三毛田
2024-08-31 21:59:04
1057文字
Public 1000字
 

36 06. 停滞した空気

36日目 冷たく暗い場所でも君といれば

 相変わらず、ここはひどく冷たく寒く淀んでいる。
「上着貸すよ」
「お前がちゃんと着ていろ。俺はまだ耐えられる」
 穹が己の上着を脱ぎながら告げるので、そっとそれを止める。ここは、短命種である彼には、俺よりも寒く感じるだろう。
「耐えられる、耐えられないの問題じゃないんだよ丹恒。俺が、お前にそんな顔をして欲しくないから言ってるんだ」
 そんな顔とは、どんな顔なのだろうか。
 鏡がないから確認できないな。と思っていると、ふわりと上着をかけられ。
「穹」
「丹恒、青い顔してるよ。俺はまだ……ふぇくしょい」
「言わんこっちゃない」
「何してるの。列車の客人に何かあったらどうするの」
 早くしなさい。と、寒鴉の声。
 そして慌てたように渡される上着。
「ありがとう」
「協力してもらってるのはこっちだから。動きは阻害されない?」
「ああ、大丈夫だ」
「うん。俺も大丈夫」
 俺たちが頷くと、彼女はほっとした表情になり。
「また来てもらってごめん。でも、あなたたちなら、自分の身は自分で守れるから調査に同行してもらいやすくて」
「寒鴉の頼みだから」
「そう言ってもらえると助かる。出発するけど大丈夫?」
「うん。行こう、丹恒」
「ああ」
 当たり前のように差しだされる手。寒鴉の表情が一瞬動いたが、何も言わない。彼女も慣れてきたのだろうか。それはそれでちょっと困る。気もする。
 誰も俺と穹が手を繋ぐことに対して疑問を持たないというのは、おかしいことだ。
『あら。あんたたち付き合ってるんでしょう? それなら、もっと堂々としていなさい。どっちも、異性からの視線を集める顔をしているのだから』
 と、姫子さんに言われたことを思い出した。
「二人が安心するなら、それでいいと思う。でも、手を繋いでいることで咄嗟に動けないのは困るけど」
「俺が武器を出す前に、丹恒が時間を稼いでくれるから大丈夫」
「何処からそんな自信が」
 俺が呆れると同時に、寒鴉も呆れている。まあ、穹のどこから来るのかよくわからない自信はいつものことだ。
「二人がそれでいいなら、私は何も言わない」
 そういう気づかいをされると、急に恥ずかしくなってくる。
「列車の客人にこんなことを頼むのは、本当はよくないってわかってる。でも、信頼できるのはあなたたちだけだから」
「そっか。今はあっちもこっちも大変だもんね」
「ええ」
 寒鴉の案内の元、幽囚獄の中を目的地まで歩く。
「丹恒、大丈夫だよ」
「ああ。俺もお前がいれば大丈夫だ」
 見つめ合う。