shirajira
2024-08-31 19:41:03
7453文字
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後日、同じ言葉が彫られた金の腕輪を贈られた

2024.8.31ビマヨダワンドロより。お題「手紙」。古代インドでは貝葉という椰子の木とかの葉を使ったものとか、金板とかで手紙のやり取りをしていたっぽいらしいです(マハバの頃はどうだったか不明だけども)。

 情報共有は大事だ。後で知らなかった、と言わせないためにも。
「おいマスター、わし様を五王子のやつらと同じパーティーに入れるなよ? わし様はあいつらのことが大っ嫌いなんだからな!」
 ドゥリーヨダナがそう言うと、編成を考えている途中だったマスターは瞬きをし、「カルナさんなんかはアルジュナと同じパーティーだと張り切るけど、ドゥリーヨダナはそういうのはないの?」と首を傾げた。
「アルジュナと一緒なんて腹が痛くなるだけだろ。まあカルナのやつがあいつに執心するのも、わからんではないが……
「いや、アルジュナじゃなくて、ビーマと」
 マスターの無邪気すぎる言葉に、ドゥリーヨダナは顔をしかめた。
「ビーマぁ!? やめろやめろ、絶対に嫌だ。わし様は昔から、子供の頃からずーっと、あいつが嫌いなのだ!」
 思わずテーブルをドンと叩く。グラスの中身が揺れた。子供サーヴァントたちが作ったレモネードを溢さぬようにと、マスターが慌てた顔でグラスを掴む。
「もう、物に当たらないでよ。わかった、ドゥリーヨダナをビーマたちとは一緒に編成しないから――あ」
 マスターがポカンと口を開けた。同時に背後に圧を感じて、ドゥリーヨダナは振り返った。美しい金刺繍が、突然目の前に壁が現れたかのように視界に広がる。
 その持ち主が誰か、漂うスパイスの香りを嗅ぐまでもなく、ドゥリーヨダナは知っていた。
「ビーーーーマがおるではないか! 一体何しに、むぐっ」
 口に何かを突っ込まれる。甘い。もぐもぐと咀嚼していると、マスターが「うわあ、マドレーヌ!?」と目を輝かせた。
「おう、レモネードに合うだろ? 熱心なのは結構だが、あんまり根を詰めすぎるなよマスター」
「ありがとう、ビーマ」
 ちらり、とビーマがこちらを見下ろしてくる。なんだその目。何か文句があるのか。
 ドゥリーヨダナは何か素晴らしく痛快な言葉でビーマをやり込めてやろうと、口に突っ込まれたマドレーヌを飲み込んだが、それより先にビーマは皿を置いて、その場を去ってしまった。後に残ったのは、行き場のない憤りだけである。
 レモネードに手を伸ばす。甘酸っぱい炭酸が口の中に清涼感をもたらす。確かに、マドレーヌと合っていた。
 とは言えレモネードもマドレーヌも甘い。甘いばかりのそれは、ドゥリーヨダナの気に入るものではなかった。マスターのような子供舌のやつらは気に入るんだろうが、とうまうまと舌鼓を打っているマスターに目をやる。
「ドゥリーヨダナ? もっと食べてもいいよ」
 視線に気づいたらしいマスターが、マドレーヌが盛られた皿をこちらに向かって押した。ドゥリーヨダナは首を横に振る。
「わし様はもういい。飽きた。お前が全部食べろ」
 マスターのために用意された一品だ。ドゥリーヨダナのためのものではない。たまたまマスターと一緒にいたのがドゥリーヨダナだったから、おこぼれに預かった、それだけ。
 あくまでついでだ。いつだってそうだ。
……やっぱり、あいつのことは嫌いだ」
 呟いた声は、マスターがレモネードをズゾゾゾ、と啜る音でかき消された。


