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rikuru
2024-08-25 21:36:07
6952文字
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ルク坊
吸血鬼さんと狼男くんのお話
吸血鬼ルックと狼男坊っちゃん
ルック+坊寄りのルク坊小説
完全に自分が書きたい&見たくて書いた奴です
※ルックがだいぶ辛辣です
※坊っちゃんがちょっと頭弱めです
※坊っちゃんのざっくり性格→元気な脳筋系
会いに行くのは、決まって夜。
ぼくは陽の光なんてへっちゃらだから何ともないけど、 は違うんだって。ほんと変なやつ!
帳の幕が降りた魔が蠢く森に、駆け抜ける影が一つ。人の形をしているが、人ではないソレ。しかし人と酷似しているソレ。唯一違う所はーーーー。
「おっ!聞こえる聞こえる!」
ピコピコと軽く動かす耳が、頭の上部に付いていたこと。人とは決定的に違う特徴を持つ影の主の正体、それはーーーー。
「おーーーーい!!!!!ルックーーーー!!!!!」
「
……
うるさいよこの馬鹿狼男。静かに出来ないの?」
そう、狼男だった。
「バカだとーー!?そんなこと言う奴がバカなんだからなーー!!」
「返し方が馬鹿そのものなんだよ。もう少し知性を身につけた方が良いね君」
「またバカって言ったなーー!!性悪貧弱悪魔吸血鬼!!」
闇夜の森奥深くにひっそりと佇む年季の入った屋敷。その手前で繰り広げられる漫才(違)が、神秘を微かに含む不気味な雰囲気をこれでもかとぶち壊しているのは言うまでもない。
しかしそんなことを気にする者は誰もいなかった。少年達も全く気にしてはいなかった。
「それで?」
性悪貧弱悪魔吸血鬼(長)と呼ばれた吸血鬼ことルックは、額に軽く青筋を浮かせる。
紋章を使いわからせてやろうかと思ったようだが、相手がとんでもない馬鹿(あまりにも失礼な表現)な奴だったと思いだすと、スッと怒りが引いていったらしい。
「ぬぐぐ
……
効いてない
……
!!」
「馬鹿なの?効くわけないだろ」
「うううううう〜〜〜〜!!!!」
「
……
馬鹿なことやってないで、ほら入りなよ」
「うん!!」
吸血鬼に一泡吹かせてやりたい!といった気持ちが強過ぎるあまり、そこに神経が集中していた狼男の少年。
だが吸血鬼の少年が放った一言は、彼の執着をあっさりと終わりへ導くのであった。
「本当に切り替え早いよね」
「そこがぼくの長所だからね!」
「褒めてないよ」
騒ぐだけ騒いだ少年達は、薄暗く怪しさが漂う屋敷の中へと消えて行く。
あとに残ったのは静寂のみ
……
だけではなく、高位の存在に怯えて隠れていた下級の魔に連なる者だった。脅威が去った後の自由を謳歌し始めるが、それはこの物語に必要としないので、ここで終わりである。
◼️
「暗過ぎる!明るくしてもいい?いいだろー?」
「僕は暗闇でも見えるから。君だって見えるだろ?」
「そうだけどルック程じゃ
……
。あ、暗いから性格も
……
」
「何?切り裂かれて森から追い出されたいの?」
「ごごごごめんなさいっ!」
薄暗く長い廊下の先は、遠くからではどうなっているかわからない。等間隔に並ぶ壁に設置された蝋燭は小さいもので灯りとして機能しているとは少年には思えず。しかし先に歩くルックは耳を貸すことはなかった。
「今度遊びに来る時は灯り持ってくるか!」と、意気込みつつ辺りを見回しながら歩く少年と少年の挙動を気に留めず進むルック。対照的な二人はそのまま言葉を交えることなく廊下の奥へと消えていった。
◾️
二人の身長より遥かに高く塗装が所々剥がれ落ちた重厚な扉が、鈍い音を立てて開かれる。開けたのは勿論、この屋敷の主。
彼は背後に控える少年の方へ振り返ることなく先へと進み、少年もそのまま後を着いていった。
開けっぱなしの扉を閉めずに行ってしまった吸血鬼の少年達。不用心かと思うのだが、どうやら魔法を掛けているらしい。それは一体何なのか?答えは数十秒程経った後、わかるものだった。
なんと開けたままのソレが勝手に動き閉まったのである!
