芹沢亀吉
2023-07-30 21:36:34
5831文字
Public 風刺
 

呉越同舟

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算105話目。今回はシャワーシーン有り。

 亡き門長四郎かどながしろう元総理を神として祀る門長明神なる神社を大阪府和泉市の信太山駐屯地に程近い場所に建立と、大阪護国神社の元宮司、伊那通雅いなみちまさは昨年選挙演説中に銃撃され死亡した門長への肩入れが度を越えている。そして現在門長明神には亡き門長を神の如く崇拝する輩が集まり怪しげな儀式を執り行っている最中だ。

「門長元総理、この伊那通雅に力を!薄汚い韓国人や中国人共をこの世からまとめて根絶する力を!」

 見ての通り伊那は差別主義者であり門長が銃撃される前から「中国人、韓国人は日本に来るな!」「世界から嫌われる中国人の下品さ!」「韓国人は整形しても心の汚さは変わらない!」等ブログ記事に中国人並びに韓国人を標的とした卑劣なヘイトスピーチを書き連ねてきた。門長が銃撃されたのも在日韓国人の仕業と思い込み逆恨みの情念を拗らせるあたり人間のクズ過ぎて最早救いようがない。

「伊那先生!今月分の給料全額提供します!在日殲滅!天皇弥栄!」

「家を抵当に借金しました!伊那先生のお力で門長さんを再びこの世に呼び戻して下さい!門長さんが蘇れば薄汚い在日共が悲鳴上げるのは間違いありません!」

といった具合に集まった連中は伊那の怪しげな教義を真に受け日常生活に支障が出るのも厭わず次々と大金を差し出し、中には勤務先の事業資金を横領し全額伊那へのお布施に使う者まで。事実上伊那に金づる扱いされているこの連中も伊那に勝るとも劣らない差別主義者ばかりなのは言うまでもないが。

 突然晴れ渡っていた空を暗雲が覆い尽くし、以下のような叫び声が響き渡った。

「ニッキョーソニッキョーソ!」

 この叫び声を聞いた伊那は感涙し目頭を拭う。

「これは門長元総理の声だ!皆の祈祷の力が奇跡を起こしたぞ!さあ薄汚い朝鮮人共!日本から出ていく準備をし、うぐっ!」

 途端に暗雲が竜巻状になり伊那の口の中に飛び込んでいった。何を隠そうこの暗雲の正体は収賄、脱税、公文書改竄、公職選挙法違反等生前の罪により地獄に落ちた門長であり、伊那をはじめとする門長信者達の濃厚な邪念に引き寄せられ現世に出現したのである。暗雲を飲み込んだ伊那の身体がブクブク膨れ上がり頭部に巨大な門長の顔を持つ太さ5m以上、全長に至っては100m以上の怪物ミミズと化した。

「ニッキョーソニッキョーソ!」

 門長の顔を持つ怪物ミミズはそう叫びながら床の埃を吸う掃除機の如くその場にいた門長信者全員を瞬く間に平らげ、神の如く崇拝していた門長に喰われたのだから信者達もさぞかし本望だろう。

 その頃信太山駐屯地の一室では楠木武くすのきたけしがシャワーを浴びていた。この一等陸佐は極端な軍国主義思想の持ち主かつ事あるごとに部下に暴力を振るう等性質は極めて粗暴。

「この楠木は幸せ者だ。風呂に入り鏡を見るだけでミケランジェロのダビデ像に勝るとも劣らない肉体美を満喫出来るのだからな。おっとあっちは冷たい大理石、一方この楠木の肢体は毎日太陽を浴び続けた小麦色故温かみがある。つまりこの楠木の肢体はミケランジェロのダビデ像より美しいのだ!グハハハハ!」

 自分の裸体を鏡に映しながらひたすら下品な声を上げ大笑いと楠木のナルシスト気質は度を越えている。最近の楠木が部下に暴力を振るってばかりで鍛錬を怠っている上甘い物の食べ過ぎが祟り絶賛激太り中であることを本人に言えば間違いなく精神注入棒の一撃をお見舞いされるが。