 腕を引かれた、と思ったら、そのまま部屋に連れ込まれた。簡素な部屋で香も炊かれていないというのに、染み着いた持ち主の香りがドゥリーヨダナはこの部屋にとって異物であると突きつけてくる。
「なんだいきなり! まさか人目を忍んでわし様に暴行でも加えようというのか? そんなことをしてみろ、わ、わし様が許したとしても、わし様の友たちが黙ってないからな!」
 怖じ気づきかけたのを必死に隠して、大声を出す。けれども返ってきたのは眉根を寄せた顔だった。
「うるさいやつだな。別に何もしやしねえよ。ちょっと確認したいことがあってな」
「確認したいこと? わざわざお前の部屋で? 何か後ろめたいことか」
 でなければ、部屋に引きずり込んだりはしないだろう。そう思っての言葉だったが、ビーマは呆れを隠しもしない目を向けてきた。
「何でお前はいちいちそう、ひねくれた物の考え方をするんだ。……ま、他のやつがいるところでは聞きにくかったのは確かだが」
 口ごもるビーマは珍しかったが、初めて見るわけでもないので、ドゥリーヨダナは「用件をさっさと言え」と切り捨てた。ここで問答を続けるより、その方が早いと気づいたのだ。早く腕を掴んでくる手から解放されたい。
「ああ。……お前さっき、マスターと話してただろ」
「ん? 編成の相談のことか? それがどうした」
 そういやこいつ、マドレーヌを出しに来たな。会話を聞いていたのだろうか。ドゥリーヨダナが瞬きをすると、ビーマが言った。
「お前、俺のことが昔からずっと嫌いだと、そう言ったよな」
「言ったが? え、まさか嫌いと言われた腹いせにわし様に暴行を?」
「違う。……あれ、嘘だろ」
「は?」
 ドゥリーヨダナはビーマの顔を見た。ビーマは真面目な顔をしていた。
「お前が俺のことを昔からずっと嫌いだったっていうのは、嘘だろ」
「聞こえなかったわけではないわ! え、何、は? 何を根拠にお前」
「手紙、くれたじゃねえか」
 唇を尖らせたビーマは、いやに幼く見えた。
「手紙?」
 何のことだ、と言いかけて、ドゥリーヨダナは思い出した。
 
    ★

 何をやってもドゥリーヨダナの上をいく、憎い五王子たちだったが、一人一人がパーフェクトなわけではなかった。それがドゥリーヨダナの救いになることは特になかったが。
 従って、ビーマが文盲であると知った時、ドゥリーヨダナは馬鹿にする気持ちが沸くより先に、まず素直に驚愕した。
「お前、文字も読めんのか?」
 ドゥリーヨダナの言葉にビーマは恥じる素振りもなく、「俺が読めなくても、兄貴やアルジュナが読めるからな」と言った。
 かつて二人で弟子入りをした、バララーマから手紙が届いた。先に読んだそれをビーマに渡そうとしたら、文字が読めないから読んでくれと、そう言われた。そこで初めて、ドゥリーヨダナはビーマが文盲であることを知った。
 まだ成人前、王位を継ぐのがユディシュティラか、ドゥリーヨダナかは決まっていなかった頃のこと。決して仲は良好ではなかったが、日によっては穏やかに会話できることもあった、そんな日々の一幕だ。
「ユディシュティラやアルジュナが読めればいいって……いやそれはそうかもしれんが、叔母上は何も言わんのか?」
「母上は、俺は今まで通り強く元気でいればいいって、そう言うぜ」
 叔母が息子たち五人全員を平等に目配りできていないのは、端から見ても察せられた。まず長男のユディシュティラ、それから末っ子のサハデーヴァ。この二人は繊細なのもあって、特に叔母は心を砕いているようだった。
 次は優秀なアルジュナだろう。ビーマは……下手をしたら、一番放っておかれているかもしれない。何せ毒を盛られても死なないようなやつだ。元気にしていればそれでいい、そういう結論になってもおかしくはない。
