ふるさと さくら
2024-08-30 07:24:23
15525文字
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⑥オルアリ テーマ『学パロ』

性癖パネルトラップ⑥
学パロのオルフェウス×アリス

🧐は最後にちょっとしか出てきませんがオルアリです。記憶の灰燼要素強め。なんでも許せる人向け



 向日葵の首が傾き始めている。
 通り雨の残骸、黒いアスファルトの鏡。窪んだ空に、一足早いカラスの帰宅が映り込む。
 曇天の流れ去ろうとしている空は、最後の水色を隙間から覗かせて、オレンジの暮れに染まりつつあった。
 そんな夕陽を眺める瞳が、とりとめもなく友人に問いかける。
「夕暮れの、月の河公園……
 おぼつかない声に、向かいに座る友人のペンの手が止まった。計算式を淡々と綴っていた柔らかな指先はノートに伏せられ、ブラウンの髪が怪訝にアリスを見やる。
「あの人の新作ですか」
 すると窓辺に向けていた目を教室に戻したアリスは、少しだけ恥ずかしそうに微笑んだ。
「はい。二学期の初週の分まで、オルフェウスさんは投書に原稿を入れてくださったので」
「それは何よりです」
 そう言って友人────メリーは再びノートに視線を落とした。人気の少ない夏休み、今日も2年A組の教室は自主学習のための空間として開放されている。アリスとメリーはこうして時折、夏休みの間を縫って自主勉強に勤しんでいるのだった。とはいえ勉学に励んでいるのは専らメリーの方ばかりで、アリスはというと毎回興味のある時事を調べたり、図書館から借りてきた過去の新聞をコピーしては、自分の趣味を詰めたノートにスクラップした文章を切り貼りする時間に耽っていた。もちろん、課せられた宿題はとうに終わっている。そういうものも終えた上で、彼女は趣味を謳歌しているのだった。
「どうでしたか? ペンネーム『オルフェウス』さんの新作は」
「それはもちろん、すっごく面白かったです! 聞いてくれますかプリニウスさん、私も念のためチェックしたんですが、まずは驚くべきことに誤字脱字の訂正の必要がなく、さらに字数も我が新聞同好会のコラム欄にぴったりだったんですよ! 絶対にオルフェウスさんはエウリュディケ新聞の愛読者だと思いましたね!」
「それはそれは」
「何より今回の短編も面白くてですね、読みますか!?」
「結構です」
「どうしてですか」
「私はデロスさんの作った新聞が読みたいだけなので」
 メリーの素っ気ない態度に、アリスは思わず頬を膨らませた。友人の落ち着いていて大人びたところは尊敬に値するが、そんなつれないことを言わなくたっていいのにと思ってしまうのは、まだまだ子どもなのだろうか。そうでなくとも、メリーが自分を見つめる眼差しは時折対等な友人ではなく、どことなく見守るような雰囲気に満ちていることもある。つまるところ、メリーはアリスを子どもっぽいと思っているのだろう。
「もう。せっかく先読みに誘ったのに」
「すみません。でも楽しみはその時まで取っておかないと」
「ふぅん。プリニウスさんって、ケーキのトッピングは最後に食べるタイプなんですね」
「そう、私は後味を大切にしたい性分なのです。目先のものばかりさっさと口に入れる浅ましい人たちとは違うの」
「そうなんですね。私も苺は最後に食べたい派かも」
 くすくす、と少女たちの笑い声が教室に響く。それにつられるように、スピーカーから偽りの鐘の音が鳴り出した。
……あら、もうこんな時間。ごめんなさいデロスさん、バスの時間が近いから……もう帰らないと」
「わ、もうそんな時間ですか」
 壁にかけられた時計は、斜めに差し込む夕日に照らされている。その短針が五の字を指しているのを見て、アリスは思わず立ち上がった。会話をしながらさり気なく片づけをしていたメリーに、いつの間にか後れを取ってしまっている。慌ててスクラップした新聞をカバンに詰め込み、がたんと椅子を押して机の中にしまい込んだアリスは、次いで窓の施錠を確かめるべく鍵の元へと走った。
「よし、全部閉まってる。行きましょうプリニウスさん、バスに遅れちゃいますから」
「えぇ」
 足早に少女たちは駆けていく。夕暮れの教室はがらりという音を立てて、やがて無音の静寂を迎えた。
 誰もいない部屋。その窓辺の席には、置き去られた原稿用紙が────数枚。
 しかし、少女が『忘れ物』に気がついたのは……翌日になってからのことであった。




 ゴミ箱。
「ない」
 引き出し。
「ない」
 ロッカー。
「ない」
 もう一度、自分のカバン。
「な、な、な、な……
 よろり、とアリスはふらついてしまった。がたんとぶつかるは入口の扉、振動で2年A組の札が一瞬だけ軋んだ音を上げる。その様子を、メリーは至極気の毒そうに眺めることしかできなかった。
「ないーーーーーーーッッッ!! オルフェウスさんの原稿が、ない。ない、どうして……あぁ、どうしてこんなことになるの。私はただ、先生の新作を自慢したかっただけなのにぃ……
