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鬼躯(おにく)
2024-09-01 14:48:14
820文字
Public
Dytica妖怪疑似家族パロ
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目を回す
F崎様(
https://x.com/f_saki_voyage
)のDytica妖怪擬似家族パロの設定をお借りした三次創作の小話です
日が落ちてもじめつく残暑。
加えて本日は荒天なり。
颱風の接近で早寝を余儀なくされ、膨れっ面をしていた子どもらも既に夢の中。
雨戸の向こうは荒れ模様だが、蚊帳の中は寝息だけで満たされ平和そのもの。
自由奔放な寝相で安眠を享受している。
隙あらば外へ飛び出そうとする遊び盛りの二人を捕まえ、夕餉と湯浴みを済ませて寝床に放り込むのはさすがに骨が折れたが。
寝付くまで扇いでいた手を止め、欠伸を一つ。
体力を持て余す幼子に日夜てんてこ舞いだが、この頃毛艶も良くなり、浮いていた肋も目立たなくなった。
上下する無防備な腹部とふわふわの毛髪を愛おしく眺める。
しかし今宵はやけに外が騒々しい。
沛然
はいぜん
たる
驟雨
しゅうう
が戸板を叩き鳴らす。
加えて強風で折れた樹木でも吹っ飛んで来たか。
「
……
」
違う。
明らかに意思を持って鳴らされている音だ。
心地好い眠気から一転、緊張が走る。
こんな天気にこんな時刻、こんな僻地へ一体何用だろうか。
もし相手が雨宿りを求める人間だとすれば厄介だ。
嵐が去るまで軒先を貸すか、最悪子どものいる寝所にさえ立ち入らせなければ大丈夫か。
耳と尾を仕舞い、そっと後ろ手に襖を閉めた。
一歩一歩近付く毎に聞こえてくる、戸を叩く音と呻くような人の声。
背筋に冷たいものが走る。
いや、物怖じなんかしてねぇし。
此方人等
こちとら
伊達に長く生きてないんで。
全然これっぽっちも怖くねぇから。
「
……
た
……
て
……
」
本能的に総毛立つ恐怖心と子どもだけは守らねばという使命感。
腹を括って玄関のつっかえ棒を外し、戸を引き開けた。
「こやなぎくん
……
たすけてくださぁい
……
」
想像してみてほしい。
目の前の全身隈無く濡れそぼち、肘までの長髪が垂れ下がった人影から、啜り泣き混じりの恨めしげな声音で名前を呼ばれた戦慄を。
「
……
」
そりゃ気を失うのも致し方無い────と思ってほしい。
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