 おまけに叔母は、息子たちで手一杯だろうに、ドゥフシャラーの面倒まで見てくれることもある。完璧を求めるのは酷だ。ドゥリーヨダナたち百王子だって、ドゥリーヨダナとそれ以外では、父母からの関心には差がある。
 とは言えだ。王族なのに、目が見えているのに、文字も読めないやつがいるとは思わなかった。ドゥリーヨダナの父だって、金に彫られたものであれば、手で触れて読むことができるのに。
 きちんとした教育を受けていない。それがマイナスになることすらあれ、プラスになることはない。
 そのことを、ビーマはわかっているのだろうか。
「で、バララーマのやつは何て?」
 せっついてくるビーマに、ドゥリーヨダナは呆れた。他人の家の教育方針なんてどうでもいいかと考え直す。
「お前、あれだけ拳骨落とされたのにまだ師匠のことを呼び捨てに……今度会った時、チクってやろうか」
「んなことしなくても、あいつのことは真っ向から呼び捨てにするつもりだぜ。いいから、読んでくれって」
「それが人に物を頼む態度か?」
「あとでうまいマンゴー、採ってきてやるよ。森の奥にいい木を見つけたから」
 それならまあ、とドゥリーヨダナは手紙を読み上げた。月並みな挨拶から始まり、ドゥリーヨダナとビーマも知っている相手の家に赤ん坊が生まれたことなどが記され、二人とも元気で仲良くやっているように、という願望のような言葉で締められていた。
「この最後にちょろっとだけ書いてあるのはなんだ?」
 ドゥリーヨダナの横から手紙を覗き込んでいたビーマが、手紙の最後の署名を指差した。それだけ少し離れているから、気になったんだろう。
「それは師匠の名前だ。こっちが、俺とお前の名前。手紙っていうのは頭に送る相手の名前を、最後に自分の名前を書くもんだからな」
 署名と反対に、手紙の頭に書いてある文字を指差す。ビーマより先にドゥリーヨダナの名があって、それだけで気分がいい。
「ふーん。なあ、どこまでがお前の名前で、どこからが俺の名前だ?」
「ここまでが俺の名前で、こっちがお前の名前だが」
 ドゥリーヨダナが教えてやると、ビーマはじっと手紙を見つめ、かと思えば突然しゃがみこんだ。指で地面をなぞる。
「な、これで合ってるか?」
 初めて書いた割には妙に自信のある筆致で、ビーマの名前が地面に書かれていた。ドゥリーヨダナが答えないでいると、ビーマが更に指を走らせる。今度はドゥリーヨダナの名前が、その横に並ぶ。
「なあ、合ってんのかよ、これで」
「あ、ああ。合っている、が」
 頷いてやると、ビーマが満足げな声で「そうか!」と歯を見せて笑った。
 読めなくてもいいと言っていたが、強がりか何かだったのだろうか。
……文字、読み書きができるようになりたいのか? 何ならこの俺が教えてやっても……
「いや、それはいいや」
 あっさり断られて、拍子抜けする。ビーマに偉ぶるチャンスだと思ったのに。ドゥリーヨダナは気分が下がるのを感じながら、「俺に教わるのは嫌ということか?」と尋ねた。ユディシュティラにでも習うつもりなんだろうか。
「兄貴に迷惑はかけねえよ。別に文字が読めなくても、今まで困らなかったからな。その時間で他のことする方がいいや」
 何を甘えたことを。言いかけて、ドゥリーヨダナはやめた。
 ビーマはドゥリーヨダナとは違う。兄の助けになることを求められている彼は、長子として、王として生きる素質を求められているドゥリーヨダナとは、必要とされるものが違う。
 求められるものも、求めていいものも、違う。どれだけ近くにいても、隣に並び立てる存在ではないと、そう突きつけられるばかりだ。