 するとシャワー中に自己陶酔する楠木に水を差すかのように巨大門長ミミズが襲来し、信太山駐屯地全域に轟音が響き渡った。程なくして浴室が半壊し楠木は全裸のまま外へと吹っ飛ぶ。

「ニッキョーソニッキョーソ!」

などと叫びながら抵抗する自衛官達を次々捕食していく巨大門長ミミズ、生前国会審議中にこのように叫び物議を醸した門長は地獄に落ちた後様々な責め苦に遭い続け最早他の言葉を話すことが出来ない。

「どけ!楠木正成公の末裔である俺様がこんなところでくたばってはならんのだ!道を開けろ下郎共!」

 自分だけ助かりたい一心に突き動かされ他の自衛官達を突き飛ばしながら遁走と、楠木は何ともあさましい男である。部下に無茶な訓練を強要する際汗をかけと口うるさく言い続けてきた楠木が今現在全裸のまま疾走し恥をかき続けているのはある意味笑えるが。

「お、おかしい、ひ、日々の鍛錬を怠らないこの楠木がこんなにあっさりバテるなんて。」

 自分のことを日々の鍛錬を怠らない精鋭自衛官と思い込んでいる楠木ではあるものの、実際は前述の通り日々の鍛錬を怠り絶賛激太り中のため走ればすぐに息が切れる。

 今現在信太山駐屯地の敷地内にいる全裸男は楠木だけではない。お忍びでこの駐屯地に来ていた広池一雄ひろいけかずお内閣総理大臣も巨大門長ミミズ襲来により秘書並びにSPが全員犠牲になった途端に衣服は勿論下着も全て脱ぎ捨て金切り声を上げながら疾走した。この日本国首相は内閣支持率低下による鬱憤を晴らすためシャワー室の出入口に金盥が落ちる仕掛けを設置し入浴直後の楠木の頭の上に落とそうとしていたのだ。その粗暴かつ驕慢な気質故他の自衛官達から嫌われている楠木は広池にとって格好の標的だったのである。

 疾走中の広池が楠木に衝突し、2人は自分が全裸であることをすっかり忘れて互いに相手を罵り始めた。

「き、貴様広池一雄!って、何だその格好は!ヒョロヒョロもやし体型じゃないか!やはり貴様みたいな軟弱者にこの国の総理は似合わん!おっとその格好は似合っているぞ!裸の王様的な意味でな!グハハハハ!」

「貴様は楠木武!最近激太り中だと聞いていたが想像以上だな!何だそのブヨブヨ体型は!?相撲取りに転職するなら総理である私が推薦状を書いてやってもいいぞ!アハハハハ!」

 突如発生した地割れが取っ組み合いの喧嘩を始めた全裸男2人を飲み込んだ。巨大門長ミミズがその巨体を激しくうねらせこの地割れを生じさせていたりする。

「広池貴様が国葬を強行したあの世襲の能無しがミミズの化け物になって暴れた結果俺達は地割れに落ちたんだぞ!責任取れ責任を!」

「黙れ楠木!あの国葬は正しかったんだ!総理である私に難癖付ける貴様こそ責任を取れぇ!」

 地割れの奥底に向かって落下中にも拘わらず取っ組み合いの喧嘩を止めようとしない楠木と広池、この全裸男2人は実にあさましい。

「そなた達いい加減にせよ!」

 突然現れた巨大な光に叱責され、楠木と広池は自分達が暗闇の中宙に浮いていることに気付いた。

「よく聞け、そなたらに再起の機会を与える。2人力を合わせて地獄から脱走し怪物と化した門長四郎を討ち果たすのだ。」

「馬鹿も休み休み言え!楠木正成公の末裔である俺様が何でこんな世襲無能総理と力を合わせねばならんのだ!」

「言ったな楠木!家庭内暴力の挙句カミさんを殺し遺体を山林に埋めた犯罪者の癖に私を世襲無能呼ばわりとはいい度胸だ!」

 ちなみに広池が楠木の犯罪行為を知っているにも拘らず表沙汰にしないのは、自衛隊という組織自体が世間から非難され軍拡の差し障りになるのを恐れてのこと。

 取っ組み合いの喧嘩を再開した全裸男2人に対し、巨大な光はこう言った。

「今そなた達が宙に浮いているのは私の力によるもの。そなた達が醜い争いを続けるならこのまま地割れの奥底に叩き落とし全身を熟した柿のようにぐちゃぐちゃにしてやっても良いのだぞ。」