 そう。此度の行方不明者は、かのオルフェウス先生の手書き原稿。丁寧に万年筆でしたためられた『月の河公園の悪夢』という原稿用紙四枚分の名作は、この一夜にしてあっという間に姿を消してしまったのだ。
「本当にご自宅にはなかったのですか」
「もちろんです!」
 冷静なメリーの耳に、半泣きになったアリスのイエスが飛んでくる。金属バットで殴られたような大声に、さすがのメリーも一瞬だけ顔をしかめて身じろぎせざるを得ない。
「部屋の隅から隅までちゃんと見ました。でも見つからなかったんです、藁にも縋る思いでお母さまにも手伝ってもらったけれど、ダメでした。私の私物にも、家のどこにも原稿はなかったのです」
「では、バスは?」
「問い合わせました。でも……落とし物の届け出はなかったと」
 自分で言っていて絶望感が増しているのか、アリスの声は次第にしょんぼりとして小さく成り果ててしまった。そのうちアリス本人までもが縮んでしまうような気がしたので、メリーも淡々と追及することができず肩を落とす。
「困りましたね。デロスさんのエウリュディケ新聞に関しては、悔しいこと極まりないですが……オルフェウスさんの新作を楽しみに愛読している層も少なくありませんから」
「ふふ……やっぱり、皆さん私のニュースには興味がないんでしょうか……そうですよね、感想もほとんどオルフェウスさんに宛てられたものですし」
「デロスさん……
「いいんですプリニウスさん。本当のことですから」
 時は午前、まだランチには早すぎる時間だ。今日も校舎は夏休みに満ち溢れていて、閑散としていること極まりない。教師の目が少ないのをいいことに、アリスはおもむろに歩き出すとベランダに続く大窓の鍵をくるりと回した。
 隙間を開けば、吹き込む灼熱の風。だというのに、アリスは寂しげな顔で古びた手すりに腕を絡めていく。直射日光を受ける金糸が、きらきらと輝いていた。
「そもそもが、同好会とは名ばかりの趣味のようなものですから。私がこうして新聞を作っていられるのも、ひとえに顧問のマリー先生が物好きだったからです。ひとりで活動しているくせに、一丁前に活動費をいただいて……あまつさえその支えを外部の作家さんに頼っているのですから、笑えませんよね」
「そんなことは」
「現実、そんなこともあるんですよ。本当に、プリニウスさんの仰る通りです……あぁ、本当に未熟ですね。人からいただいた原稿を失くしてしまうなんて、記者の名折れです。このあたり……二学期からは、書かなくてもいいかなぁ。なんて────」
「いいえ」
 中庭に植えられたプラタナスの樹が、風に吹かれてさざめいた。
 アリスの前髪を空気が揺らす。手すりに落としていたいた視線を逸らし、凛とした声の方を向く。隣に立っている友人の顔は相変わらずよく見えなかったが、それでも口元の確固たる意志がアリスの葛藤を貫こうとしている。プリニウスさん、と小さな声が溢れると、呼ばれた彼女はくすりと笑った。
「書かなくていい、なんて言わないでください。多くの人の好みなんてどうでもいい……私は、デロスさんの調べ上げた記事をいつも楽しみにしているのです。それが消失する危機ともなれば、いくらでも力を貸しますよ」
………
 未だ迷ったような表情を浮かべる友人に、メリーはそっと手を伸ばす。柵の上に乗せられた指先に手のひらを重ねて、目元を伏せた少女は少しだけ首を傾けた。
「探しましょう、オルフェウスさんの原稿を」
「でも。もう探す当てなんて」
 すると、メリーは任せて欲しいと言わんばかりに胸に手を添えた。
「大丈夫です。私に考えがあります」




「それで、昨日から今日までの生徒の出入りを知りたいのね?」
「はい」
 舞台は昼食時の職員室。今日の出勤担当は、アリスのクラス担任も勤めるマリー先生だ。やたらと気位の高い仕草を見た生徒たちからついたニックネームは『女王様』────そんな彼女のランチタイムを邪魔してしまったことを少し申し訳なく思いつつも、アリスはマリーの問いに力強く頷いた。
「名簿、名簿ねぇ……ちょっとルキノ先生、管理名簿ってどこだったかしら?」
 組んでいた足を解いて立ち上がると、マリーは三つ隣の席で生徒と話し込んでいた生物担当教師に声をかけた。見知った先生が少し離れていくと、自然と緊張の糸も解けそうになる。職員室というものは、生徒にとってはいわば猛獣の檻の中に等しい。何も悪いことをしていなくても、無意識にプレッシャーにやられそうになる。そういう空間なのだ。
……すまない、少し呼ばれているようだ」
「いえ。用は足りましたので、私はこれで。失礼します」
「うん、君は文系志望だが化学の点数は悪くないからね。次のテストではもっと励むように……何だねマリー先生、管理名簿? ここだよここ、ほら」