……
だが二人にとっては普通の光景なため、特に気にすることはなかった。
「ねールックー」
「何」
「ぼくまだ夜ご飯食べてないんだ」
「あっそ」
「何だよぉ!『あっそ』って!冷た過ぎるだろ!」
「君を甘やかすと碌でもないことになるからね」
「ひ、ひどい!!友達になんてこと言うんだよ!!」
「ウザ」
目的の部屋まで後少しと言ったところで、少年からルックへ声が掛かる。どうせ腹が減ったとかそんな処だろ、と踏んでいたルックの読みは見事なまでに的中。
仲が良いのか悪いのか何とも判断しづらい問答を一通り繰り広げられたのち、少年の口からとある言葉が零れ落ちた。
「テッド〜!!アイツ酷い奴だよ〜!!」
それはルックにとっては爆弾と同じくらいの威力を誇るもので。
テッド、という名が耳に入った途端、腹の底から苛立ちが湧き上がり全身を蝕んでいく感覚に襲われたらしい。自分を嫌っていて、また自分も嫌いなもの。
初対面で互いに敵と判断したソイツの侵入を許してしまった可能性が浮上したことに、テッドという名の者だけでなく自分自身に対しても怒りが湧き上がる。
踵を返し彼は少年の元へ歩みを進める。いつもの無表情ではなく、ほんの少し怒りを表した顔のルック。対して少年の表情は変わらず能天気なままであった。
「
……
何処に隠してる?」
鋭い眼光が少年へと向けられる。
さぁ、答えは?
「テッド?隠してないよ?ってか着いてきてないけど」
あっけらかんと返された返答。少年の性格を鑑みてストレートな言葉の裏に嘘が潜んでいるとは思えない。が、ルックはすぐには信じることはなく。
瞼を閉じ神経を集中させ足元に陣を展開、魔力を駆使して周囲の気配を探り始めた。
寒さと暑さ、どちらにも片寄らず平均と言える温度だった廊下が冷えから肌寒いへと変貌を見せる。
少し寒さを感じたのか、少年は右手で反対側の腕を摩り始めた。
「
……
」
「
……
」
暖を取りつつ頭上に『?』をいくつも浮かべ、目の前の吸血鬼が何をしているのかさっぱりわからないという、わっかりやすい表情を見せる少年。
高位の存在であるが魔法<力に寄り気味の基本脳筋の彼には、仕方がないことなのかもしれない。
「君の言う通りだね」
「そう言ってるじゃん!」
「君に気付かれずに潜んでいる可能性が無いとは言えないし」
「何でそんなにテッドのこと目の敵にしてん
の
……
」
敵視している者がいないことを確認したと同時に陣を解く。
瞬間、廊下を支配していた寒さが鳴りを潜め少しずつ元の温度へと戻っていった。
「馬鹿なことに時間使ってしまったよ」
「ルックのせいじゃん」
「君が余計なことを言ったからだよ」
「ぼくのせい!?」
「うん」
「違うだろ!」
きっとテッドと呼ばれた者がこの場にいれば「つーかもうちょいで部屋に着くんだしバカやってねーで早よ行けや」と突っ込んでいただろう。多分。
「
……
そう言えば君、まだ何も食べてないんだろ?」
またも口喧嘩漫才を繰り広げていた二人だったが、吸血鬼の方は段々と面倒になってきたらしい。
「!」
少年よりも頭の回転が早いルックが主導権を握った瞬間だった。
「確か冷蔵庫に食べ物
……
」
「行こうルック!!早く!!」
掌で転がされていると全く気付いていない少年は『食べ物』というワードを耳にした途端、目を輝かせ今日一の笑顔を見せる。ちなみに、空腹というブーストが掛かっているからなのかは不明である。
その上キラキラと輝き始め、薄暗い廊下を自身の光(?)で明るく照らし始めるといったよくわからない状態になってしまった少年。そんな彼を見てチョロいなコイツと鼻で笑うルック。
「ぼくのご飯が待ってるんだ!!」
「わかったから落ち着きなよ」
少年が切望する目的の部屋まで、もう少し。
今度こそ何かしらのイベント(?)を起こすことなく進むことは、果たして出来るのだろうか。
◾️
何やかんやありつつ辿り着いたのは、屋敷の中心部に位置する大広間。
廊下と違いきちんと灯りが満たされている部屋に、少年は喜ぶ。かと思っただろう。実際は違っていた。彼は何度もこの屋敷に訪れているため、知っているのだ
……
この部屋が一番明るい場所だと。
「ごっはん、ごっはん!」
煌びやかな装飾やインテリアには見向きもせず、少年は大広間からキッチンへと繋がる扉へと一直線。
