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柩木
2024-08-22 23:25:00
2112文字
Public
崩壊:スターレイル
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丹穹|君がいない夢だから
2.1ストーリーバレあり。ちょっと疲れた穹をねぎらう丹恒。
※途中から夢から現実へメッセが届くのってどういう原理か疑問に思いながらも書きました。お手柔らかにお願いします。
――
ラウンジで待ってる。
穹から届いたのはそんな簡素なメッセージだったが、丹恒にはそれだけで十分だった。アーカイブ作業を一段落させ、足早に資料室から飛び出しながら頭の中を整理する。聞きたいことが多すぎて何から手をつけたらいいものか。
なのかが穹の名をグループチャットで連呼し、その回数が増える程焦燥感に襲われてどうにかなってしまいそうだった。自分も穹の名を投稿しようとして消す事を繰り返し、その変わりに降りようかと尋ねてしまった。留守を預かると決めたのは丹恒自身だというのに。
結果として申し出は姫子に止められたが、そもそもピノコニーへは丹恒の代わりに穹が向かっている。今更自分の宿泊資格はない可能性が高く、だとすればホテルへ向かったところで夢には入れない。考えれば分かることだが、あの時の自分は冷静でなかった。
その後しばらくして穹からの返信があった瞬間、無意識のうちに詰めていた呼吸を一気に吐きだした。画面越しであってもリアルタイムで更新される穹のメッセージは、その向こうに彼がいるのだと安堵させてくれる。
今後の相談が飛び交うグループチャットを眺め、彼らが合流出来た事を確認した。だが、本音を言えば丹恒はもっと確実な方法で安否を知りたかった。ホテルに乗り込んで、穹の部屋まで走って行って、無理矢理にでも起こしてしまえたら
――
。
そんな衝動を抑えていたこともあって、唐突でも穹から呼び出してくれたのは僥倖だった。
資料室とラウンジは廊下を隔てたすぐそこにある。数分もかからない距離にも関わらず気持ちが急いて、心に追従する足は自然と小走りになった。
ラウンジへ続く扉を開けると聞き覚えのないBGMが流れていた。恐らくピノコニーで得たレコードが流れているのだろう。しかし、この曲をかけたであろう穹の姿は見えない。
あの銀髪を探して少し進むと、上半身をソファへと横たえている穹の姿を見つけた。最初は座っていたが、そのうち上半身だけを寝かせたのかもしれない。
横たわる穹は生気のない顔でまぶたを閉じていた。胸がゆっくり上下していなければ人形と見間違う程に穹の顔色は白く、心なしか表情は頭痛を堪えて苦悩しているように見える。メッセージを受け取ってから数分も経ってはいなかったが疲れているのかもしれない。これで声をかけても起きなかったら。そんな悪い想像が過る。
「丹恒」
薄く開かれたまぶたの隙間から金色が見えたと同時に、穹はへらりと笑ってみせた。ただ表情を得ただけの事ではあるが、失われた生気が戻ってきた気がして丹恒は一人安堵する。
体を起こそうとした穹を制止し寝かせたまま、その表情が良く見えるよう彼の頭側に座った。
「色々あったようだな」
「うん、本当に。色々あったよ
……
」
やつれたようにも見える穹の頬を撫でると、その手を取られて握り込まれた。指を絡め、何度も揉み込む動作は手遊びを覚えた子供のようだ。また良く分からないことを始めたなと思いもしたが、好きなようにさせる。
「流石に少し疲れた」
「お前が言うなら相当だな」
「どういう判断基準なんだ、それ」
笑う声はどこか弱い。だというのに誰もいないラウンジにはよく響いて聞こえた。
その後も特に会話はないまま穹の手遊びを黙認し続ける。聞きたいことは確かにあった筈だが、聞くに聞けないまま時間だけが過ぎていった。
しばしの沈黙の後、不意に自分を呼んだ。
「俺に何があっても列車にいるって約束してほしい」
星海で瞬く恒星のようにどこまでも届く光が丹恒を射貫いている。
「夢境にいない丹恒の顔を列車で見たら、戻ってきたんだなぁって思えるから。
……
頼む」
その代わり何があっても俺は列車に戻ってくる。取られた手に額付けてそう請われると、まるで祈られているようで落ち着かなかった。
「分かった。その代わり今回みたいなのはやめてくれ」
「うーん。
……
努力はしてみる」
「約束したことを早速後悔させるな」
「だって丹恒には嘘吐きたくないし!」
何も好んで厄介事を抱えている訳ではないと丹恒も理解しているが、言及せずにはいられなかった。もちろんそれらをはね除けるだけの力を穹は持ち合わせているが、やってくるトラブルはいつだってこちらのことなど構いやしない。体力や気力が万全とは言えない時でも降りかかる火の粉を払わなければ身が焼かれてしまう。
「俺が今ここで寝たら起きるまでいてくれる?」
「ああ。
……
何かあれば起こすが、構わないか?」
「うん、助かる。ありがとう」
心底幸せそうな甘い笑みを残して穹はまぶたを閉じた。ラウンジの赤いソファをベッドに丹恒の掌を握りしめたまま力尽きて、数分も経てば静かな寝息が聞こえてくる。再会した時と同じように再びゆっくりと上下し始めた胸を確認し、丹恒はまだ自由な方の手を伸ばして無防備にさらされた首筋へと触れた。とくとく。脈打つ鼓動が感じ取れる。
つい先程まで会話していたのだから改めて確認する必要などないのだが、それでも優れない顔色は楽観視出来ない。
だが今だけは、その眠りが夢すら見ない安らかなものである事を願った。
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