 途端に楠木と広池は殴り合いを止め、カンニングがバレて職員室に呼び出された小学生のように恐縮している。

「それでいい。ではそなた達に我が力の一端を授けよう。地上に戻り門長四郎を倒すのだ。」

 そう言った巨大な光は全裸男2人の全身を包み込んだ。

「うわぁーっ!」

 一方地上では巨大門長ミミズが信太山駐屯地のほぼ全域を壊滅させていた。

「ニッキョーソニッキョーソ!」

 すると先程の地割れから凄まじい閃光が迸り、閃光が消えるとそこには銀色の鎧により全身を覆う身長約12mの巨人が佇む。

宇宙戦神ウツノイクサガミ見参!怪物よ、神妙にせよ!」

 宇宙戦神は特撮映画『ヤマトタケル』本編終盤に登場し魔王ヤマタノオロチを討ち果たす神である。楠木も広池も若い頃この映画を観ていて、巨大な光の力により融合を果たした2人はその神の姿になったのだ。

「ニッキョーソニッキョーソ!」

 巨大門長ミミズの尾の一撃により木の葉の如く宙を舞う宇宙戦神、体格差をものともせず瞬く間に魔王ヤマタノオロチを討ち果たした『ヤマトタケル』本編の宇宙戦神の勇猛さは何処にも見当たらない。

「どういうことだ!この姿になれば勝てるのでは無かったのか!忌々しい広池一雄と融合というだけでも屈辱なのにやられては話にならん!」

「だから楠木武との融合は嫌だったんだ!あんな子ども騙し特撮映画のダサい魔人の姿になった上このザマとは何の罰ゲームだこれは!?」

「ダサい魔人だと!魔王ヤマタノオロチを討ち果たし全宇宙を救った偉大な神に対し何てことを言う!広池それだから貴様は無能総理なんだよ!」

 融合後も仲の悪い2人に対し巨大な光はこう言った。

「そなた達は身体が融合しただけで融合前同様いがみ合ったままだ。それでは私が授けた力も発揮出来ぬ。選ぶがよい、このままいがみ合いを続け返り討ちに遭うか、心を一つにしあの怪物を討ち果たすのかを。」

「ええい!広池の力を借りずともこの楠木があの怪物を討ち果たしてくれるわ!」

 そう言った楠木は剣の出現を念じたものの、出現した剣は刃の部分がフニャフニャと『ヤマトタケル』本編において宇宙戦神が振るう光り輝く剣とは似ても似つかない。

「アハハハハ!何だその剣は!楠木貴様恥をかくことだけは超一流だな!」

「見かけだけでこの剣を判断するな無能総理め!今からこの剣で怪物の身体を一刀両断してくれるわ!」

 楠木の意に反しフニャフニャ剣は巨大門長ミミズの身体に当たった途端にかすり傷を負わせることも出来ないままポキリと折れた。直後に再び巨大門長ミミズに尾の一撃を浴びせられ宇宙戦神が吹っ飛んだ。