 生徒からは『教授』と呼ばれているルキノ先生は、話し込んでいた生徒の対応を終えつつスルリとマリーの方へとやって来た。バインダーを手にしてこちらに近づいてくるルキノの横を、先程の生徒が追い抜いていく。ブラウンの髪に珍しいモノクルをつけた生徒は、軽く会釈をして職員室を立ち去っていった。
 その後ろ姿に何となく後ろ髪を引かれる思いを感じていると、唐突にマリーの大げさな声が頭の中に割って入ってきた。
「あら、さすがはルキノ先生ね。何でもご存じだわ」
「マリー先生は、もう少しご自身で見つける努力をされた方がいいかと思うがね」
「どうして? こうしてあなたが見つけてくださったのだからいいでしょう?」
………
 何とも言えない顔を浮かべるルキノだったが、それはそれとしてアリスたちの方に向き直る。
「さて、記者さん。この手がかりで、君の失くし物が見つかることを祈っているよ」
「ありがとうございます、ルキノ先生」
 リストを受け取りながら、アリスは明朗なる感謝を口にした。これが調査の第一歩目だ、大切に扱わないと。
「君の作っている新聞同好会の紙面だが、職員の中では好評でね。ぜひともオルフェウスの新作も読みたいんだ……頑張ってくれたまえよ」
「そうよぉ、あなたのニュースがわたくしの密かな楽しみなんだから。頑張って頂戴ね」
……はい!」
 じわり、と胸の内が熱くなるような感覚がした。アリスはバインダーをぎゅっと抱きしめて、温かな先達の言葉に強く頷く。その様子を、後ろで付き添っていたメリーもまた柔らかな態度で見守っていた。
 その純真な態度が気に入ったのだろうか。顎に手を当て始めたルキノが、ふと思いがけない提案を繰り出してきたのだ。
「ふむ……実を言うと今日の私は若干暇でね。ちょっとした推理なら手伝ってあげてもいいぞ」
「ルキノ先生、本当ですか」
「まぁ……デロスさん、心強い味方ですね。先生、ぜひお願いできますか」
「任せたまえ」
「探偵ごっこ? 面白そうじゃない! わたくしにも見学させてくださる?」
 無論、マリーも心強いルキノという手札を見つけてくれた功労者だ。アリスはもちろんと言いながら、机の上に何枚かに束ねられた名簿を並べた。細かい行間には、誰がいつ、どのタイミングで学校を訪れて帰宅したのかがつぶさに記録されている。
 まず、さっと目を通したルキノが最初の三枚をおもむろに手に取った。
「プリニウスさん。君たちが昨日学校を出たのは何時かな」
「夕方の五時だったと記憶しています。私たちはバス通学なので、その時間には出発しないといけませんから」
「なるほど。では、2年A組の教室に再度入ったのは今日の何時かね、記者さん」
 あぁ、よく覚えている。開錠ギリギリの時間に出待ちして、校舎の中に入れるようになった途端走り出した自分の姿を、バルク先生が呆れたように見ていたのが記憶に新しい。
「九時ぴったりです。自宅に原稿がなかったので、すぐにでも探しに行こうと思って八時半から待っていました」
「他に待機していた生徒は?」
「いませんでした。つまり、誰かが教室に置き忘れた原稿をどうにかできるとすれば────」
 アリスの指先が、昨日の記録簿の上に伸びていく。アリスとメリーの名前が書かれた後、数行に留まった帰宅者の記録が要であることは明らかだ。
「昨日の午後五時から、完全に施錠される午後六時までの間。この間に原稿が動かされた可能性が高い」
「ご名答だ。記者さんは将来探偵になれるかもしれないな」
「そ、それほどでも……
 照れくさそうに笑うアリスの脇腹を、マリーが弱い力で小突く。褒め言葉くらい素直に受け取っておきなさいな、というニュアンスに、アリスはやはり気恥ずかしそうに笑うばかりだった。
「では、候補はこの三人の誰か……ということですか」
 メリーの言葉に、全員が名簿を覗き込む。すると、マリーが「あら」という声を上げた。どうしたのだろうとそちらを見やると、彼女はなぜか楽しそうな顔で目元を綻ばせている。
「先生、どうかしましたか」
「フレちゃんだわ、と思っただけよ」
「フレちゃん……あぁ、このフレデリック・クレイバーグさんですか」
 指し示した先には、容疑者のうちのひとりの名前が刻まれている。流麗な文字で書かれたそれは、どうやらマリーの知り合いであるらしい。
「そうねぇ。わたくしとしては、フレちゃんが小説の原稿を持ち去るとは思えないのだけれど……可能性を潰す必要があるなら、あの子に話を聞きに行ってもいいかも」
「クレイバーグさんは、いつもどちらに」
 すると、マリーはふっと優しく微笑んだ。
「南棟三階の第二音楽室。あの子はね、いつもそこで作曲をしているのよ」




 生徒の自習活動は、もっぱら北棟で行われている。ゆえに特別教室の多い南棟の人気は少ない。
 しかし階段を上がるにつれて、次第に美しいピアノの旋律が聞こえてくる。アリスはメリーと顔を見合わせて、マリーの言っていたことはどうやら正しいらしいことを確信した。
