三毛田
2024-08-24 21:46:59
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29 09. 腕の中(抱きしめてしまったら)

29日目 すべて君に伝わってしまう

……
……
 互いに見つめ合い、言葉を失くす。
 どうしてこうなってたんだっけ?
 資料室で、アーカイブの整理をしている丹恒を眺めていたのは覚えている。
『丹恒、布団借りていい? 眠い』
『またゲームをしていた夜更かししたのか』
『ヴェルトに借りたアニメ観てたら、止め時を見失って』
 俺の答えに、呆れたような表情。でも、丹恒は優しいから。
『寝るだけなら、好きにしろ。ただ、枕元の本を戻しておいてくれ』
『はーい』
 ついでなので、適度に整理しておく。
 そして、上着を脱いでから寝転がった。
 当たり前のように、丹恒が俺の腕の中にいて。とろんと眠そうな目でこちらを見ていて。
 人との触れ合いを好まなそうなこの青年が、俺の腕の中でさっきまですやすやと眠っていた。その事実に、頭が追い付かない。
「ん……きゅ、う」
「そう、です」
「おまえのては、あたたかい、な」
 そう呟き、また眠りの世界へと向かう。
 え? そんな無防備に俺の腕の中にいていいの?
 すやすやと、穏やかな寝息。
 目の下に濃いクマがあるのに気づいた。普段は、眠れていないのだろうか。
 それなのに、今は。
 俺の腕を枕に寝ている。
「やばい……この丹恒、可愛すぎない?」
 写真に納めたいが、携帯は上着の中。そして動いたら丹恒は起こしてしまいそうで。
 こんな、こんなっ。
 今は抱きしめることを許されているのならば、抱きしめるしかない。
「好き」
 眠っている丹恒にはきっと、届かない。と思いたい。
 俺のことを友人だと言ってくれる彼を、裏切るかのような想い。
 抱いてはいけないと思っていた。でも、抱いてしまった。
 だから、だから。
 でも、今だけ。今だけは。
 この想いを抱いたまま、君を抱きしめることを許して欲しい。
「はあ……
 二度寝しようと思ったのに、眠れない。丹恒のぬくもりと、匂いでちょっとだけ興奮している。
 愚かだと、醜いと、誰か罵ってくれたら楽になれるだろうに。
 無防備に眠っているのは、俺を信頼してくれているから。そう思わないとやってられない。
「きゅ、う…………す、き……
「へ?」
 この悶々とした物をどうしようかと思っていたら、丹恒の口からそんな言葉が。
 好き? いや、この後にまだ言葉が続くはずだ。
 そう思っていても、次の言葉はなくて。
 爆弾を落としたまま、どこか幸せそうな表情で俺の胸に頬擦りして。
 どうしてくれんだよ、これ!
 股間がイライラしてきた。マズい。非常にマズい。
 丹恒が気づきませんように。気づかれたら、引かれる。