西尾六朗
2024-09-06 13:05:16
780文字
Public Beyond The 10 Stars
 

Interview with Monte-Cristo

巌ぐだ♀/イドぐだ♀/エドぐだ♀(もうどれで表記したらいいのかわからん)のうすぐらい独白。
愛、或いは呪詛(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21819863)に対するモンクリへのインタビュー。


 彼は言う。分かっていたと。
 別離の瞬間に、果てしない痛みが彼女を襲うと知っていたと。

 彼女は喉裂ける絶叫を堪え、血が出る程に唇を噛み締め、握った拳をふり上げるだろう。だが、その拳をどこにも叩きつけたりはしない。
 怒りと愛しさではじけ飛びそうになりながら、最後にはそのすべてを飲み込み頷く。

 マスターであるがゆえに。

 どれほど夜を共にしようと、穏やかな日々を現実にせんと夢想しようと、互いの身体に触れておらぬ場所など一つとしてないほど繋がり合おうとも――藤丸立香は人理を背負う最後の一人であるが故に。

 その激情の全てを耐え、飲み、受け入れるだろう。
 愛する男の消失を。

「そうとすべて分かっていて、ああしたのだ。
 無論、自らも同じだけの痛苦を味わう。半身をむしり取られる痛みを身に浴びる。
 だが、ああ。
 その激痛は甘くもある。罪深く、我欲的で、至極悪質な快感だ」

 彼女の愛を、痛めつけることで確かめたい――
 などと愚かな欲を抱いたわけでは、決してない。むしろ傷ついてくれるなと心から思っていた。

 それでも、悦楽はあった。
 その涙に。
 その怒りに、痛みに、震える程の歓喜があった。

 星の零す涙を見て、確かにこう思ったのだ。
 彼女はもう、誰も愛せはしない。
 いいや、させるものか。影にさえ触れさせるものかと。

 それは『彼女の俺』の願望だった。
 『俺』の安寧、ただ愛した、それだけの男の呪い。
 男は彼女に、永遠の寡婦であれと願った。忘れさせず、愛しい女に疵を抱えて生きろと願った。

 なんという非道だろうか。
 そして、なんと凡庸だったろうか。

 巌窟王エドモン・ダンテス。
 藤丸立香に唯一愛されたその男をして、彼は言う。

「そら、そうだ。
 私ほど自己犠牲に程遠い者も、他には居るまい?」