屋敷の主に断りを入れずに向かう姿に、ルックは呆れる。腹を空かせているというデバフ(?)が掛かっているからとは言え、他人の住処で最初にやることが食糧を漁るとは
……
。
この愚行が少年以外だったなら、ルックは容赦なく命を奪い屋敷の外に放る、といった恐ろしい手段に出ていたであろう。あな恐ろしや。
「ルックー!ハンバーグとかないのー!?」
呆れの値が高くなったせいなのかはわからないが、軽い頭痛に襲われていたルック。
少しでも和らげようと、こめかみをゆっくりとした手付きで撫でていたところに降りかかる能天気な少年の言葉。それは彼の頭痛をより重いものにしてしまったのである。
「
……
あるわけないでしょそんなの」
「おーい!聞こえるー?ルックー?」
ボソリと零れ落ちた言葉は少年に届かず。自分の声が聞こえていないと思ったらしい少年は、声量を更に増してルックへと投げる。
その瞬間、ストレス値が限界突破まで伸びてしまいバリンと突き抜けるという、ブレイク状態へとなってしまうのであった。
「あるわけないだろ!!」
「えー!!ないの!?」
「特に好きでもないのに進んで作るわけないだろ!!」
「ぼくは大好きだよ!?好物の一つだよ!?」
「へぇ?好物だということは今知ったんだけど?」
やはり起こってしまった会話イベント(任意)。
怒りを顕にし元凶が待つキッチンへと歩みを進めるルック。一分と経たずに着いた彼に気付いた少年は、視線だけではなく身体ごと向きを変える。ちなみに冷蔵庫は開けたままだった。
「え?前に言ったよ!?」
「フン、知らないね」
「えー!ちょっと前に『好きな食べ物あるんですか?』って聞かれた時言ったじゃん!」
「君の言うちょっと前と、僕の思うちょっと前とではズレがあるから」
「意味わからん!ちょっと前はちょっと前だろ!」
「なら具体的に答えてみなよ」
「え、と
……
多分
……
3週間前
……
?」
「何で疑問系なのさ」
「
……
た、たぶん、あってるはず
……
」
「
……
君と会ったことは覚えているけど、そんなこと言った記憶はないから、違ってるね」
「あ、あれー
……
??」
確証が持てなくなった少年の様子を見るに、ルックの優勢は決定的なものとなった。
「ふぅ、また無駄な時間を過ごしてしまったよ」
「うう
……
ううぅう
……
」
頭脳戦において、言葉を巧みに使う少年吸血鬼に軍配が上がることは当然の結果と言える。余程の豪運が無い限り、少年が彼に口で勝利するのは難しいだろう。
「ふーん」
常にピンと立っている耳は垂れ下がり、誰が見ても物凄くへこんでいるとわかるくらい落ち込んでいる少年。そんな彼の姿に一ミリくらいの良心(少なっ)が働きかけたのか、はたまた鞭だけでは今後においてよろしくないと踏んだのか。
勝者の余裕を携えたルックは少しだけトーンを抑えた声で放った。
「
……
そんなに好きなら、作ってやってもいいよ」
「!」
へにょへにょ、という擬音がピッタリだった耳が元の姿に戻り、これでもかと言うくらいに打ちのめされ輝きを失っていた瞳に再び光が宿った。落ち込むのも早いが、復活するのも早い現金な少年である。
ちなみに冷蔵庫は早く閉めろ!と警告音を出しているが、二人とも当然の如くスルー。
「ほんと!?」
「あぁ。でも今日は面倒だからやらないけど」
「何だよそれ!?」
甘い甘い飴を与えたのち、調子に乗って付け上がらないように軽く鞭を与える。
少年吸血鬼による少年狼男の調教は、それはそれは見事なものだった。
「
……
サラダと冷製スープあるだろ?それで腹の足しにしなよ」
「あるけど
……
えー
……
?」
「嫌なら食べなければ?」
「食べる!!たーべーまーすー!!」
ルックから冷蔵庫へと向きを変えた少年は、背後と顔に不満の二文字を携えて食糧を漁る。卵や野菜といった食材はそこそこあった。
目当てものものと思われる大きめの皿と手のひらサイズの皿は上の方にあるらしい。
よっと!と呟いて背伸びをし取り出して、目の前に下ろす。中身がサラダとかスープとわかった瞬間、少年の腹が早く!!と悲鳴を上げた。
近くにあったテーブルに素早く置くと、一心不乱に平らげるのだった。
「ったく
……
」
食卓に持って行かずにその場で食べ始める彼を見て、冷蔵庫の扉を閉めていたルックはまたも呆れを見せる。
黙っていれば上品且つ可愛らしい見た目に反して中身の品はまだまだ成長途中なのだと、改めて認識したようだ。