 健康的な浅黒い肌が、陽光を浴びて黒曜石のように輝いて見える。こちらを見る透き通るような瞳は、どんな宝石より目を奪った。
 目の前の少年を自分の物にできるだけの価値のあるものを、自分は持っていないことをドゥリーヨダナは知っている。欲しいと、口にすることを許される立場ではないことも。
 ドゥリーヨダナは目を伏せた。仲良くしろと師匠の手紙にあったが、難しい話である。地面の上に書かれた二人の名前だけが、まるで仲睦まじいように並んでいた。


「やる」
 ドゥリーヨダナが押し付けた、手のひらに収まるような小さな金板に、ビーマが瞬きをする。
「なんだこれ……俺の名前か?」
「よく覚えていたじゃないか」
 そう言ってやると、ビーマはどこか誇らしげに笑った。別に褒めてないわ、と内心ドゥリーヨダナは吐き捨てる。
 ビーマは金板に書かれた文字を指で何度もなぞり、「俺の名前と……あとは何だ? 最後のこれはお前の名前だよな?」と小首を傾げた。興味なさげだった割に、あの一回で覚えていたらしい。
「ああ、まあ気にするな。これはな、まじないのようなものだ。さるバラモンから教わった、ありがたーいやつだ」
「まじない?」
 警戒した表情を浮かべるビーマに、ドゥリーヨダナは柔らかな作り笑いを向けた。
「そう怖がるな! これはお前がいつでも腹一杯食事を取れるように、ひいてはそれだけこのクルの土地が豊かであるようにと、そうした……言わば祈りでありお守りであるのだ」
「ふうん……? 何でその、祈りだかお守りだかに俺とお前の名前が書いてあるんだよ」
「それはこのまじないの条件が、俺とお前、二人だけの秘密にすること、というものだからだ。良いか? これを誰にも見せてはいかんぞ? 当然、失くすのも駄目だ。お前を見込んで俺はこれをお前に託すんだからな?」
 ビーマは神妙な顔をして、金板を見つめている。これでもビーマは、信心深い五王子の一人である。こう言えば、きっと誰にも金板を見せないだろう。ドゥリーヨダナは内心笑った。
 全部嘘っぱちである。金板に書かれたのは、祈りでも、お守りでも何でもない。書かれているのは他愛ない言葉だ。
 好きだ。
 それだけ。一生伝える気のない、生まれた瞬間に心の奥底に閉じ込めてしまった願い。
 嫌いの中にほんの一握り紛れ込んだ、正しくないもの。ぶつけることすら叶わないそれを金板に彫りこんでいると、すっと心から熱が外に飛び出していくような気がして、楽になれた。
 本当は、自分の名前を彫る気はなかった。なのに、気がついたら彫ってしまっていた。誰かにバレたら面倒なことになるだけなのに。
 けれど、そのまま渡してしまった。ドゥリーヨダナの名が書かれたものをビーマが大事に持つと思うと、まるでビーマが自分の物になったみたいで、気分が良かったから。
 ビーマは気づかないだろう手紙。渡したのに受け取ってもらえない気持ち。行き場のない、不要なばかりの気持ちの終わらせ方としては、悪くないだろうと思った。
……これを、誰にも見せなきゃいいんだな? わかった。他でもないお前が俺を頼ってきたんだ、応えねえわけにはいかねえな」
「はあ!? 頼っておらんが!?」
 にかり、と笑ったビーマに、思わず否定の声が出る。ビーマはまだ、指で彫られた文字をなぞっていた。

    ★

「これ、お前が俺にくれただろうが」
 ビーマが手を開く。何度も触れられたのか輝きこそ色褪せてはいるが、そこには確かに金だとわかるものがあった。文字が刻まれた金板には、紐でも通していたのか端の方に穴が開けられている。
 刻まれた文字は短いものだ。言伝てのような、短い手紙。