「ニッキョーソニッキョーソ!」

 巨大門長ミミズが口を大きく開け発射した紫色かつ螺旋状の破壊光線が直撃し、起き上がったばかりの宇宙戦神がまたもや仰向けに倒れこむ。

「ニッキョーソニッキョーソ!」

 そう叫んだ巨大門長ミミズは長い身体を宇宙戦神の全身に巻き付け一気に締め上げた。

「クソ!広池の力を借りるのは癪だが仕方無い!」

「楠木と力を合わせるなど死んでも御免だがこのまま絞め殺されるぐらいなら!」

 2人が漸く心を一つにした途端に宇宙戦神の全身が光り輝き巨大門長ミミズの束縛を瞬く間に振りほどく。

「ニッキョーソニッキョーソ!」

 再び破壊光線を吐く巨大門長ミミズではあるものの、宇宙戦神は頑丈なバリアを展開しその破壊光線を阻む。

「今度はフニャフニャ剣ではないぞ!蛇の韓鋤剣オロチノカラサイノツルギの一閃を受けるがいい!」

 宇宙戦神が言った通り今回出現させた剣は『ヤマトタケル』本編同様鋭利かつ光り輝き、あっという間に巨大門長ミミズの全身を切り刻む。

「トドメだ!怪物よ貴様は地獄に帰れ!」

「ニッキョーソニッキョーソニッキョーソニッキョーソォオオオオオオオ!」

 宇宙戦神は額の太陽状の紋章から白熱光を放ち、巨大門長ミミズは珍妙な断末魔の叫びと共に全身が消し飛んだ。

「楠木武、広池一雄、そなた達2人の奮闘により罪人門長四郎は地獄に連れ戻された。門長四郎は伊那通雅の肉体を奪い怪物と化した身故肉体を持つ者には干渉出来ない冥府の者達にはどうすることも出来なかったのだ。私自ら地獄に連れ戻すことも出来たのだが、いがみ合い続けているそなた達2人に改心を促すまたとない機会故我が力を与え成敗してもらうことにした次第。一時はどうなることかと思ったが見事であった。礼を言う。」

 そう言った巨大な光は十二面八臂、即ち12個の顔と8本の腕を備え極彩色の鎧により全身を覆う鬼神の正体を現した。古代インド神話の悪鬼アータヴァッカが仏法に帰依した姿とされ不動明王に勝るとも劣らない強大な神通力を使う太元帥明王たいげんすいみょうおうだ。現在楠木と広池に話しかけている太元帥明王の主面、即ち正面の顔は菩薩のように穏やかな形相とはいえ残る11の顔の形相は皆恐ろしげであり仏と鬼神双方の性質を併せ持っていることが伺える。

「礼には及びません。貴方様の力のお陰ですので。この楠木武、今からこの力を使い薄汚い在日朝鮮人共を一掃して見せましょうぞ!グハハハハ!」

 途端に太元帥明王は宇宙戦神の融合を解除し全裸姿の楠木と広池に戻した。

「楠木武、貴様は伊那通雅と同じ卑劣な差別主義者のままではないか。私の力を得ても改心せぬなら今後改心することもまず無いのは自明。ならば今ここで斬り捨てる。」

「この楠木、たった今改心しました!今後は在日朝鮮人達との共生を目指、グワッ!」

 間髪入れずに太元帥明王が剣を振り下ろし楠木の全身を両断したのは、勿論楠木の改心が真っ赤な嘘であることを即座に見抜いたからである。楠木の即死を目の当たりにした広池は恐怖の余り卒倒した。臍を天に向け伸びている全裸姿の日本国首相は股間周辺に独特の悪臭を放つ水たまりが広がりつつある。

「広池一雄、日本国首相でありながら在日外国人から税金を取る癖に参政権は認めない現状を改める気の無い時点で貴様もまた卑劣な差別主義者だ。そして楠木武同様私の力を得ても改心の兆しさえ無い。とはいえ意識の無い者に刃を向けるのは私の信条に反する故斬り捨てはせぬ。その姿のまま恥をかき続けるがいい。」

 そのように吐き捨て、太元帥明王は広池を放置し仏国土へと舞い戻った。

 数日後、眼鏡をかけ全裸という楠木と融合した時と同じ姿のまま国会に登院し刑法174条(※公然わいせつ罪を規定する条文)を削除しろと怒鳴る広池、当然ながら瞬く間に内閣不信任決議案が可決され広池内閣は総辞職に追い込まれましたとさ。(終)