 踊り場を抜けると、メロディーの溢れる扉が目の前に現れた。意を決してノックをすれば、向こうで奏でられていた名もなき楽曲が唐突に止む。
「こんにちは、少しお話を伺ってもよろしいですか」
 扉越しに呼びかけると、少し間があってから椅子を引く音がした。やや億劫そうな足音が響き、人の気配が近づいてくる。メリーがほんの少しだけアリスより前に出た時、閉ざされていた音楽室の扉はゆっくりと開かれた。
 その先に佇んでいた人物を目にしたアリスは、その麗しさに思わず息を呑んだ。
……私に、何か?」
 さらりとした銀髪に、憂いを湛えたグレイの瞳。この人が、フレデリック・クレイバーグ────
「突然申し訳ありません、新聞同好会です。実は紛失物を探していて、お話を聞かせていただきたいのですが」
 アリスの申し出、そして新聞同好会というワードにフレデリックの表情の雲行きが怪しくなっていく。あぁ……と合点のいった声を漏らしつつも、顔つきは面倒くさそうなことこの上ない。ふっと目を逸らした彼は、両腕を組んで剣呑な視線をアリスに向けた。
「あの新聞同好会……つまるところあなたが、我らが賢い記者さんというわけですか」
「え、えぇと」
「失礼、あまり彼女を困らせないでくれますか。我々は少しだけ、あなたがご存じのことについて質問がしたいだけです。取材を申し込みに来たわけではありませんので」
 冷たい声で割って入るメリーと、フレデリックの視線が交錯する。やや敵対したかのような空気が流れ出し、一触即発の間合いが生まれる。
 いけない。私たちは、クレイバーグさんと対立するためにここへ来たわけじゃないのに。アリスは睨み合う二人の間に慌てて入ると、持ち前の繕った笑顔を浮かべた。
「と、とにかく。お聞きしたいことはひとつだけです。クレイバーグさん、昨日北棟の2年A組の教室に行かれましたか?」
 アリスは質問をぶつけつつ、フレデリックの反応を探る。彼が関与していないのであれば、淡々とした「否」という返事が下されるはずだ。しかし、どうしたことだろう。彼の表情は教室名を耳にした瞬間……少しだけ、何かに思い当たるような色を見せたような気がした。
……あいにくですが、私は基本的に自習目的では登校しません。昨日も北棟への用事はありませんでした」
「そう、ですか」
「失礼ですが、なぜ私にそんなことを聞きに来たのですか」
 予期していなかったフレデリックからの問いかけに、アリスの大きな目が驚きで見開かれる。とはいえ隠す理由はないだろうと、うら若き記者は真実のみを口にした。
「我がエウリュディケ新聞に寄稿してくださっている、オルフェウス先生の原稿を失くしてしまったのです」
……失くした?」
「はい。昨日その教室で、彼女……プリニウスさんに先行公開しようと思って持ち出したのですが、机の上に置き忘れてしまって。どうしても、見つけたいのです」
 アリスの告白に、フレデリックの表情は今度こそ意味深な感情に変化した。何か、言い淀んでいるような……言うべきか迷っているような、そんな気配だ。彼は何かを知っているに違いない────そんな証拠のない希望を、アリスは無意識に見出しそうになっていた。
 フレデリックの長いまつ毛が、随分の間使われていない黒板の方に向けられた。彼はおもむろに弾いていたグランドピアノへ歩き出すと、鍵盤蓋をそっと閉めていく。パタン、という乾いた音がした後、彼は真剣な面持ちでアリスに再び言葉を投げた。
「思うに、芸術とは。その人の魂が込められた結晶と言えるでしょう」
………?」
「記者さん、お聞かせ願いたい。あなたはなぜ、オルフェウスの原稿を取り戻したいのですか。新聞の知名度集めのため? それとも、他に有効活用できる方法を見出したから?」
 それは、と言いかけたアリスの目を、鋭い竜の爪のようにフレデリックが射抜いている。その冷たさに、思わず隣で佇むメリーを頼りそうになったアリスだったが……しかし、そうすることはなかった。彼女は唇を僅かに噛み締めた後、自らの思いを吐露することを決意する。見上げた視線に、偽りはなかった。
「それは……私自身が、オルフェウスさんの小説が好きだからです」
 フレデリックの突き刺す視線は、変わらない。これでは足りないのだ。
 もっと。もっと、意見を強固にする理由を。
「彼か、彼女かは分かりませんが。閑古鳥の新聞コラムに、初めてオルフェウスさんが投書を投げ入れてくれた時……私、本当に嬉しかったんです。皆さんも読んでくださったかは分かりませんが、オルフェウスさんが初めて私に語り聞かせてくれた物語は、短編にしておくのがもったいないくらいに素敵で、綺麗で美しくて……今でも、あの話を読み返すんです。それくらい、私がオルフェウスさんの思い描く風景や、センテンスに憧れているんです。まだまだ事実を分かりやすくまとめ上げることでせいいっぱいの私にとって、勉強になることもたくさんありました」
 あぁ。
 あぁ、止まらない。
