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無窓居室
2024-07-17 00:27:22
1274文字
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花言葉
pictSQUAREのWEBイベント「イベントに夢中!2〜お花に夢中〜」に展示させていただいた折本の内容です。
😈が👹に花言葉の蘊蓄を語ってるだけ。
「花言葉って一つではないんですよ」
さとしが学校で育てているという鉢植えから始まった話は、いつしかそんな方向へと入り込んでいた。当のさとしが友人達と遊びに行ってしまっても、悪魔は自分が人間界で知り得た文化についてのレクチャーをやめない。隣に立つ鬼の少女も真面目な顔で聞いている。人ならざる身の二人にとっては、人間が花に託す言葉も異界の珍しい風習なのだった。
梅雨の晴れ間の公園は草の匂いがして蒸し暑い。
「例えばそこの紫陽花。土の性質によって花の色が変わるので〝移り気〟〝冷淡〟が花言葉ですが、一方で雨に打たれても散らないため〝一途な愛〟とも言われているようです」
「えっ嘘!?真逆じゃん!」
「朝顔も咲いてすぐ萎んでしまうことから〝儚い恋〟蔓が巻きつく性質や次の日には新しい花が咲く様子からは〝固い絆〟〝愛の不滅〟と全く違うイメージを持たれていますよ」
「へ、へぇ
……
」
「ちなみに向日葵は〝あなただけを見つめる〟と〝偽りの愛〟です」
「ややこしいなぁ、人間て大事な相手に花をプレゼントする習慣があるんだろ?そのとき困ったりしないのか?」
混乱するアカネを愉快そうに見ていたブラックが、我が意を得たりとばかりに頷いた。
「まさに、理由の一つはその辺りにあるんじゃないかと思うんです。ネガティブなイメージがついてしまうとその花が好まれにくくなるでしょう?特に贈答品としては──つまり、商業的な理由でポジティブな花言葉が広められたのではないかと」
「そんなんで良いのかよ
……
」
がさつだが生真面目なところのあるアカネが複雑そうな顔をする。ブラックは笑った。
「両義性を受け入れられるのもまた花の美しさかもしれません。アカネさんの好きな方を信じていいんじゃないですか?」
「そっかあ
……
うん、そうする!」
一生懸命咲いてることに変わりはないもんな、と頷いて、アカネもさとし達のいる方へ駆けて行った。赤毛のポニーテールが陽の光に輝く。
アカネと出会った頃、移り気で冷淡だったのは自分の方だったとブラックは思う。付きまとわれるのは面倒にしても、ルックスはなかなかで撮れ高になってくれそうだったし、対抗心の裏に隠しているつもりの自分への憧れをからかってやるのは良い暇つぶしだった。
しかし彼女の成長は早い。友人や好敵手としての絆が確かなものになるにつれ、恋は一時期の、思春期の少女の気の迷いとして色褪せていくのかもしれない。一途でひたむきなアカネはそれゆえに、消えていく恋心を惰性で引き延ばしたりはできないだろう。
昔のように自分だけを見つめる彼女でいてくれたら、という想像をブラックは嗤う。朝露を無理に乾かさないでおいても、それは花を腐らせるだけなのだ。
(キミは一体どうなんです。いかにも裏のなさそうな顔をして、じきに残酷な一面を見せてくれるんですか?
……
それはそれで、楽しみですけど)
アカネの愛をどのように信じるか決めかねている悪魔の目に、花壇を満たす夏の花は色鮮やかに映った。
2024/07/12
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