「うーん!美味しい!」
「ん、ありがと」
「もっとある!?」
「無いよ。冷蔵庫見ただろ」
「卵と野菜
……
」
「嫌だね」
「ケチー!!」
「そんなこと言う奴には
……
」
「うわわわわ!!ごめんなさい!!」
「まだ何も言ってないけど?」
「言わなくてもわかる!!お仕置きとかだろー!?」
「何?仕置きして欲しいの?そんな気分じゃなかったけど、君がどうしてもと言うなら」
「ん、ん、んなわけあるかああぁぁぁああああーーーー!!!!」
目を細めニヤニヤとSっ気たっぷりな邪悪な笑みを見せる吸血鬼に、ヤバい本当にお仕置きされる!!とパニック寸前の狼男。
……
楽しい夜は、まだまだ続くようです。
◾️
立て続けに発生した会話イベント(違)から約三十分後。
少年達は大広間にて楽しく談笑を行っていた。年季は入っているが傷は少なく、ピカピカに磨かれた革張りの大きめなソファ。それに寝転がって話すのは狼男の少年。
テーブルを挟んだ反対側にある、落ち着いた色合いが特徴の一人掛けソファに腰をかけているのは主であるルック。
長い足を優雅に組み、不適な笑みを携えて少年を見る瞳には表情とは対照的に優しさが灯っていた。
それは愛しい者へと捧げるものか、小動物を愛でるものか、正解は誰にもわからなかった。
「ねールックー」
穏やか
……
かどうかはわからないが良い空気感に包まれて行われていた談笑は、続く少年の一言で、終わりを迎えることに。
「ぼくそろそろ帰るー」
「なに、もう眠いの?」
どこに行った、何をした、誰と会った
……
など聞いてもいないのに楽しそうにペラペラと喋ると言ったパターンが多いようだが、今日は違うパターンに進んだようだ。
睡眠欲に負けたのか、と推察したルックは腰を上げ、外へと向かう準備を始める。マントを軽く叩いていると、起き上がり脱ぎ捨てていた靴をいそいそと履いている少年の姿が彼の視界に入った。
別に急がなくてもいいのに、と放つと、だって、と返ってきたのは歯切れの悪い返事で。
「テッドが「なんだって??」
聞きたくない名前が耳に入った刹那、声のトーンが一段階下がる。
「
……
ルック、顔怖いよ」
声だけではなく表情も連動して歪んでいたらしい。少年の言葉に自分こ顔が酷いことになっているとルックは知るが、そんなことは右から左に流れて外へと出ていってしまった。
「その言葉をストレスが溜まるから聞きたくないんだよね。気分が悪い」
棘を三重に巻き付けた言葉という名の刃が、少年へと向かう。しかし少年には全く全く効かなかった。理由は当然
……
彼宛ではなく、テッドという者に向けたものだったから。
「何でそんなにテッ「は??何で言った??」
今度は名前の途中で被せてきた。ドスの効いた声に冷気を纏った視線を添える。
その上造形の良い顔が、恐ろしいくらい歪んでいると言うとんでもないバフも掛かっていて。
「
……
何でもない」
先に降参の意を示したのは少年だった。これ以上何か言ったら命ではない何かの危機に曝される、と本能が恐怖を感じ取ったらしい。
「そう」
「えーと
……
ぼく帰る!じゃーねルック!今度来た時はハンバーグよろしく!」
「あっ、コラ」
人一人なら余裕で出入りできる大きさの窓を開けた少年は、生まれつき備わっている高い身体能力を駆使し、あっという間に屋敷から脱出を決めるのであった。
「
……
怖がらせてしまったね」
少年が去った後、賑やかな雰囲気は一気に消えていき静寂が訪れる。
二人で話をしている時は聞こえなかった蝋燭が燃える音が、ルックの耳にスルリと入ってきた。
「どうせまた来るだろうし」
零れ落ちる言の葉にほんの少し宿る喜びの感情。
「疲れた
……
さっさと寝よう」
吸血鬼という種族はであるが、人と同じサイクルの行動を取る時もあるらしい。ちなみにそのことをかの少年が知っているかは、不明である。
「ん」
部屋へと帰る前に窓のある方へと向かう。戸締りをきちんと終え、少年が消えた方角を見据えると、溜息を一つ零した。
「楽しみの一つでもあるんだし、見送りくらいさせてよね」
少し寂しげな笑みを浮かべると、音を立てることなく消えたのであった。
広大な森の奥に佇む屋敷での一幕は、一旦ここでおしまい。
……
次は誰が少年は出会うのでしょう?
終
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