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溶けかけ。
2024-08-22 22:39:18
1313文字
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ほぼ日刊
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神様を辞める日
以前呟いた?相互さんとヌフ写真撮ったときにお話していた、フリーナが神の座から降りて、ヌヴィレットが民の前に国の代表として挨拶に立つお話しです。
「フォンテーヌの水神についてだが
――
彼女は神としての力を全て使い、滅びの予言を食い止めた。それにより、神としてこの国を統治することが出来なくなった」
民衆がどよめく。それはそうだろう、この国には神がいなくなったのだと言ったのだから。
耳を澄ます。あちらこちらから「これからどうすれば
……
」「神がいないだなんて
……
」と絶望にも似た嘆きの声が上がるのを僕も壇上の彼も黙って聞いていた。
「静粛に」
ヌヴィレットの声が歌劇場に響く。彼の声は決して大きいものではない
――
それなのに、人々の耳を打つ。あぁ、声を張り上げていた僕とは大違いだ、と口の端が吊り上がる。
やはり、彼は生まれながらの王なのだ。王の役を被っていただけの役者とは違う、本物の。
「諸君の不安に思う気持ちも理解出来る。なぜなら、私も同じ心持ちだ。
――
フリーナ殿
……
フリーナ・ドゥ・フォンテーヌがこの国の神でなくなる日が来るなど想像すらしていなかったのだから」
彼の声に思わず顔を上げれば朝焼け色の瞳がこちらを見ていた。驚いたように僅かに丸く見開いた後、ゆっくりと細められた。
「だが、彼女が神でなくなったからと言って、彼女の功績がなくなるわけではない
……
それは、皆がよく知るところだろう」
ヌヴィレットの言葉に何人かが椅子から立ち上がり「そうだ、そのとおりだ!」と野次を飛ばす。
「無論、ポワソン町のことや連続少女誘拐事件などフリーナ殿
……
ひいては国に対する不信感を持つ者もいることだろう。この件については、パレ・メルモニアに専門の部署を設置する予定だ。遺族、または被害者と親しかった者は訪ねるといい。厳正な調査の後、然るべき対応をすることを誓おう」
歌劇場が水を打ったように静まり返る。最高審判官である彼が「誓い」という言葉の重みを知らないはずがないからだ。彼は初めから逃げ隠れしないと宣言したも当然なことをいとも簡単に言い放つ。
――
それは、僕には出来なかったことだ。
「遠いなぁ
……
」
ヌヴィレットの話は、まだ続いている。つい先日までは同じ職場で肩を並べて話していたはずなのに、今はこんなにも
――
遠い。
民衆を前に堂々とした態度で述べる姿は、本来あるべき国の王であり、僕がなりたかった姿そのままで、妬みだけが募っていく。
――
ああ、来なければよかった、と後悔がどっと波のように押し寄せて、体が鉛のように重くなっていく。
「最後に
……
この国を背負ってきたフリーナ殿に感謝を表したい」
ヌヴィレットが胸に手を当てる。彼の目は、僕を見ていた、ように思う。居た堪れなくなった僕はそっと歌劇場から逃げ出した。
この国を背負ってきたフリーナ殿に感謝を表したい
――
ヌヴィレットの声がフリーナの中で木霊する。黒い外套のフードを深く被り、夜闇に紛れる姿は元とは言え、神とは言い難い。
「いや、僕は神ではなかったな
……
」
とぼとぼと家までの道程を辿る。頭の中でぐるぐると今までのことが流れては消えていった。
「ハハッ
……
ハハハッ
……
」
月に手を伸ばす。その手が決して何も掴めないのだと知っていても
――
……
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