ニシナ
2024-08-31 13:20:32
1445文字
Public チョイダリ
 

サプライズの前日(チョイダリ/カズリコ)

8/30はカズイの誕生日だったので昔書いたと思われるSSを再掲しておきます。
確か同人誌(頒布終了)に載せていたものです。

「ただいまー」
「うおわぁああっ!」
いつもより少し早めに家に帰ると、義弟の叫びにも似た声と共にキッチンから
ガシャン! と盛大な物音が聞こえた。
「えっ……カズイ? 大丈夫?」
慌ててローファーを脱ぎ、キッチンへ向かう。
すると中から聞こえてきたのは
「ねーちゃん絶対入んなよ! 今入ったらやべーからな!」
という焦りを隠せないカズイの声。
「わかった。入らないけど……本当に大丈夫なの?」
「ん。ケガとかそういうのはしてない。ちょっとビビってボウル落としただけだから」
大きな音はステンレスのボウルが落ちた音だったらしい。
「それならいいけど……お母さん帰ってくるまでに片付けるようにしようね」
「んー」
とりあえず大丈夫そうなので、わたしは自分の部屋に行く。
義弟のカズイは、時々こうして(あまり上手ではないくせに)料理をする。
なかなか上達しないみたいだけど、わたしも人のことを言えるほど上手でもないので、
できるだけ口出しをしないことにしている。
    *    *    *     
夕食の後。
両親がリビングでくつろいでいる間に、私はキッチンへ向かう。
いつものように、夕食の片付けと明日のお弁当の仕込みをしようと思いキッチンの扉を開けると、そこには目を丸くしたカズイがいた。
「な、な……ねーちゃん!?」
「え、カズイ。何やって……
手には絞り袋と、山のようにうずたかく積みあがっている生クリーム。
スポンジのようなものに先にろうそくを刺したのか、ろうそくの間からこぼれるクリームが不思議な造形物のようにも見える。
……えっと」
クリスマス? ……には、まだ早いよね。いまから練習していたのかな?
……にしても、この見た目は一体……
言葉に詰まっていると、顔を真っ赤にしたカズイは困ったように首を振り、絞り袋を調理台に置いた。
……明日、の」
「あした?」
「ねーちゃんの、誕生日……俺が、一番に祝おうと思って……
黒く焦げたパンケーキ? のようなものの上に、山盛りの生クリーム。横には乱切り? になったフルーツもおいてある。
「まさか……この間テレビで見たパンケーキを?」
バツが悪そうにカズイは頷いた。
みんなでテレビを見ていた時、わたしが思わず声を上げてしまったパンケーキ。
何枚か重なったパンケーキの上に山のようにデコレーションされた生クリームと、
それから彩鮮やかなたくさんのフルーツ。
カズイはあれを再現しようとしてくれていたのだ。
「えええ……どうしよう、すごい嬉しい……
「マジで……? でも俺、明日見せるつもりだったし、パンケーキ焦げてるし……
「ううん! 最高のプレゼントだよ! ありがとう、カズイ!」
パンケーキが黒焦げでも、生クリームがものすごいことになっていても、カズイの気持ちが何よりも嬉しい。
思わずカズイに飛びついて、小さい頃のようにぎゅーっと抱きしめていた。
「わっ、バカやめろって……おい、ねーちゃん……!」
慌てて引き離そうとするカズイも愛おしくて、離れないようにぎゅっと力を込めてみる。
するとカズイもあきらめたのか、離そうとする手から力が抜けた。

……ありがとう、カズイ」
「いいって……つか、誕生日祝ってんのこっちだってのにな」

応えるように腰に腕が回されて、体がぎゅっと引き寄せられる。
こんな風に抱きしめ返されることがなかったわたしは、可愛いと思っていた義弟の反応に息が止まりそうになってしまった。