 同好会のため、オルフェウスさんのことを待っている人たちのため。そんな理由で取り繕っていた仮初が、どんどんと剥がれていってしまう。こんなこと、本当は口に出すのも恥ずかしいのに。
「私はオルフェウスさんの描くお話が、大好きです。だから、その物語が容易く失われるなんて嫌なんです。私だけがあの原稿の中身を知っているからこそ……ちゃんと、記事に載せて皆さんに知らしめたい。あの人の思いを、あの人の────世界を」
 そう、言いきって。音楽室は、とても静かな空気に包まれた。
 ……これで、満足してもらえただろうか。フレデリックは、自らの内に潜めた事実を、語ってくれるだろうか。そんな期待を込めて、ピアノの横に立っている彼の方をじっと見上げる。
 そして、向こう側の色がすっかり様変わりしていることに、アリスは思わず呆然としてしまった。
……あの人は、随分な勘違いをしていたようだ」
「え?」
 緊張感を漂わせていた、あのフレデリックはどこへやら。頬を緩ませ、仕方のないと言わんばかりにこちらを見つめる彼には敵対心の欠片もない。どういうことかとメリーの方へ目をやると、彼女も同じように豆鉄砲をくらったような顔をしていた。
「いえ、こちらの話です。試すような真似をして申し訳ありませんでした、記者さん。私も彼も、てっきりあなたが作品を蔑ろにするつまらない輩だったのかと思い込んでいたので」
「ど、どういうことですか」
 何が何だか分からない。戸惑っているアリスを眺めているフレデリックは、気難しい上級生の擬態を剥いで楽しげに振る舞っていたが……ふと、何かに気づいたらしい。たちまち享楽を失った彼は、やや焦りを含んだ様子で突然アリスの方へと近づいてきた。
「く、クレイバーグさん?」
……まずい、記者さん。一緒に来てください、そうとなれば原稿を救い出すのが最優先です」
「わっ」
 遠慮もなくフレデリックに腕を掴まれたアリスは、ぐいと引っ張られたまま音楽室の外へ連れ出される。まったく状況を読み込めていない中、ピアノの貴公子に手を引かれたものだから流石のアリスも戸惑ってしまう。説明不足のフレデリックに対し、諫める言葉を投げたのはすぐさま後を追ってきた同行者のメリーだった。
「クレイバーグさん。失礼ですが手荒な真似は、」
「申し訳ないが急ぐ用事なのです。私はオルフェウスさんの原稿の在処を知っています、ですがそれはいずれ失われる運命にある。まずはそれを止めに向かわなければ」
 深層に近い発言に、アリスは咄嗟に前を行くフレデリックの背中を凝視した。一日ぶりに、あの原稿に会える……? しかし態度を急変させたフレデリックの意図が読めず、アリスはその理由を問いたださずにはいられなかった。
「どうして、そこまでしてくれるんですか」
 不安げなアリスの声に、フレデリックは足早のまま小さく呟いた。
……あなたが、彼の物語を愛していると言ったから。私も、彼の物語が消失するのは惜しいと思っているんです」
 太陽の降り注ぐ渡り廊下を抜けながら、三人の影が真昼の世界に飛び出した。
「彼の小説も、あなたの記事も、私は好ましいと思っていますから。利害が一致しているなら、手を貸すのも当然のこと。そうでしょう────我らが記者さん」




 ぱらぱらと生徒が点在する北棟。自習のための静寂が規則とされた校舎を、アリスたちは忙しない足音と共に通り過ぎていく。
「クレイバーグさん、これから一体どこに……
 依然として手を引かれながら、アリスが問いを口走った瞬間だった。長い廊下の帰結が見え始めた頃、上階から降りてくる人影が、俯きがちのまま何気なく階下に降りていこうとするのが見えた。
「────いた」
「えっ?」
 息を呑むような声とともに、ついにフレデリックの足が走る体勢に変わる。つられてアリスの身体もぐんと前に引っ張られかけるが、それに気づいた彼は咄嗟の判断によって繋いでいた手を離す。そしてこちらをぎょっと見つめた男子生徒をターゲットに、上靴を踏みしめて駆け抜けた。
「キャンベルさん、話がある!」
「え、え、えっ、何。何だよっ、あんたさっき、ハサミを出して僕の石に負けただろ! 今更強奪とかありえないぞ!」
 顔に火傷痕のある生徒は自分のカバンを断固として離さないように抱えると、なぜかフレデリックから逃げ出した。ダダダッ、と騒音を立てて階段を駆け下りていく音が響き渡る。フレデリックもそれに追いつかんと階段の手すりに飛び乗ると、そのまま坂を下るように踊り場の方まで滑り降りていく。
 突如始まったチェイスに、アリスはしばらく狼狽えていた。こんな静かな学校で、こんなに大暴れしていたらすぐに先生がすっ飛んでくるに違いない。そんなことになったら叱られるのは目に見えている。存外規律を大切にする方のアリスにとっては、男子生徒の背を追うのは体力的にも精神的にも厳しいものがあった。
 だが、しかし。彼女のジャーナリズムはそんなことではへこたれない。
 記者としての勘が騒ぐ────これは、追うべき事件であると!
