剥がすことができない。
無理に剥がそうとすると、塞ごうとしていた皮膚が持っていかれ、傷はまた開いてしまう。
一度傷ついて、癒やそうとしていた年月があり、その後、無理に剥がそうとした時にピリリと痛むことは感情でも同じように起こりうることで、それを体験しているのはネロかなあと思いましたが、どこでそう思っているのかをうまく言えませんね
……
でもネロは、そういう感情の機微についてよく知っていて、理解を示してくれそうな感じはあります。
そう思うとこの歌のCV(?)がネロの声で再生されるような気がしてきました
……
ネロのことを詠んでいる歌というよりネロが詠んでいる歌、みたいな感覚があります。
とても楽しい歌会でした!ありがとうございました!
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