『ビーマへ。好きだ。ドゥリーヨダナより』
……サーヴァントになって、生前読めなかった文字が読めるようになった」
 ビーマの静かな声が、耳を素通りする。聖杯は必要な情報をサーヴァントに与える。言語能力はその最たるものだろう。ドゥリーヨダナは歯噛みする。
 生前、サーヴァントの存在なんて知らなかった。知っていたら、ドゥリーヨダナはこんなものをビーマに渡しはしなかったろう。
 こんな、一目で死後英霊になるとわかるような男には。
……なんだ、生前わし様に騙されたことを、根に持っておるのか。残念だったな、まじないでも何でもなくて。察するに、わし様の死後、国を治めるのに苦労したか」
 国庫は限りなく空に近かったはずだ。ドゥリーヨダナはそれだけのものをあの戦争に賭けていた。出せる全てを出し尽くしても、安心はできなかったから。
「しかしなあ、例え戦いの末手に入れたものが荒れた土地であってもだ、治め上げてみせるのが良い王であり、また勝ち取った者の務め――
「話を逸らすなよ、ドゥリーヨダナ。俺の言いたいことは変わらん。お前が昔からずっと俺のことが嫌いというのは、嘘だろ」
 ビーマは真っ直ぐにドゥリーヨダナを見つめてくる。その一挙一動も見逃さない、少しでもおかしな素振りがあればただではおかないとでも言うように。何一つ、流されず。
 そういうところが、嫌いだった。そういうところが、眩しかった。揺るがないお前が隣にいてくれたらと、そう思って、叶わないことに苦しんだ。
……嘘ではない。わし様はお前のことが嫌いだ」
 ああ、そうだ。嘘じゃない。嫌いだ。ずっとずっと、前から。
 ただ、好きでもあった。それだけだ。
 ずっとずっと、昔から。
「そうか」
 ビーマが、ドゥリーヨダナの腕から手を離した。納得したのか。そう思ってドゥリーヨダナが目をやれば、ビーマは変わらず真っ直ぐな瞳で、こちらを見ていた。
「返事」
「あ?」
 短すぎる言葉にドゥリーヨダナが口をぽかんと開ければ、ビーマが言い含めるように、言葉を重ねてくる。
「返事、書くから、待ってろ」
「は?」
 返事。何の。……手紙の?
 一方的に送りつけておしまいのはずだった、もうとっくに終わったはずのそれを、今さら拾い上げられそうになっている。気づいて、ドゥリーヨダナは身震いした。
 返事なんて欲しくない。期待なんてしたくない。どうせ自分が傷つくだけだ。
「い、嫌だ」
「嫌だじゃねえ。お前が始めたことだろうが」
「それは、だって、お前が文字を読めんと言うから!」
 こんなのは卑怯だ。聞いていた話と違う。今さら、今さら過去のことを持ち出して、ドゥリーヨダナの心を踏みにじようとするだなんて。
「文字の読める俺は、嫌いかよ」
 ビーマが顔を歪めた。そんなことは言っていない、とドゥリーヨダナは思う。
 文字が読めないお前を好きになったわけじゃない。好きになったお前が、文字を読めなかった。伝わらないのなら伝えてないのと同じことだから、それなら本来許されない気持ちを、伝えてもいいかと思った。
 それだけ。それだけだ。なのに。
 伝わってしまった。返事を書くと、言われてしまった。
 そんなの。そんなの、期待してしまうだろうが。気になってしまうだろうが。
 文字にして、吐き出したはずの気持ちが、いつの間にかドゥリーヨダナの心の内でまた大きくなってしまっている。
 ずるい。ずるい、ずるい、ずるい。ずるい!
「お前なんかっ、嫌いだ!」
 言い捨てて、ビーマの部屋から飛び出す。後ろから「返事、必ず書くからな!」と聞こえてきた声に、耳を塞ぎたくなったが、生憎と乱れた心はその言葉に激しく弾むばかりで、手は動かなかった。