「待ってください、クレイバーグさん!」
 制服のスカートを翻し、アリスはシンデレラのように階段を駆け下りた。脱げそうになる靴をなんとか抑えつつ一階まで身を躍らせれば、既にフレデリックたちは廊下を抜けて昇降口に向かっているところだった。
 あの男子生徒は意外と足が速いようで、フレデリックといい勝負をしているようだった。しかし運動部でも何でもないフレデリックの体力はやや限界のように見受けられる。
 あれでは、校舎の外まで逃げられたら終わりだ。しかし追い縋る手段がない、どうすれば────
……ッ、はは。残念だったな、この原稿は僕が譲り受けたんだから、今更足掻くなんて見苦しいよ。じゃあな!」
「させません」
「はぁっ!?」
 今にもフレデリックを撒こうとしていた生徒は、突然目の前に現れた人影に素っ頓狂な声を上げた。無論予期していなかった待ち伏せに対応できるはずもなく、彼は進行方向を変えようと減速した隙を突かれてしまった。靴入れの立ち並ぶゲートを目前にして、身長の高い女に引き摺り倒された彼は派手に転倒し、うつ伏せにされた上ですっかり身柄を確保されていた。
「いっ……たいな、おい! 何してくれるんだこの、バカ女!」
「ノートン・キャンベル、見苦しいのはそちらの方ですよ。人の話くらいきちんと聞いてから対応を考えたらどうです」
 ノートン・キャンベル。それは記録簿に上がった、二人目の容疑者候補の名前だ。
 ともあれ息を切らせて現場に追いついたフレデリックとアリスだったが、全速力を出していたフレデリックは限界を迎えたようで、ぐったりと床に膝をついてしまった。アリスもまた息を切らせて、先回りしていた友人に何とか感謝を伝えようとしたが、整わぬ肺では流暢に話すことが難しい。
「プリニウス、さん。あ、りがとう……ござい、ます」
「お気になさらず。あなたのためなら、これくらいはどうということはありません」
 そう言いながら、眼下の生徒を組み技で屈服させ続けるメリーは頼もしいこと極まりない。しかし若干恐ろしくもあったので、アリスは少しだけ力を緩めるように願い出た。そしてぎりぎりと歯を食いしばるノートンと呼ばれた男に向けて、恐る恐る声をかける。
……こんにちは、キャンベルさん。あなたがお持ちの、オルフェウス先生の原稿のことなのですが」
「三人がかりで盗みにかかるとか、あんたヤバいな。いいか、この原稿は僕が作者から正式に譲り受けたんだよ。これは僕の物なんだ、誰にも渡してやるもんか」
「まだ言いますか、この地学脳が」
「痛ッて……! おいクレイバーグ、この馬鹿力女、早く何とかしろよ! このままだと骨が折れるぞ!」
「解放してほしければ私と記者さんの言葉を聞くことですね、キャンベルさん……その原稿ですが、突き返されたわけではないようなので。残念ですが正式な持ち主に返すのが筋かと」
「はぁ……?」
 怪訝な顔で、ノートンがアリスを見上げてくる。その目には、疑いの片鱗がこれでもかと浮かび上がっていた。
「本気か? この女なんだろ、あいつの原稿切り捨てた冷酷非道な新聞記者って」
「な、なんですかその根も葉もない噂は!」
……ですから、それが誤解だと。彼女は偶然、彼の机に原稿を置き忘れただけのようです。つまり、原稿を破棄する必要はないということですよ」
 今、聞き捨てならない誹謗中傷が見え隠れしたような。アリスはその噂の根元を暴きたくなったが、今はそちらが優先ではないことを思い出してぐっと堪える。フレデリックの冷静な諭しに追従するように「そうだそうだ」と首を縦に振ると、ノートンは斜め下に視線を落として考えるような仕草を見せた。
……どうしても渡さないとダメか?」
「往生際が悪いですよ、このコメツキムシが」
「だから絞め上げるのやめろって! ……分かったよ。どうせ売れるかも分からなかったしな……ただし条件付きだ」
 条件? アリスが首を傾げると、ノートンはひくりと口端を吊り上げて要求を述べた。
「あんた、金持ちだろう。だったらこの原稿の手渡し料として、二学期からの一週間の昼飯を奢れ。それくらいできるだろ?」
「お、お昼ごはんですか」
