三毛田
2024-09-05 17:01:32
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41 01. 恋になるための一歩

41日目 実はもう踏み出していた

「ここって、恋愛相談は受け付けてる?」
「受け付けてないって言ったら?」
「モクテルだけ飲んで帰るよ」
「少しくらいは聴いてあげる」
「ありがとう、シヴォーン」
 クロックボーイにマネーを渡すついでに、バーナイトメアへと足を伸ばし。
 寄ってきて俺に鼻先をこすりつけるコマンダーを撫でてやると、嬉しそうに尻尾を振る。
「それで?」
 スモールグラスに、氷少なめ。
「うーん。まずは、これが恋なのかって話から」
 激夢ジャムに、星空のシャンパン。
 ハムスターボールの騎士カード添え。
「乾杯」
「召し上がれ」
 一気に飲むと、酔いが回りすぎてろくでもないことになる。なので、ちびちびとゆっくり。
「その相手が好きなのは、確かなんだよ。そして、相手も俺を好いてくれている。自惚れじゃなくてね?」
「それは、共に行動する仲間として?」
「そんなところ。嫌いな相手に、〝自分の一部だ〟とか言わないでしょ?」
「それはそうね」
 一瞬視線が動いた。多分、俺の言葉に動揺したんだろう。
 あの言葉は、初めて聞いたときも思ったけど、他の人が聞くとめちゃくちゃ重いようだ。
「雨の中の薔薇、頂戴」
「任せて」
「えっと。俺のスマホのロック外しておいたから、酔い潰れたら列車ファミリーのメッセージ欄にここにいるって入れておいて欲しいんだ」
「こんなところで、ロック外していいの?」
「シヴォーン相手だからね。信頼してるよ」
「その信頼にちゃんと応えないと。でも、酔い潰れないでよ?」
「約束はできないかな」
 丹恒の口にする〝好き〟と、俺の中にある〝好き〟の違いに気づいちゃったから。
 それを飲み込んで吐き出さないと、先に進めない。飲み込まなくてもいいと、他の人は言うだろう。でも、一度飲み込んで消化しないと俺は駄目だ。
「はい。雨の中の薔薇」
「ありがとう」
 やっぱりシヴォーンはプロだ。俺なんかよりも丁寧で、しかも速い。ま、俺は雇われバイトだから仕方ないけど。
「隣、いいか」
「ん〜? いいよ」
 半分ほど飲んでふわふわと気持ちよくなってきたところで、声をかけられる。
「店主、おすすめを一つ」
「好きなフレーバーはあるかしら」
「そうだな……さっぱりビターで」
「氷は?」
「少なめで頼む」
 なんだか聞いたことがある声な気がする。でも、思い出せない。
「シヴォーン、次ラージでちょうらい」
「いいわよ。今来てるお客さんに出してからね」
「は〜い」
「お前、酔ってるな」
「酔ってないよ」
「酔っている人間は、皆そう口にする」