 きょとんとするアリスに、ノートンは意地悪く笑いながら「そうだよ、毎日焼きそばパン買ってこいよな」と畳みかける。しかしそれを冷静に眺めていたメリーとフレデリックは、冷めた目でノートンの交渉を非難した。
「さすがはコメツキムシですね」
「後輩に食事まで要求するのは、さすがにどうかと」
「う、うるさいな! 僕が妥協して現金にはしないでやったんだから、むしろ感謝しろっての」
「分かりました、それで原稿を返していただけるのなら私は構いません。キャンベルさん、あなたに暫しの昼食を提供します」
……おい、本気かよ」
 第三者に殴られても律儀に殴り返していたノートンだったが、アリス当人から真面目に許可が下りるとなぜか途端に勢いを失くした。その理由がよく分からなかったアリスは、ノートンのカバンを探りつつ首を傾げた。
「オルフェウスさんの原稿のためですから。もしかして、私に奢られるのは嫌ですか」
「いや……まぁ、いいや。原稿はファイルに入ってる、さっさと出して持って行け。あと、財布には触るなよ」
「もちろんです。ありがとうございます、キャンベルさん」
 言われた通りにファイルの中をぱらぱらとめくると、折り目のついた原稿用紙がひとつのポケットにまとめられていた。手に取ると、途方もない充足感が溢れてくる……
 あった。念願の、オルフェウスの原稿。
………
 よかった。本当に、よかった。そんな思いで、手にした原稿を抱きしめる。
 アリスの心底安堵した姿に、ようやくノートンを解放したメリーもまた胸を撫で下ろして息をついていた。
「よかったですね、デロスさん。これで一件落着────」
……いいえ、まだです」
 その一言にメリーもフレデリックも、ノートンでさえも仰天した。目的の原稿は手元に戻ってきたのだから、解決したのではないか。三人はそう思っているようだったが、アリスの中ではまだ事件は解決していなかった。そう、一番大事なことがまだ、抜けている。
「私は、三人目の容疑者に会いに行かなければいけないのですから」
 そう。最後のひとりには、どうしても伝えなければならない言葉があるのだ。




 2年A組。再び夕暮れに包まれた教室には、樹木のように佇む人影が座していた。
 ぼうっと窓の外を眺める影の後ろで、控えめに扉が開かれる。澄んだ夏の自習室に入って来たのは、原稿用紙を手にした新聞同好会のアリスだった。
……おや、職員室ぶりですね。あなたもこの時間まで勉強の居残りですか? お疲れ様です」
 くるり、と振り返るブラウンの髪。夕陽を浴びたモノクルが反射して、うっすらとした微笑みをそれとなく覆い隠している。彼を見かけるのは初めてではない……昼過ぎの職員室ですれ違った時に、どうして声をかけてくれなかったのだろうと思いながら、アリスは意を決して謎解きの成果を口にした。
「あなたが、オルフェウスさんですね」
 アリスの解答と同時に、教室に風が入り込んできた。
………
 昨日アリスたちが使っていた席に座っていたモノクルの生徒は、依然として微笑みを絶やさないまましばらく前髪を揺らしていた。しかし風が吹き止むと、軽快に笑ってアリスの推理を掘り下げてくる。
「そういうあなたは、新聞同好会の記者さんですね。なぜ、そうお思いに?」
 優しい口調でありながらも、試すような姿勢が彼の小説に出てくる探偵そっくりだ。でも、大丈夫だとアリスは自分を密かに鼓舞する。筋道を立てた探偵の理論展開には、幸運なことに慣れているのだ……何せオルフェウスの推理小説を、この世で誰よりも読み込んでいるのはこの自分なのだから。
「まずは私の記憶。私は昨日、友人のメリー・プリニウスさんとこの教室で勉強会をしていました。その時に使ったのが、今あなたが座っている席です。これは彼女も一緒に勉強をしていたという状況証拠がありますから、揺るがないでしょう」
「では、もうひとつの理由は?」
 無論。既に味方となった彼らの証言、という手札があるに決まっている。
 手にした原稿用紙を掲げながら、アリスは震え出しそうになる声を何とか諫めて推理を紡いだ。
「この原稿用紙の処遇について、相談を受けたお二人の証言です。フレデリック・クレイバーグさんと、ノートン・キャンベルさん……彼らはあなたから、原稿を突き返されたので処分しておいてほしいと頼まれたそうです。それで勝負をして、結果的にはキャンベルさんが持ち帰ることになりましたが……その相談の際に、お二人は間違いなくこの言葉を聞いたそうです────原稿用紙は、自分のいつも座っている席に置いてあった。だから、もう作品に用はないということなのだろう、と」
 モノクルの奥の光は崩れない。あと一押しだと、アリスは息を吸い込む。
「つまり、真相はこういうことだったのです。私が偶然にも、あなたの机の上に未発表の原稿を置き忘れてしまった。それをたまたま登校していたあなたが見つけ、不要なものだと突き返されたのだと思い込み、ご友人に処分を依頼するために持ち去った……全ては不幸な偶然による事故だった、というわけです」
 言い切ってから、恐る恐る相対する彼の様子を窺う。この推理は間違っていない、ほとんど真実のはずだ。しかし彼が何も言わないので、アリスはそのままずっと言いたかったことを口にし始めていた。
……ごめんなさい。私の不注意で、あなたに不安な気持ちを抱かせてしまいました。こんなことを言っても信じてはもらえないかもしれませんが、私は本当にあなたの小説が好きなんです。初めて私の新聞に寄稿してくれた時から、ずっと、ずっと……あなたの作品に、いろんな意味で助けられてきました。その気持ちに偽りはありません……ですが、今回のことであなたを不快にさせてしまったのであれば」
 ぎゅ、と原稿用紙を持った手に力がこもる。もしもを覚悟してここまで来たけれど、やっぱりこの一言を言うのは……怖い。
 アリスはオルフェウスの直筆がしたためられた原稿を胸の前に差し出すと、真っすぐにモノクルの奥を見つめた。
「もし、私のことがそれでも許せないというのであれば────この原稿は、今度こそきちんとお返しします」
 そうだ。もし、彼に許してもらえないのであれば。アリスはオルフェウスとの関係すら終わらせるつもりで、ここに来た。そうしないといけないほどに、彼を傷つけることを自分はしでかしたのだ。だったら、これくらいの誠意は必要だ。ひょっとしたらこれ以上の姿勢だって必要かもしれない。もしも彼がそう望むのであれば、どんな罰も受け入れるつもりだった。
 しかし────
……はは、そんな。思いつめた顔をしないでください、記者さん」
 彼の楽しげな笑い声に、アリスは下げた頭をぼんやりと上げていく。
 そこにいたのは、憤怒に駆られる気難しい作家にあらず。目の前にいたのは、どこまでも等身大の学生らしくアリスの失態を笑い飛ばそうとする、優しげな青年の姿だった。
「いや、さすがの名推理です。私も直接お話を聞いて、納得しました……なるほど、事故ですか。確かにミステリーにはそういう結果が付き物ですからね。やはり、私が目をつけた記者さんなだけはあった」
「あ、の。それじゃあ、やっぱりあなたは」
 ずっと聞きたかったことを、アリスは急くように口に出してしまう。そんな姿に、モノクルの生徒……否、オルフェウスは変わらぬ優しさで応えてくれた。
「親愛なる記者さん。こんにちは、そしてはじめまして……私がオルフェウスです」
 そう、何気なく名乗ったものの。なぜかオルフェウスは、少しだけ照れた様子で目を逸らしてしまった。
「いやぁ……本当は、こうしてお会いするつもりはなかったのですが。幻滅しましたかね。こんなパッとしない、印象にも残らない人間がオルフェウスなんて」
「そんなことは、ありません」
 いつか友人に告げられた卑下の否定を、今度はアリス自身が告げる番だった。
「オルフェウスさんがどんな人であっても、私はずっと内面の素晴らしさを見てきました。その私が、今更幻滅なんてするはずがありません! ……さぁ、オルフェウスさん。まだ、お時間はありますか。私、あなたとたくさんお話したいことがあるんです」

 あなたのことを、もっとよく知りたいから。

 そう言ってはにかむ少女の笑顔が、とても純粋で────オルフェウスは心の内側で、密かに過去の己を称賛してしまった。
 ……過去の私よ。あなたの見る目は、確かだった。私たちは、素晴らしい人に作品を託すことができていたのだ、と。
 ゆえに、夕方の五時を過ぎていようとも。オルフェウスは施錠の時間まで話し込むつもりでいるのだった。
「えぇ、喜んで。たくさんお話ししましょうか、記者さん」